「中国製造2025訪日調査団」との意見交換会を終えて | 藤原洋のコラム

~中国版インダストリー4.0専門家集団との熱い議論~

 

 先週のことですが、中国製造2025訪日調査団が、当社を訪問されました。訪日調査団は、他には、東京大学と日本政府機関を訪問されたそうです。

 

 ドイツ政府が、2011年から推進するIndustrie4.0(IoTによる製造業革命)が、米国(Industrial Internet Consortium)、日本(経済産業省・総務省のインターネット推進フォーラム、一般財団法人インターネット協会・IoT推進委員会)、そして中国(中国製造2025)へと波及しています。

 

 このたび、私が、インターネット協会理事長と同協会IoT推進委員会委員長を務めていることなどから、「中国製造2025訪日調査団」が、当社を訪問し、私のプレゼンテーションの後、質疑応答を通じて、熱い議論を行いました。

 

 今回の訪日調査団は、産学の有識者から構成されており、その目的の「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」は、ドイツの「インダストリー4.0」や、米国の「インダストリアル・インターネット」と並ぶ、中国政府(国務院)主導のプロジェクトです。2049年の中華人民共和国建国100周年までに「世界の製造大国」の地位を築くことを目標としています。

 

 「中国製造2025(メイド・イン・チャイナ2025)」とは、2015年5月に中国政府が発表した、中国における今後10年間の製造業発展のロードマップで、 「5つの基本方針」と「4つの基本原則」に基づき、2049年までの3段階に分けられています。第1段階として、2025年までに「世界の製造強国入り」を果たし、第2段階として2035年までに中国の製造業レベルを、世界の製造強国陣営の中位に位置させ、第3段階として、2045年には「製造強国のトップ」になるという計画です。
 5つの基本方針には、イノベーション駆動/品質優先/環境保全型発展/構造の最適化/人材本位が掲げられています。

 今回の訪日調査団との議論を通じて感じたことは、これまで中国は『世界の工場』と呼ばれ、世界第一位の製造規模を誇っていますが、製造業のプロセス管理/オペレーションの最適化では、ドイツや日本から遅れているという認識があるように思えました。というのは、これまでの中国の競争力をさせていたのは、豊富な労働力と低賃金による労働集約型の製造業であるということだと思われます。しかし、今後は労働構造の転換を図り、ITやロボット、AI(人工知能)を活用した知能集約型産業への転換が必要とされているように思いました。

 今回の訪日調査団から、現在の中国は、労働集約型の製造業から脱却できていないが、デジタルトランスフォーメーションによる、(製造)プロセスの変革を指向する企業が多くあると感じました。中国政府は、中国製造2025の中で「製造業のイノベーション能力の向上」を戦略的に重視しており、官民学が一体となって「製造業イノベーション体制」の構築を推進しようとしているようです。実際、2025年までに40カ所の「製造業イノベーションセンター」を設立し、3Dプリンティングやバイオ産業などの基盤技術開発と人材育成に注力するとのことです。

 実際、シーメンス、日立、富士通などが、中国製造2025をビジネスチャンスとして捉えています。 

 一方、今回の訪日調査団が「中国製造2025を成功させるための課題」として挙げたことが、人材育成とシミュレーションでした。特に、化学工業などの製造プロセスの改善シミュレーションにIoTは、どう役立つか?というものでした。
 最近、急に政権が代わって、環境問題への取り組み姿勢が、米国と中国で、逆転したように思えます。そこで、「中国製造2025」の5つの基本方針には、『環境保全型発展』が、重視されているように感じました。さらに人材育成については、「言うのは簡単だが実行は難しい」というものでした。

 

 最後に私のプレゼンテーションの概要と質疑応答についてお伝えしたいと思います。私のプレゼンを要約すると、ドイツのインダストリー4.0の本質は、「日本のKaizen(トヨタ式生産方式)のIoT化にある」という視点でお話しました。そして、それを実現するツールが、IoTだけではなくて、ビッグデータを根拠としたAIだというお話、さらに最後には、5G(移動通信網)と次世代ITS(高度交通システム)だという話で締めくくりました。もし、日本から、役に立ちそうなことがあれば、いつでもコンタクトして下さい・・・。知的財産を正当な評価いただければ貿易しますよ、と結びました。

 

【Q&A】

Q1:日本の製造業でAIが、進展すると、失業者が増えることが考えられるが、どう対処するのか?

A1:日本は、人口が減るので人手不足なので、心配ない(笑)。それは、冗談だが、それは、企業経営理念と制度設計の問題である。人間を優先するのか?機械を優先するのか?これは、極めて重要な課題である。古典的資本主義は、5万人の従業員のうち1万人をレイオフして、500億円の利益を出すと、経営者が100億円のボーナスをもらう仕組みだが、日本は、そうはなっていない。恐らく中国の企業経営者も古典的資本主義とは異なる仕組みで経営されていると思う。

 

【Q2】IoTは、機械工業などには、役立つだろうが、化学工業にも役立つのか?

【A2】2つある。1つは、生産設備、計測設備、検査装置にセンサーをつけて安定運用をデータ化すること、もう一つは、化学プラントの品質管理に応用する。センサーをつけてその計測データと最終製品の歩留まりと品質の相関関係を発見すること。

 

【Q3】最近、トランプ政権が、保護貿易主義によるアメリカの製造業の復活を宣言しているが、どう思うか?

【A3】時代遅れである(笑)。

【中国の皆さんの反応】こんなに明確に回答した日本人は、初めて。東大教授も日本政府の人も、何を回答しているのか分からない回答だった。

 

*その他、色々質問がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

平成30年4月25日
代表取締役会長兼社長CEO
藤原 洋