セパタクローを始めてみないか? | 「目標達成」考察ノート

「目標達成」考察ノート

こんな時代だからこそ自分のやりたいことをやる。それを実現する方法の考察。

(*2013年に取材したレポートを再掲載)

バトミントンのコートで、足を使ってバレーボールを行う。セパタクローを他の競技で表現するとこうなる。バトミントンとバレーボールについてはほとんどの人がイメーできるだろう。しかし、それが組み合わさったセパタクローはどうだろうか?おそらく、今度は大抵の方がイメージできないのではないだろうか。

イメージがわきにくいのなら、自分の目で確かめてみるのが一番。ということで、今回は「セパタクロー日本代表の練習」を訪れた。ボールを地面に落してはならないという点は、日本の伝統競技である蹴鞠(けまり)に通じる部分がある。しかし、練習を見たあとの印象はこうだ。

『セパタクローは空中の格闘技である。』




東京・渋谷区代々木にある通称「オリンピックセンター」が日本代表の今回の練習場所。しかし、話を伺うと毎回ここで練習をしているわけではないらしい。普段は小学校の体育館を借りて代表の練習を行っているとのこと。練習場所の確保自体が大変な仕事という点は、マイナースポーツ全般に通じる課題と言える。



体育館に足を踏み入れるとちょうど表彰式の真っ最中。今日は、ここで日本セパタクロー協会が主催するジュニア選手権が行われていた。ただジュニアといってもほぼ全員が大学生。ここでのジュニアの定義は「競技をはじめて2年以内」とのこと。だから、今回の参加者も大学1年生、2年生が大半を占める。

そして、この大学から競技生活がスタートするという点が、日本のセパタクロー界が置かれている状況の大きな特徴の1つと言える。競技人口のすそ野がまだとても小さいという点はネガティブである。しかし、大学から横一線でスタートできるという点に着目するなら、競技を本格的にやってみようと思う人には活躍のチャンスが大きいと言えるだろう。

また、セパタクローは3人揃えばチームを作ることができるのも魅力。これは野球やサッカーよりもはるかに少人数だ。仲間を2人誘って新しい競技に挑戦してみるというのも大いにありだろう。



入念なストレッチとウォーミングアップが終わった後、コートに散っていよいよボールを使った全体練習がスタート。



練習に使うボールはプラスティック製で大きさはハンドボールに近い。手に持った感触は「しなりはあるが硬い」というもの。これを足で蹴るわけだが、素人的に考えると、蹴った足が腫れそうな気がした。

その直感は正しかったらしく、実際、代表クラスの人間もくるぶしの噴火(血が噴き出すたとえ)を繰り返しながら上達してきたとのこと。野球も素振りを何百回と繰り返せば手にマメもできるし皮もむける。しかし、これを繰り返すことで、やがてそれに適応した肉体を手に入れることができる。トップアスリートを目の前にしていつも思うことだが、この肉体の進化へのあくなき探究心、これは競技を極めようとする人間の性なのかもしれない。



レシーブ/トス/アタック。この3種類がセパタクローの基本動作である。これはまさに、バレーボールそのものだ。しかし、一番の違いは、それらの動作を全て「足」で行うということ。足でネットの上からアタックをするには、高く跳びあがらなければならない。そう、この跳躍こそがセパタクローの醍醐味であり、その美しさが観る者を魅了する。



アタックはまさにオーバーヘッドシュートそのもの。これが試合中に何度も登場する。



アタックに対するブロックも基本的に足で行う。ちなみに、このシーンは見方を変えると、カンフー映画にも見えないだろうか?セパタクローは空中の格闘技であると私が感じた一場面である。

実際、セパタクローの代表クラスの人間は空間把握能力が相当長けているのではないかと思われる。空中で体を制御しながらボールを捕捉する。これは、空中においてボールと自分の体の位置関係を正確に把握していないと無理な話だ。一見何気ない動作の背後にはこういったとてつもない能力が隠されているのだろう。



練習は随時ミーティングを挟みながら行われる。このミーティングでは代表コーチより練習の狙いや考え方が選手に伝えられる。今回はコーチの飯田さんより「ミスについての考え方」が伝えられていた。

『してはいけないミスを減らしていこう。ミス自体は仕方がない。しかし、安易なミスを減らしていかないと世界では戦えない。してはいけない場面でのミスに対してもっと厳しさをもっていこう。』

「世界で戦う。」こういった言葉が出てくると、ここが「代表」の集まる場であることに改めて気付かされる。どの競技でもそうだが、日本代表の主戦場は「世界」が相手だ。世界で戦うためのメンタリティを持つことが選手一人一人に求められる。ここにメジャーもマイナーもない。代表に選ばれたからには、そこに強い誇りを持つことが大切なのだ。



日本代表は大きく3つのカテゴリーで選手が構成されている。強化指定選手、準強化指定選手、そして育成選手の3つだ。この内、強化指定選手が代表の試合に派遣されるメンバーで、現在の平均年齢は30代になっている。全体の平均が20代中盤とのことなので、それよりも高い。これは、セパタクローという競技に何より「経験」が求めれていることを意味する。試合の流れを読む力、ここ一番プレッシャーのかかる場面ののりきり方など、これらは経験の蓄積がものをいう。

そんなベテランに交じって、育成選手も練習に参加していた。育成選手は大学生が中心だ。彼らが経験を積み、やがて代表の中心メンバーになっていく。まだまだ競技人口の少ないマイナースポーツにおいては代表の活躍は何より大切だ。代表を頂点とし、彼らにあこがれる人が増えることですそ野が広がるからだ。純粋に今後の活躍に期待したいと思う。



練習後、セパタクロー日本代表の山田昌寛選手に話を伺った。

いつからセパタクローをはじめられたのですか?また、なぜセパタクローだったのですか?

「セパタクローをはじめたのは大学からです。高校ではサッカーをやっていました。きっかけは久しぶりに高校の1コ上の先輩に会ったら”日本代表候補”になっていたこと。身近な人がある日突然日本代表になったんです。これにはとても大きな刺激を受けました。頑張れば自分も代表になれるかもしれないと。」

現在のセパタクロー日本代表は、ほとんどが元サッカー選手とのこと。確かに、足を使ってボールをコントロールする点ではサッカーとの親和性が高い。しかし、サッカーは選手層がとてつもなく厚いので、日本代表は本当に選ばれた者だけが到達できる。ただそこであきらめるのではなく、自分のスキルを使ってもっと上を目指したい人間は、視野を広げれば色々な可能性が残されている。

現在の世界の強豪国はどこですか?

「タイ、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、韓国といった国々が強豪国で、日本のライバルとなります。特に、その中でもタイは筆頭で、毎年行われる世界選手権はタイで開催されています。キングスカップ(国王杯)という名前になっています。」

日本代表の今年の目標は?また将来の目標は?

「今年の目標と将来の目標は実は繋がっています。まずは、将来といっても来年2014年ですが、アジア大会(韓国)で金メダルを獲得すること。前回、2010年の中国大会では銅メダルでした。それを超えて金メダルを獲得することが日本代表の目標です。」

「しかし、そのためにはまずは今年の世界選手権で良い結果を残さなければなりません。そうしないと、日本代表として参加するための”派遣枠”をもらえないからです。」

来年のアジア大会に日本代表として参加するには、JOCから派遣枠をもらわなければならない。そして、この派遣枠を幾つもらえるかは今年の「結果」次第。オリンピック競技ではないセパタクローにとってアジア大会は最高の大会であり、ここで結果を残すことが最大のPRになる。そのチャンスを掴むためにも、文字通り「負けられない戦い」が続いていく。

最後に、これからセパタクローをはじめたいと考えている人はどうすればよいかについて聞いてみた。

「東京の場合には、大山、世田谷、国立の3か所でセパタクローをはじめることができます。初心者向けのセパタクロー教室などもやっているので、ホームページ等で情報をチェックしてみてください。」

セパタクロー教室では、タイミングが合えば日本代表選手から直接教わることもできるとのこと。代表選手とのこの距離の近さをぜひ体感してみてはいかがだろうか?