『北海道ニュートピアデータセンター研究会』の創設と参加について | 藤原洋のコラム

~都市型データセンターと連携する地方創生型データセンターの普及を目指して~

 

 2020年7月14日(火)に北海道大学、東京大学、室蘭工業大学、慶応義塾大学の研究者とアルテリア・ネットワークス、さくらインターネット、三菱総合研究所、ブロードバンドタワー、Digital Edge、王子エンジニアリング、フラワーコミュニケーションズなどの企業が連携し、『北海道ニュートピアデータセンター研究会』を発足させました。

 

https://nutopia-hokkaido.org/2020/07/14/press-release/

 

 今回は、当社の経営視点から、北海道ニュートピアデータセンター研究会発足の背景と当社の参加目的について述べてみたいと思います。

 

 私自身、インターネット・インフラ整備に20世紀後半から関わってきましたが、最初に、同研究会発足の背景は、2つのことがあると考えております。

 

 背景の第1が、インターネット・トラフィックのグローバルな多様化と増大です。インターネットの商用化が米国から始まった1990年を起点に、インターネット・トラフィックは、日米海底ケーブルが大半を占めていました。その後、日米以外の先進国でのインターネットの普及、20世紀に入ると中国をはじめとするアジア諸国の経済発展に伴い、米国と欧州、そして、米国とアジア、欧州とアジアへとインターネット・トラフィック・パターンの変化が起こりました。

 

 そこで、近年、急速に注目を集めているのが、欧州とアジアを直結する「北極海ケーブル」です。フィンランドの国営企業で通信ケーブル事業を手がけるシニア(ヘルシンキ)社は、2018年に北極海を経由してアジアと欧州を結ぶ通信ケーブルの陸揚げ地に北海道を有力視していることを明らかにしました。特に、北海道の冷涼な気候やアジア諸国に近いという利点を強調し、日本の情報通信業界との連携を呼びかけていくとし、いよいよ今年に調査を開始します。

 

https://nutopia-hokkaido.org/2020/07/19/the-arctic-telecom-cable-project-set-to-launch-seabed-surveys/

 

 背景の第2は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う日本におけるワークスタイルの変化による首都圏一極集中から地域分散化です。感染症拡大に伴い、テレワークの普及によって、企業活動拠点に大きな変化が起こりつつあります。この変化に伴って、国内インターネット・トラフィック・パターンも変化し始めています。また、今年からサービスインした5Gネットワークは、4Gと異なり、1ミリ秒以下の超低遅延を特徴としており、地域におけるエッジ型データセンターのニーズを産み出しつつあります。当社は、これまで、専業インターネット・データセンター事業者の草分けとして、インターネット・エクスチェンジ(インターネット接続事業者間のトラフィック交換拠点)と直結した都市型インターネット・データセンターのパイオニアとして活動してまいりました。しかしながら、今後は、新型コロナによるワークスタイルの変化と5Gの普及に伴い、インターネット・データセンター・アーキテクチャの最適化を検討するフェーズに入ったと認識しております。

 

 以上に述べたような背景の下、当社は、業界初の5Gデータセンターである新大手町データセンターの先行投資が終了し、今年度から投資回収フェーズに入ります。そこで、中長期的な経営視点から、新たな成長戦略を立案するために、「エッジ型データセンターの地方展開の可能性」についての調査研究に、まずは着手することと致しました。本研究会の発足に参加した最大の目的は、この可能性についての調査研究になります。

 

 北海道は、北極海ケーブル陸揚げの可能性と共に、その冷涼な気候による冷却コストの低減が見込まれます。また、再生可能エネルギーを含むエネルギー手段の多様化や他のデータセンター事業者との連携による共通インフラ整備などが、進めばより大きな可能性があると考えられます。このたび、発起社の1社として、同研究会の目指す、Society 5.0 時代に向けてインターネットとデータセンターの産業構造を革新するシナリオを描くことに貢献できればと考えております。皆様にも同研究会の活動にご注目頂ければ幸いです。

 

2020年7月29日

代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋