コロナショックに伴う当社の事業への影響とワークスタイル・イノベーションについて | 藤原洋のコラム

~社会の危機、顧客の危機、社員の危機、企業の危機の中での対応策について~

 

 新型コロナウイルスによる感染症の拡大が続く中で、第2創業期の集大成としての2020年3月19日に、当社の第21回定時株主総会が終了しました。本総会の運営におきましては、ご参加頂いた株主の皆様、取締役、従業員スタッフ全員に検温とマスク着用を運営方針とさせて頂きました。また、本総会では、下図に示すこれまでの業績の推移を示させて頂きました。

 

 

 今回は、当社の経営環境における企業としての危機管理と今回行ったワークスタイル・イノベーションについて述べさせて頂きます。

 

 企業経営の危機管理についての基本的な考え方とは、大きくは2つあると考えております。それは、危機管理の第1の基本は、「科学的であること」、第2の基本は、「最悪の事態を想定すること」であります。

 

●新型コロナウイルス(2019-nCoV*)による感染症の科学とは?
  *このたび、武漢市で発生したとされる肺炎は、2020年1月12日に世界保健機関によってコロナウイルス2019-nCoV と命名されました。
 当社の2000年創立以来、直ぐに発生したのが、2002年~03年にかけて中国を中心に感染が広がった重症急性呼吸器症候群(SARS)でした。当時は、私も含め、海外出張の自粛を中心に対応しました。また、2012年以降に発生した中東呼吸器症候群(MERS)の原因もコロナウイルスですが、感染症の拡大が地域に限定的であったため動向を注視している中で収束しました。
 しかし、今回の新型コロナウイルスは、これらのコロナウイルスの後継の進化型ともいえるもので、ウイルスの特徴である、細胞宿主分類(寄生対象とする細胞)における動物・植物・バクテリア型では、動物型であり、遺伝子を伝達する核酸分類では、RNA(リボ核酸)型であり、生物化学的にも、細胞生物学的にも、遺伝子工学的にも未知のウイルスであると言えます。当然医療的にも決定的な対処法がないというのが、実状であると認識しております。このため、日本国内をはじめ、世界各国で、感染拡大が続いている状況にあります。
 感染方法については、確実なメカニズムは、解明されていませんが、新型コロナウイルスは、ウイルス表面に発現しているスパイク(S)蛋白質が、ヒト細胞内へ侵入することで、感染すると考えられています。風邪、SARS、MERSと同類、特にSARSとの類似度が高いことから、新型コロナウイルスは、主に感染者のせきやくしゃみなどによる飛沫を中⼼に感染し、潜伏期間は2日から12日程度で、無症候性キャリアからも感染を広げる可能性があると考えられています。このような状況の中で、現時点では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられています。

①飛沫感染 感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染します。
※感染の想定場面:屋内で、相互距離が十分に確保できない状況で一定時間を過ごす等
②接触感染 感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、自らの手で周りの物に触れると感染者のウイルスが付きます。未感染者がその部分に接触すると感染者のウイルスが未感染者の手に付着し、感染者に直接接触しなくても感染します。
※感染の想定場面:電車やバスのつり革、ドアノブ、エスカレーターの手すり、スイッチ等

 以上のような新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大は、症状が顕在化している感染者、自覚症状のない感染者からの呼吸器を通じた感染を想定すべきだと考えられます。また、感染源のヒトが不在でも、生存時間3時間のエアロゾルや72時間のプラスチック等を通じた接触感染についても想定すべきだと考えられます。

●「最悪の事態を想定した」危機管理について

〇「社会の危機」への対応
 金融資産の貯蓄から投資へと向かう大きなトレンドの中で、その正体が解明されていない新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大が続く中、世界各国で、社会活動に大きな制約が、起きています。私も今年の海外出張や調査団長等、全て中止致しました。
 特に、前述のように「科学」による決定的な解決策が提示されていないために、株式市場の変調が続いています。これは、一時的ではあるとは思われますが、しばらく継続する可能性もあり、株式資産や時価総額を前提にした企業経営の見直しが迫られていると思われます。
 このような「社会の危機」の中で、当社としては、投資から貯蓄への逆行するのではなく、キャッシュフローを産み出す投資を継続する「純資産経営」を前提に対応して行きたいと考えております。

〇「顧客の危機」への対応
 当社の企業活動は、ビジネスモデルとして、基本的には、「B2Bサービス」モデルを前提としております。従って、顧客ドメイン管理は、顧客の企業活動の持続可能性の分析において、危機管理上最も重要な要素であると言えます。
 まず、当社の顧客ドメインの分析ですが、当社においては、「リアルビジネス」と「ネットビジネス」という2つの分類を行っております。当社は、日本初のインターネット・データセンター専業企業として創業し、当初からインターネットを通じてサービスを行う「ネット企業」向けの事業を支援することを生業(なりわい)としております。また、最近、「リアル企業」のネット事業化支援事業に取り組んでおります。これは、まだ当社の顧客ドメインとしては、ごく僅かでしかありませんが、「リアル企業」が、「ネットビジネス」へのビジネスモデルの転換を意味しております。従って、当社の顧客ドメイン管理としては、「ネットビジネス」への集中をさらに強化していく方針であります。現在のところ、「ネットビジネス」は、人と人の対面が原則の「リアルビジネス」と異なり、新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大の影響はほとんど受けていないのが現状であり、当社の業績にも影響が出ていないと言えます。
 現在の感染症拡大による企業経営上の危機は、「リアル前提」にあるように思われます。小売業、外食業などを例にとると、大勢の人々が集合することが前提となるビジネスは、大きな影響を受けるものと思われます。一方、当社の生業でもありますが、「ネットビジネス」は、感染症拡大時にも比較的耐性が強いため、当社の顧客ドメイン管理においても重視していく方針であります。従って、「リアルビジネス」を行っている顧客には、「ネットビジネス」への移行促進を支援していく方針であります。

〇「社員の危機」への対応
 新型コロナウイルス(コロナウイルス2019-nCoV)による感染症拡大は、「社員の危機」でもあります。先ほど述べさせて頂いた通り、社員にとっての感染の危機は、大きくは、「閉空間での呼吸器感染」と「ウイルス生存時間の接触感染」であることが想定されます。そこで、「不特定多数の人々が、閉空間で一定時間を過ごす公共交通機関利用の回避」を即座に実行することと致しました。
 具体的には、「ネットビジネス」を生業とすることから、サイバーセキュリティ管理のために、インターネットを用いた社内網としてのVPN(仮想プライベート網)のトラフィックテストを実施し、全員がリモートで分散して業務を行っても、実務上問題ないことを確認致しました。このVPN網を前提に、当面のテレワークを実行することと致しました。
 今回のコロナウイルス2019-nCoV 対応として新たに導入したVPNによるテレワークと、新オフィスで導入した完全フリーアドレスによるオフィス運営が、当社の新たなワークスタイル・イノベーションであると考えております。それは、どうしても必要なオフィスでの業務実行時にも、ある程度離れた場所での作業となるために、感染予防になると考えられるからであります。

〇「企業の危機」への対応
 企業にとっての最悪の事態を想定することは、企業の持続可能性の基本となる危機管理上最も重要なミッションであると考えております。
 本件については、私も苦い経験があります。かつて東証二部上場の「好決算有良企業」であった、(後で架空循環取引を行っていたことが判明した)IXI社の企業買収案件が日本最大の金融機関グループの1つから提案があり、入念なデュージェリジェンスの結果、企業買収を実行しました。最近、再び、架空循環取引が、行われていた事例が発覚し、コンプライアンス上の問題が浮上しており、大変残念に思います。架空循環取引が起こる背景には、行き過ぎた業績至上主義が産み出すコンプライアンス違反があり、これは、企業の危機管理にとって極めて重要だと考えております。企業にとって、黒字経営は、当然重要ですが、如何なる時も「企業の危機」への対応としてのコンプライアンス(法令順守〔遵守〕)は、さらに重要だと考えております。
 さて、IXI買収の件に戻りますが、その際、金融機関からの提案は、「好決算有良企業」の株担保融資による買収でした。私は、この件だけは、納得がいきませんでした。株価は、変動しますので、これを担保とする融資には、リスクが大きいと判断し、新株発行をして買収資金の調達を行いました。結果として、「好決算有良企業」IXI社は、破綻しました。もし、株担保融資による資金調達を行っていたら、私の経営する企業は、倒産に追い込まれていたかもしれません。純資産と必要な現金を保有していることは、「企業の危機」への対応としてコンプライアンスと同様に極めて重要であると考えております。
 また、今回のコロナウイルス2019-nCoV対策として、インターネット・データセンター事業の運用にとって重要なのは、持続可能性であると考えております。当社は、全体で5か所のデータセンターを運用しておりますが、データセンター運用チームを分離しております。もし仮に、あるデータセンター運用チームのオペレータに感染者が出た場合、当運用チーム全体の運用が中止(感染者の隔離とチームメンバーの自粛)する可能性が想定されます。そこで、他のチームが分離されていれば、当チームに代わって、運用を実施することができます。
 このようにして、「社会の危機」「顧客の危機」「社員の危機」に呼応した「企業の危機」への対応を行っていく所存であります。

 新型コロナウイルス2019-nCoVの感染症拡大の影響は、まだ続く可能性もありますので、皆様におかれましては、ご安全とご健康を祈念させて頂くと共にご自愛下さいますようお願い申し上げます。

 

2020年3月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋