今週号のジャンプを読んでの最初の感想はこうでした。
装鉄城「いやー、先週号の感想記事を発売日前の日曜日にUPしておいて正解だったよ。私の予想ズバリ的中しちゃったよ。これ月曜日だったら、説得力ゼロ。絶対に「後から知ったから」とおもわれるところだったよ(汗)」
とまあ個人的に予想的中して小躍りしている自分がいました。いや、今回はバトル主体ながらも非常に見所沢山ありました。頼重さんが「ホーム」であることを生かしたイカサマ、心理戦や当時の日本の戦闘スタイルetc…
何よりも小笠原貞宗が単なる異形の『怪人』ではない、歴史上実在した『偉人』でもある点をちゃんと触れてくれたのは大きい。
今回はまさに主人公にとっての最初に現れた『強敵』としての貫禄が圧巻。やはり小笠原貞宗は史上に実在した人物でありますからね、単なる『怪人』では終わらせないあたりが心憎い。
きちんと史上に実在した人物へのリスペクトを忘れない
点は非常に高評価です。世の中にはただひたすら史実を捻じ曲げての単なる「貶め」が大河ドラマでも横行していたのが現状です。(流石に近年では露骨な描写は抑えられつつある)単なる怪人では終わらせないこの描写は素晴らしいですよ。それこそただの鬼畜としての『殺され役』として登場した五大院宗繁とは大違い(笑)こういう形でどんどん『鬼』が登場していってほしい。?『心清き』足利家郎党?なんのことでしょうかね。それでは本編感想参ります。
〇一撃必中か、連射か
頼重さんが持ちかけた「千里眼の怪人」小笠原貞宗との犬追物での勝負に対戦させられた時行くん。どう考えても無謀極まりないものでしたが、流石に頼重さんはきちんと考えたうえで色々仕込んでいました。この勝負の『肝』は頼重さんが追加したルールである「対戦相手の人間にも命中させられれば、得点になる」というもので、敢えて「人か犬か」の二択を示すことで相手を完全に心理的コントロール状態にさせようというもの。もちろんどう考えても未熟な小僧を対戦相手にさせられて怒り心頭の貞宗は当然、時行くんを狙います。そこへ時行くんがいきなり貞宗に矢を射かけたことで完全に頼重さんのペースに嵌まってしまいました。ここからは頼重さんが時行くんに伝授した通りの内容を履行していていくだけ。凄いぞ、完全に貞宗の心理状態を掴んでいる。というか、あの短い打ち合わせ時間でこれほどの内容を伝えていたのか(笑)
これに当時の武士の行動原理がキチンと踏まえられています。
売られた喧嘩は必ず買うというのが武士という生物。舐められたらコロス!
という武士の心理が的確に少年誌風に分かりやすく取り上げられています。ここで時行くんの「逃げ上手」と称される天才的回避能力を思う存分発揮すると共に貞宗の圧倒的弓術に潜む「唯一の弱点」を見抜いていました。それは一発目の命中に全神経を集中させてしまうために連射することを嫌うというもの。
この「一撃必中」か「(命中率を犠牲にしての)連射」かというのは後々日本の合戦でも重要な要素となります。
それを象徴するのが銃火器の登場でのこと。銃の場合はこの二律背反要素で各国の用兵者は選択を迫られることになります。ヨーロッパの場合は選択されたのは「連射」。当初は兵士たちに認められた「狙い撃ち」が次第に禁止され、ひたすら前方を撃つようにされていくのですが(もちろんその後、「狙撃」という専門の銃兵も登場する)、日本では「命中精度の向上」が図られました。有名な火縄銃がその後の幕末に至るまで重宝された要因にこの「命中精度」が後に登場する燧石銃よりも遥かに高かったことがあります。
なんでこれほどまでに「命中精度」をひたすら追求したのかというとやはり個人的な功名心への執着が関係してきます。戦場に従軍する者にとって最も恩賞の基準となるのは「どれだけ敵兵の『首』を挙げたか」でありました。かかる功名心の高さは戦場での武勇を発揮するときには大いに役に立ちますが、同時に「軍隊としての統率に支障をきたす」というデメリットももたらします。本来であれば、銃兵など一番個人的功名とは無縁に思われがちですが、それでもやはり戦う兵士たちにとっては捨てられない宿痾となっていきました。戦国武将も苦労したようで、例えば上杉景勝などは有名な関ケ原戦役の際に「弓・鉄砲の者は、敵の首を取ってはならない」という軍令を出しています。軍隊の組織化が進んだ戦国末期においてもかくのごとしだったのです。
ましてや鎌倉時代や南北朝時代には当然まだこのような発想は登場すらしていないわけなので弓矢の場合も同じ事情です。だから貞宗の『弱点』というのはまさに武士というものの本質でもあるのですね。流石頼重さん、未来が見えるだけに分かっておられる(笑)
〇接待は辛いよ
回避能力の高さに翻弄され、次の矢を発射までのチャージ時間を利用して、この隙に犬を狙うよう進言していた頼重さん。実はホーム・主催者であることを利用したイカサマが用意されていました。目立つ赤犬が当てやすいように走ってくれるからそれを狙うようにアドバイス。実は…
頼重さん「それ接待用に調教した犬です」
時行くん「接待用とかいるんだ!!」
まさかの接待犬に笑ってしまった
まあ当時の犬追物とはいわば「ゴルフ」のようなものですから、「接待犬追物」も全くのフィクションかどうかというと…難しいところです。そしてまさにその通りに動いてくれる赤犬は一発目の弓を外してしまった時行くんに対して
赤犬「ちゃんと狙え、下手くそ…報酬の鹿肉もらえねーだろが」
そして2発目で見事命中
赤犬「そうだ、それでいい」
やだ、接待犬さんカッコいい
膂力の弱い少年の弓とはいえ、それでも当たれば痛いこと間違いなし。下手をすれば「死」の危険もありながらもちゃんと報酬目当てできっちり仕事をこなし、しかもわざとらしさの出ないよう当てて見せるというその姿勢にうん、感動ものです。かくして弓手の胴で当てたことで時行くんが一点先取。激高した貞宗は時行くんを付け狙いますが、そこは「逃げ上手」の天才。ここで新幹線のイメージと共に貞宗の矢が表現され、解説が加わります。当時の弓の速度は現在より遅く反応が良ければ避けることは不可能ではない…ということ。つまりまさに時行くんにはうってつけの勝負であったのです。まさに
気が付いてみれば、貞宗は時行くんに固執しすぎた為に矢はあと1本、にもかかわらず無得点。時行くんは1点先取であと2本残している。ここでようやく貞宗は犬に標的変更しますが、完全に頼重さんの術中。そう今回の犬たちは諏訪大社よりすぐりの逃げ上手の犬を集中させていたために、貞宗でも簡単には狙うことができない。そこに時行くんが矢を向けるだけで
頼重さん「焦りと迷いと狙われる恐怖で冷静さを失い、犬もろくに射れなくなることでしょう」
完全に頼重さんの掌で踊らされていた貞宗、見くびっていた少年のスペックの高さに翻弄され、本来圧倒的有利であった筈の勝負で敗北の危機が迫ることのプレッシャーでここで押し負けそうになりましたが…
〇予言的中の瞬間
しかしここからが小笠原貞宗の真骨頂!「怪人」から当代随一の「武人」へと変貌
今までは飛び出した眼が歴戦の武人らしい鋭い視線へと一変。巧みな馬術で時行くんの右後方の死角を突くことに成功します。騎馬武者にとって右後方は身体をよじっても騎射できないウィークポイント。巧みな馬術で時行くんの死角を維持したまま付け狙う貞宗。空気が一変したことを的確に解説するのが前々回より登場した頼重さんの同族である盛高。
諏訪盛高「これはもう犬追物ではない、戦場である「騎射線」だ」
雫ちゃん(諏訪大社の解説名人)
相変わらずポーカーフェイスで的確な人物評に定評のある雫ちゃん。今後も盛高さんは真面目な解説担当として活躍するといいです(笑)
追い込まれたことで逆に本気になった貞宗、その武芸はやはり尋常ではありません。何しろ、手綱を持たずに馬を操り、ひたすら騎射に集中しているのですから。ここで貞宗の逸話が紹介されます。彼は元々後醍醐帝からも絶賛された天下無双の武人であるエピソードが挿入されます。相変わらず御簾越しに眼光だけで姿の見えない怪しすぎる後醍醐帝ですが、
後醍醐帝「・・・良い」
公家一同「ハハッ!!」
伝奏役「帝が『良い』と仰せだ!」
公家一同凄まじい勢いで平伏する様にうーん、やはりこの人もかなり恐怖心抱かれる存在なのだな…まああの「人ならざる者」ラスボス尊氏との絡みがあるからね。史実でも「武士は皆小笠原を手本とすべし」と言われて、帝自らのお墨付きとして「王」の字を家紋に入れることを許されるなどというほどの特別な存在。本作で初めて小笠原貞宗を知った読者にも「へ~コイツってそんな凄い奴なのか」というキチンと上げていくことを忘れない。そして貞宗が形成した(と伝わる)「小笠原流」は武家の礼儀作法としても武芸術としても現代にいたるまで連綿と続いているというほどのものでした。もっとも同派の伝承では「後醍醐帝や足利尊氏の指導まで行った伝わりますが、これは流石に事実ではなさそう。いずれにしても単に気持ち悪い異形の怪人ではない、ということをきちんと示して史実に存在した小笠原貞宗へのリスペクト溢れる描写は素晴らしいの一言です。
圧倒的な武術の格差に翻弄され、馬術一つ取っても未熟な時行くんは馬の操縦に気を取られたことで弓への回避が頭の意識から離れた刹那的瞬間に
小笠原貞宗「その一瞬を儂の眼は逃さない」
レーザービームのような弓矢を放つ「千里眼鬼・小笠原貞宗のカットイン!!
うわ!これは凄い。ゲームとかであれば、必ず出てきそうなカットインです。先ほどまでお貞宗の矢は「新幹線」しかし、本気を出した貞宗の矢はまさに「レーザービーム」というもので完全に回避不能の代物。遂に時行くんの後頭部を直撃してしまいます。勝負のわずかな時間で時行くんの回避能力とその弱点を見切って、頼重さんの予測さえ上回る逆転劇を演じた貞宗のスペックの高さ。そして
これで貞宗も目からレーザー光線出したら完璧です(前回の感想記事より)
が成就してしまったよ!!本当に目からレーザービームを出してしまったよ!!
とまあ下らない私の予測的中は放って、開始以来これまでその圧倒的とまで言われた「逃げ上手」が完璧なものではないと露呈した主人公の初めての敗北。やはり鬼畜・五大院との格の違いでしょう。馬手(逆手)の頭で5点という高得点を獲得した貞宗は余裕綽綽。既に貞宗は矢を使いつくしたので、あとは時行くんの妨害をするだけ。逆に時行くんは犬追物用の矢とはいえ、脳天直撃したことでダメージを受けた状態で貞宗か犬を残り2本の矢で命中させなければならない。そのうえ、初めての回避能力の敗北の衝撃は大きく
時行くん「本物の矢だったら、死んでた!」
初めて味わう死の恐怖の実感で震えている状態。絶対絶命に思われましたが、しかしそこはやはり時行くん。
時行くん「たのしい!!」
と目を輝かせながら、初めての死への恐怖にむしろ大歓喜のどM丸出しですが(笑)、やはりこの辺は主人公もまたこの時代の「武士」の価値観で生きる人間ということ。むしろこれは恐ろしいことになりそう。さあ果たして次回は犬追物の勝負はどうなるか?早く続きが見たい!!


