遂に『逃げ上手の若君』アニメ続報!PV公開!
逃若党の面々は完全な若手成長のための起用のようです。実際、キャストの面々を見ても風間玄蕃役の悠木碧さん以外は「WHO?」状態。私も完全な年だな…しかし悠木碧が演じる玄蕃というのが想像できない。いや確かにショタ役とかはやっているのですが、玄蕃のような下ネタ野郎が果たして悠木碧の声に合致するのか?という思いがある。でも亜也子役だけは名前に見覚えあるな…と思っていたら
『水星の魔女』のシャディクガールズのレネ・コスタじゃん!!物凄い〇ッチなヤバイ女の子でしたが、よく考えたら亜也子も生首ポロリ(未遂)と鈍器で撲殺系ヒロインというこちらもヤバイ系少女だったので、その意味では似た者同士?でも亜也子は時行くんに純情だからね!
この2人が別のベクトルでヤバイ逃若党の面々となるのか…
残念ながら今回は逃若党のメンバーだけ。一番の焦点となる南北朝のラスボス・足利尊氏はお預け。恐らくは12月のジャンプフェスで公開されると予想。ここからの予想ですが、逃若党の面々は完全な若手であるからこそ、やはりラスボスや腹黒い弟といった歴史上の偉人たちには絶対に大ベテランを起用してほしい。個人的には南北朝のラスボスには
本命:櫻井孝弘
過去枠:子安武人
大穴:石田彰
希望。なお、腹黒い弟には福山潤一択。
今回の話の肝は最後のコマに凝縮されています。今回逃げ若を読んで歴史学を学んだものとしては満点を与えたい思いです。
鎌倉幕府と北条家による歴史の光
北条家というとどうしても大河ドラマにおいては陰惨な権力闘争と粛清の数々が悪い意味でクローズアップされて、負のイメージを抱かれがちです。去年の大河ドラマの『鎌倉殿の13人』を観た感想でも
「北条家があんな最期になったのも因果応報だよね」
という感慨を抱く人が多くいたのではないでしょうか。ハイ、私もその一人です。そこを考えると本来、我らが主人公である北条時行くんによる鎌倉幕府再興をテーマに描くというのはかなりハードルが高いと最初読み始めた時は思っていました。何しろ、多くの縁戚にあった血族や同族同士ですら、血で血を洗う粛清を行っていた家としてイメージされている家を再興するのがメインテーマです。それが果たして読者の共感を得られるのか?しかし、松井センセイは一番のアキレス腱である筈の課題を見事にクリアされました。キチンと題材の負のイメージから逃げず、キチンと題材の人物もしくは家や組織の光も闇も描く。歴史上の「功績」も「罪」も描くことによって、公平性を保ち、歴史劇としての高いクオリティを実現させてくれました。
そういえば、もう一つ描くのが難しい題材として、もちろん本作のラスボスでもある南北朝のラスボス・足利尊氏もあります。歴史上、これほど毀誉褒貶が激しく、後世の人間に完全な理解を得るのが難しい人物もそうはいない。一部では「逃げ若」における怪奇描写での化け物的描き方、あるいは原作者センセイによる「気持ち悪い」という言葉に一部の歴史愛好者層から非難がなされているようです。曰く「尊氏を悪く描いている」と。個人的には本作ほど南北朝のラスボス・足利尊氏の傑出した凄さを描いた作品もそうはないと思うんですよ。実際、数々の描写を見ても優れた美点や史実における大事な要素はキチンと抜け出して描いている。正義も悪もない。ただあるがままに描き、そこを踏まえた上での描写なら問題ないと思うんですが、いかがでしょう?それでは本編感想参ります。遂に鎌倉奪還を成し遂げた北条時行くん。今回は彼を通しての「北条の光」を描かれます。
〇北条の威厳
遂に悲願であった故郷鎌倉への帰還を果たした時行くんが初日の朝。「夢」ではないと現実の光景を見ながら、目をキラキラ光らせて朝を迎えた侍王子。念願の新鮮な魚も食べられて、時行くんも郎党たちもみなご満悦です。長い苦しい戦いの末に遂に訪れた鎌倉での平和的な朝食。思えば、信濃でも平和に過ごせられたのは1年ほど。その後は保科弥三郎らの乱や京都潜入、そして中先代の乱での挙兵準備などで心休まる日が訪れることはありませんでしたからね。
時行くん「こればかりは…信濃で食べた鯛の味には遠く及ばない」
時行くんにとっては弧次郎らが物凄い高速リレーで信濃の諏訪まで届けて調理してくれた時の料理がやはり一番の感謝のしるし。そして素直に郎党たちにこれまでの戦いを支えてくれたことに感謝の言葉を述べます。こういう所が時行くんがみんなに愛されている何よりの美点。
食事を終えた後は鎌倉にはせ参じた諸将たちとの謁見の場。そこに集まったのは泰家叔父さんが集めた大仏、極楽寺、塩田といったあの鎌倉幕府滅亡、そして建武政権による討伐を逃れて、生き残った北条家の一門衆の将たちでありました。鎌倉幕府陥落によって北条家の人間は多く最期を遂げたのですが、それでもなおこれだけの一門衆が生き残っていたのでした。彼らもまた主筋である宗家の少年による鎌倉幕府再興に涙を流していました。更には三浦時明や他にも天野、伊東などこちらも一度は建武政権に所属していた面々もまたはせ参じ壮観です。既に腹黒い弟の直義の足利軍は駿河から西へ敗走させ、当面の鎌倉は安泰の状態になりました。ここから時行くんらは鎌倉幕府再興の為に彼ら武士たちを使いこなす必要があります。脇から見て弧次郎らにも彼ら人生を戦に掛けた大人の武士達の気概にかなりの緊張を隠せません。何しろ百戦錬磨の彼ら猛者たちを率いるのが彼らと同い年のまだ10歳の少年。
おお、かつて小笠原貞宗が優れた眼力で見抜いた通りの高貴さを漂わせた気品ある王子の表情
思わず弧次郎や雫ちゃんらも呆気にとられるほどの見事な貴種の御曹司らしさ満載で、この場で諸将たちに言葉をかけていく時行くん。もちろん、途中で笑いを取らせるなどちゃんと人間としての情ある言葉を述べるなど見事な切り返し。
時行くん「頼重殿に政治の勉強を本格的にやらされる。ちょっと憂鬱です」
とここまで全てをおぜん立てしてくれた頼重さんを持ち上げることも忘れない。その上で、
時行くん「民も武家も公家も無駄死にが一人でも少ない世を」
「だから皆も命を大事に、今しばらく私に力を貸してください」
ある意味では子供らしい言葉を見事な気品ある表情でそして丁寧な言葉遣いと頭を下げる完璧なまでの応対で諸将を見事に平伏させた時行くん。諏訪での潜伏生活しか知らない逃若党の面々も思わず信じられない様子。この辺は時行くんも父の高時さんの謁見の場をしっかり見てきて、その様子を学んでいたのでした。まさに生まれながらの王子として身に付けてきたのですね、
〇北条の人気
そして市中に出る時行くんらを待っていたのは鎌倉の民の歓声。実はこれ最初見た時は民の軽佻浮薄の暗喩かと思っていました。つい先年には腹黒い弟の足利直義と彼の配下である庇番衆に歓声を上げていた民衆が、旧主である北条が乗り込んでくるやあっさり今度は北条に喝采を叫ぶ。そんな民衆のどうしようもなさという光景かと思っていたのですが、実は民の本音を代表して語り掛けてくれたのが一人の翁でした。
翁「わしが童の頃から鎌倉の民は北条様のもとずっと平和で豊かでした。民は主を選べませんが、感謝を伝えたかった…よくぞお戻りに!」
そうよく考えたらこの時代に民衆には主を選ぶ手段はありません。異を唱えたり、逆らったりすれば容赦なく命を取られる時代。だからこそ、彼らにとっては彼らに「平和」をもたらしてくれる支配者が必要であり、北条家の当時における人気は非常に高かったのです。そして彼らは感謝の思いを決して忘れていたわけではなかった。鎌倉幕府の歴史は壮絶な粛清の歴史でもあります。しかし、戦乱として壮絶だったのは和田合戦の時までで、それ以降は宝治合戦、霜月騒動とそれらはあくまでも彼ら民衆からすれば「コップの中の嵐」に過ぎず、全体として平和に過ごせていた感謝を忘れてはいなかったのです。帰還した時行くんと共に涙を流す人々。時行くんに抱擁し落涙する翁。そして懐いてた犬とじゃれ合ったり、幼馴染であった摂津清子の縁者と思しき少女と摂津父娘のことで涙を流す時行くんの光景…これこそが本来の「民の本音」でもありました。
解説「鎌倉幕府滅亡後も関東において北条氏の名声は不動だった。北条の後二百年以上…どの支配者も東日本の平和を保つことが出来ず、民は北条の再来を待ち続けていた」
何故関東における他所者であった伊勢新九郎の家系が「北条」を名乗ったかを教えてくれる親切仕様!!
と同時に南北朝のラスボス・足利尊氏には耳が痛い話ですね。実際に室町幕府の総合的評価は脇に置いて、「東日本の民」の視点からすると、鎌倉幕府と北条家滅亡後の関東は戦乱が絶えることはありませんでした。序盤は南北朝の動乱が原因ですが、観応の擾乱以降は「全部足利のせい」。こうなった原因はもちろん単純化するのは憚られるのですが、やはり
南北朝のラスボスのこの構想に無理があったということでしょう。尊氏は観応の擾乱で二頭体制の無理が嵩じて瓦解し、東国が腹黒い弟の強力な対抗地盤となった後も「京と鎌倉の二頭体制で日本統治させる」という構想を決して捨てようとしませんでした。しかし、「天に二日なし」という格言通り、上下関係が曖昧な京の将軍家と鎌倉公方家は代を重ねる毎に対立を激化させ、その度に多くの血が流れる結果となり、結果関東は応仁の乱よりも早く戦乱の時代を迎える結果となったのでした。そしてそこから他所者であった伊勢新九郎の子孫は「北条」を名乗ることで関東の民からの支持を得ようとしたのでした。もちろん、単なる僭称でついてくるほど民は甘くない。小田原を根拠地とした後北条家が関東で最大の勢力になり得たのは彼らもまた民政重視をキチンと実践したからでした。実際、戦国大名の中でも後北条家の民政はずば抜けた善政といってもいいでしょう。
今となっては北条家はダークなイメージで語られがちで、こういう「当時の民衆の人気」というのは忘れられがちですが、「逃げ若」はきちんとこういう視点を忘れないので非常に貴重な思いで見る思いです。
〇北条の遺産
さて足利は撤退する時に多くの官僚を一緒に避難させていました。そのために、一部読者からは「これでは北条による鎌倉統治に人材がおらず、支障をきたすのでは?」という懸念があったのですが、その辺が杞憂であったようです。鎌倉の支配者に戻った時行くんらを待っていたのは訴訟の処理。実はこれが武家政権を統べる者にとっては最も大事な要素です。土地を巡る訴訟がメインですが、この訴訟をいかに処理するかが鎌倉幕府、そして足利幕府の将軍にとって一番支持を得られるかどうかの分かれ目。応仁の乱以降、衰微した足利将軍家がそれでも曲りなりにも将軍としての権威を保ち続けたのはまさに「訴訟の裁定者」としての役割を失ったからでもありました。そして直義が遺したこれらの訴訟の処理もいきなりやらなければなりませんでした。勿論事情がよく把握しないまま裁定することの弊害が如何に大きいかは後醍醐帝の建武政権が良い反面教師ですね。
しかし心配は杞憂でした。そもそも諏訪家もまた鎌倉幕府に仕えていた関係で多くの業務を熟知しており、更に彼らにはおおきな武器がありました。
泰家叔父さん「帝や足利の武家統治はしょせん北条の丸パクリに過ぎんのよ」
解説「北条氏が作った基本法は「御成敗式目」は明治維新まで使われたほど優れた法だった。他の時代の法が中国か西洋の模倣なのに対し、この法だけが日本人の道徳や価値観をベースに作られている」
うん、これは絶対に『鎌倉殿の13人』のスピンオフである「俺たちの泰時」が必要だね!!
やはり『鎌倉殿の13人』は尺が惜しくも切れてしまったのが返す返すも悔やまれます。やはり2022年だけは50話という尺が欲しかった。小四郎義時による足固めと共に息子の太郎による新たな国造りをセットにして、初めてこの物語はこの親子による鎌倉幕府建国とそれに伴う北条の光と闇を体現させる一対なんで。それにしても思うのは長いこと運用できる法というのはそれだけ現地の実情を踏まえたものかどうかという点と法を改良させる柔軟さだよな。いくら他所の「美味しい所取り」を狙ってもそれが実情が合っていなかったら意味はありません。頼重さんや泰家叔父さんによる政権樹立のための布石。それは確かな見通しをもったものだったのです。しかし、そのための前提条件はまもなく押し寄せてくれるであろう南北朝のラスボスに勝利を収めること。それがいかに至難であるかは頼重さんも理解しているようですが…
〇北条の栄光
最後に郎党たちと共に父高時ら北条家一族が自害した東勝寺の跡地において墓参りを行う時行くん。寺院は完全に焼け落ちて、いまや焼け残った残骸が残り、木々や草が生い茂った状態です。亡き父や兄に手を合わせ、静かに涙を流します。いずれ「戦に勝って」盛大な供養をする日を誓って。その時にはこの東勝寺は立派な彼らの墓が建立されていたでしょう(涙)そこへフラッと現れた謎の坊さん。思わず、吹雪ら郎党たちも警戒してしまいます。
おお、あの兼好法師か!
時行くん「ふらっと来ては面白い話を聞かせてくれた怪しい御坊様だ。他の勉強は苦手だったけどこの人の話は大好きだった!」
有名な文人を近所で昔世話になった気さくなオッサン感覚で紹介する時行くんwwまあ兼好法師は鎌倉末期から南北朝時代にかけて、北条や足利など時の権力者とも交流があったほどの大物。その一方で高師直の人妻大好き属性で横恋慕した塩冶高貞の妻へのラブレター代筆をやらされたり、代表的な随筆集『徒然草』も本人が書き殴ったメモや壁に落書きで書き残した文章を息子や尊敬していた今川了俊らがきちんと編纂させて、一個の作品として完成させたというエピソードを残すほど色々自由奔放な人。思わず郎党たちもそんな文人と気さくに話す時行くんの偉さにビックリ。
ここまでの時行くんに同行して、その様子を観察して、彼らは共通した感慨を抱いていました。今までは時行くんの友人としての面やヘタレな面や変態な面しか見ていなった時行くんが紛れもない天下人北条家の侍王子であることに。
「北条ってやっぱすげーな」
解説「権力争いばかりが注目され、『北条氏は滅んで当然』という人までいる」
「権力争いだけの一族に民の平和を百年守り、超大国の侵略を撃退し、七百年続く武家政権の秩序を築くことができるだろうか」
北条の暗黒面を踏まえたうえで、そこに対する強烈なアンチテーゼとして、「そんな権力闘争ばかりの家がこれだけの業績を打ち立てられるわけないだろう」と示す見事な見識ぶり!これは何でもかんでも歴史上の人物や題材における負の側面ばかりを強調して、全否定するポリコレ界隈にも爪を煎じて飲んで欲しい見識ですね。私が彼らに我慢ならんのは「『自らの主張するところは絶対的正義!反対する奴らは『悪』」という公平性も客観性も微塵も感じられない独善性です。何事もまず是々非々で個別に論じるべきところに「現代の価値観」を絶対視して、それをもって「過去」を断罪してしまうことにある。もちろん、全体的に評価して、「これは完全にあかんやろ」という存在もあるのは明記しておきます。
その一方で、私が批判してきた過去の駄作大河であるのが「題材にする人物・組織に対する都合の悪い側面はガン無視、もしくは悪質な改変をする」というのがあります。これについても『逃げ若』では北条の「闇」として
弧次郎の出生時の事情や
腹黒い弟による糾弾を通して、きちんと触れているんですね。その上で、それらをキチンと主人公に受け止めさせることで、作品そのもののクオリティを上げる。
「北条の闇も光もキチンと踏まえた上で描いています」
この姿勢は近年の大河ドラマにも見習ってほしい!!
そして今回は最後に北条の「光」を体現するかのように°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°光る時行くん
と思わずそのすごさに圧倒されてしまった郎党たちなのでした。北条、やっぱり凄いぞ!頑張れ、時行くん!!