ボブ・ディランの全曲訳詞に挑戦中、「ディラン日記」のコーナー。ブートレッグ・シリーズ第1集を進めて来ました。3rdアルバム"The Times They Are A-Chnagin'"録音時期の未発表音源に入ってきておりますが、20曲目と21曲目はそのアルバム収録曲。ウィットマークという音楽出版社への登録用デモ音源がこちらに収録されておりますので飛ばします。訳詞の方は下記をご覧下さい。

D101-20 When the Ship Comes In
D101-21 The Times They Are A-Chanigin'

そして第1集のラストにこの曲が収録されておりました。あまりにも長い詩なもので2週間かかりました。疲れました。


Last Thoughts on Woody Gutherie
"The Bootleg Series Volumes 1-3 (Rare & Unreleased) 1961-1991"(1991)収録

今回は詩の朗読です。63年4月のコンサートの最後に披露されたものです。当時、死の病にふせっていたウディ・ガスリー(没年は67年)について、ある出版社からディランに対して25語でコメント書いてくれと頼まれたそうです。それを受けて5ページにわたって書いたものを、たまたまライヴの時に持っていたということで披露したものだそうです。

HPにはところどころに空白行があって、5ヴァースの形になっていますが、実際は一気に語っています。内容は希望についてのディランの考えを述べてものと解釈されているようです。

それではまずその原詩をディランのHPで確認下さい。
https://www.bobdylan.com/songs/last-thoughts-woody-guthrie/

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あんたの頭が捻じれて来て 心が麻痺して行く時
老い過ぎた 若過ぎた スマート過ぎた 間抜け過ぎたと考えた時
人生の忙しないレースでゆっくり這いつくばって
遅れてきたとか ペースが落ちてきた時
諦め出したら 何をやっていようが
ワインがあんたのカップに満杯にならなかったら
片手で支えながら 風があんたを横向きにしたならば
もう一方の手が滑り始め 感覚が無くなって
あんたの電車のエンジンの火が 新しい火花を捕まえたくて
木は簡単に見つかるが 取りに行くのは面倒で
あんたの歩道は曲がり始めていて 通りはとっても長くなる
あんたは後ろ向きに歩き始める 間違っているとわかっていても
孤独が湧き上がる 日が進むにつれ
明日の朝はとっても遠くに思われる
あんたのポニーの手綱が滑っているように感じる
あんたのロープは滑っている あんたの手が濡れてるから
あんたの太陽に覆われた砂漠と常緑の谷が
荒廃したスラム街とゴミ箱の路地に変わる
あんたの空が水を求めて叫び 排水管に注がれる
稲妻が光り 雷鳴が鳴り響く
窓がガタガタして壊れ 屋根が揺れる
あんたの世界はみな バタンバタンと叩かれる
あんたの数分間の太陽が 数時間の嵐に変わる
あんたは自分自身に時々言う
「こんな風になるなんて知らなかった
 オレが生まれた日に 何で言ってくれなかったんだ」
あんたは寒気を感じ始め 汗からジャンプする
あんたはまだ全く見つけてない何かを探している
あんたは手を暗黒の水に膝まで浸かり 手を空にあげて
世界中が窓を覗いて見つめてる
あんたのいい娘が去る 彼女はとっくの昔に飛んで行った
あんたの心は フライにされる時の魚のように 気分が悪い
あんたの手から足へ 削岩機が落ちて来る
あんたはとってもそれを欲しがるが 通りに置いてある
あんたのベルが喧しく鳴るが その音を聞くことができない
あんたは自分の耳が傷ついているかと考える
それとも視界を遮る泥で あんたの目は汚くなった
昨日のラッシュであんたは失敗したと考えた
あんたは騙され フラッシュの出来損ないでバカにされた時
クイーンを3枚持っている時はいつも
あんたは狂わされ 卑しくされる
ライフ誌の真ん中にいる時のように
ピンボール機の周りを飛び跳ねる
あんたが言いたい心の内に何かある
誰かがどこかで聞くべきこと
だがそれはあんたの舌に捕らわれて 頭の中に封印される
それがあんたをひどく煩わせる ベッドに横になっている時
どれだけやってみても  あんたはそれが言えない
あんたは自分の魂を恐れる ただそれを忘れるかも
あんたの目が泳ぎ出す 頭の中の涙で 
あんたの羽毛の枕が 鉛の毛布に変わる
ライオンの口が開かれ あんたはその歯を見つめてる
ヤツの顎があんたの下に近づき出す
あんたは腹ばいになってる 両手を後ろで縛られて
最期の迂回路標識を無視すれば良かったと思う
あんたはひとり言を言う オレがやっているように
オレが歩いてるこの道 オレが向きを変えるこの小道
オレがぶら下がっているこのカーブ オレがぶらつくこの小道
オレが取っているこの空間 オレが吸い込んでいるこの空気 
オレはたくさん混ぜ過ぎたか オレは激しく混ぜ過ぎたか
なぜオレは歩いているんだ どこへオレは走っているんだ
何をオレは言っているんだ 何をオレは知っているんだ
オレが弾いてるこのギターに オレが弱っているこのバンジョーに
オレが掻き鳴らすこのマンドリンに オレが歌ってるこの歌に
オレが口ずさむ音に オレが書いている言葉に
オレが考えている言葉に
オレがいつも飲んでいるこの時間の海に
誰をオレは助けているんだ 何をオレは壊しているんだ
何をオレは与えているんだ 何をオレは取っているんだ
だがあんたは全身全霊で試みる
これらの思いをを考えるな
この手の思いを広めたり 心臓をドキドキさせるな
だがまた なんでヤツらが周りにいるのか知る
滑ったり落ち込んだりするチャンスを待っている
あんたは時々ヤツらを聞くから 夜の時間が忍び寄る時
あんたは恐れる 寝ている間にあんたを捉えるかもと
あんたはベッドを飛び出す 夢の最後のところから
あんたの最高の考えが思い出せない
夢の中で叫んでいたのが自分だったら
あんたが必要としていた特別の何かを知る
治療に効く薬がないことを知る
あんたの頭脳の出血を止める酒はこの国にはない
あんたは特別な何かを必要とする
特別な何かが必要なんだよな
竜巻の線路を走る飛んでる超特急が必要だ
あんたをどこかに飛ばして 戻ってくる
ジェットエンジンを吠えさせるサイクロンの風が必要だ
永遠にドカンとブーンと吹き続けて来た
何百回にも及ぶトラブルを知っている
人種を問わないグレイハウンドのバスが必要だ
あんたの見てくれや 声や顔をを笑わない
帳簿の中で賭けたどんな数字で
バブルガムのブームが去った後も続くだろう
あんたには新しいドアを開ける何かが必要だ
あんたが以前見たことのある何かを見せる
だが百回かそれ以上見落とされた
あんたの目を開く何かが必要だ
それをわからせる何かが必要だ
それはあんた 他の誰もが持っていない
あんたが立っているあの場所 あんたが座ってるあの空間
世界はあんたを打ちのめしたりしない
あんたはなめられていない
あんたを狂わせたりしない
あんたが何度蹴られても
あんたには特別な何かが必要なんだな
あんたに希望を当てる何かが必要だ
だが希望は単なる言葉
たぶんあんたは言った たぶんあんたは聞いた 
ある広角カーブの風の強い曲がり角で
だがそれはあんたが必要なもの とっても必要としてる
あんたのトラブルはすごくいいだろう
あんたが見て寒気を催すから
1ドル紙幣では見つからない
メーシーズのショーウィンドーにはない
リッチな子供の地図にはない
ハリウッドの小麦胚芽では作れない
あの薄暗いステージにもない
中途半端なコメディアンが出てる
暴言を吐き暴れてあんたの金を取る
あんたはそれを滑稽と考える
ナイトクラブでもヨットクラブでも あんたはそれを見つけられない
サパークラブの座席にもない
そして間違いなく あんたは話そうとする
どれだけ強くこすっても
チケットの半券には見つからない
みんながあんたに話す噂の中にはない
みんながあんたに売るニキビ薬の中にはない
段ボールの家にも 映画スターのブラウスにもない
シュークリームの髪型にも 綿菓子の服にもない
10セントショップのまがい物や バブルガムの悪党にもない
チョコレートケーキの声の中のマシュマロの雑音にもない
クリスマスの包みの中でノックして叩いて出て来る音
可愛くないしキュートでもないオレの肌を見てと言いながら
肌が輝くのを見て 肌がきらめくのを見て
肌が笑うのを見て 肌が泣くのを見て
中身が入っているかどうかさえ感じられない時
この人たちはリボンと弓でとってもかわいい
今が別の日に 紙の張り子で作られた玄関先でも見つけられない
その中には糖蜜でできた人たちがいて
一日おきに新しいサングラスを買う
50の星を持つ将軍にも ひっくり返されたインチキ野郎にもない
10分の1ペニーであんたを引き渡すようなヤツら
息をしてゲップして 曲げてひびを入れるヤツら
あんたが1から10を数える前に
もう1回やるんだ 今度は後ろから
友よ
車輪を回し扱い渦巻きくるくる回すヤツら
砂場のような世界でお互いにゲームをする
勇ましく走り回る才能のない愚か者にも
あんたは見つけられない
そして才能を得たもののために全てのキマリを作る
才能がないのに才能があると思っているヤツらにもない
そしてあんたをバカにしてると考える
荷車に飛び乗るヤツら
しばらくの間 それが流行ってると知ってるから
ヤツらの刺激を得るために すぐにそこから出て行くんだ
そしてすべての種類のお金とひよこを作る
そしてあんたが自分に向かって叫び 帽子を投げ捨てる
こう言いながら「キリストよ オレもあんな風になるのか
オレがどこにいるか ここにいる誰もが知らない
オレがどう感じているか ここにいるだれも知らない
全能の善き神よ
そんなものは本物じゃない」
だがこれはあんたのゲームじゃない レースですらない
あんたには自分の名前が聞こえない 自分の顔が見れない
どこか他の場所を見なければならない
あんたの探しているこの希望をどこで探しているんだ
燃えているこのランプをどこで探しているんだ
光っているこのキャンドルをどこで探しているんだ
そこにあると知ってるこの希望をどこで探しているんだ
そしてどこかで
2種類の道しかあんたの足は歩けない
2種類の窓しかあんたの目は覗けない
2種類の廊下しかあんたの鼻はかげない
あんたは触ってひねることができる
そして2種類のドアノブを回す
あんたは自分で選んだ教会か
ブルックリン州立病院のどちらかに行ける
あんたは自分の選んだ教会で神を見つけるだろう
ブルックリン州立病院でウディ・ガスリーを見つけるだろう
これはオレの考えに過ぎないが
合ってるかもしれないし 違ってるかもしれない
あんたは両方見つけるだろう
夕陽のグランドキャニオンで
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それではその朗読をお聴き下さい。