ボブ・マーリー:One Love (映画)
先日公開された映画「ボブ・マーリー:One Love」を早速観て参りました。マーリーに関しては、ほぼリアルタイムで、何が起こっていたか把握していたつもりでしたが、こうやって映画でヴィヴィッドに再現されると、当時の切迫していた状況と、それに抗うかのように創られた音楽に込められたメッセージを、当時思っていた以上に強く感じることができました。映画は基本的に、マーリーが自宅で銃撃を受けた76年から、UKに亡命し"Exodus"を録音し世界的なヒットを収め、78年に帰国し"One Love Peace Cocert"を開催されるまでを軸として、幼少期の記憶、妻とのなるリタとの出会い、ラスタファリ運動との出会い、ザ・ウェイリング・ウェイラーズとしてのレコード・デビュー等のシーンを散りばめることによって、マーリーの生涯を表現する作品でした。まずは、レコード・デビューのきっかけとなったシーンで歌われた"Simmer Down"の、65年のオリジナル・ヴァージョンをお聴き下さい。典型的なスカ・ナンバーで、初めて聴きましたが気に入りました。https://www.youtube.com/watch?v=7xo-BCAjMiM映画は上記の78年のコンサートが始まるところで実質的に終わるのですが、このコンサートは、ジャマイカで内戦状態になるまで対立した2つの党の党首をステージに上げて握手をさせたことで知られています。そのシーンはタイトル・バック的な形で、その時の実際の映像が流されるという構成でした。ということで前置きが長くなりましたが、本日は、その映画のサウンドトラックを紹介したいと思います。One Love (Original Motion Picture Soudtruck)24年発表【収録曲】 ① Get Up, Stand Up ② Roots, Rock Reggae ③ I Shot the Sheriff ④ No More Trouble ⑤ War/No More ⑥ So Jah S'eh ⑦ Natural Mystic ⑧ Turn Your Lights Down Low ⑨ Exodus ⑩ Jamming ⑪ Concrete Jungle ⑫ No Woman, No Cry ⑬ Three Little Birds ⑭ Redemption Song ⑮ One Love / People Get Ready ⑯ Is This Love ⑰ Rastaman Chant⑤と⑥は映画のためにマーリーの息子が中心となって再録音されたもので、それ以外はオリジナルの音源が使用されているようです。個人的には良く知ってる曲と、今回初めて意識した曲が入り混じっております。映像は映画のものとは違いますが、この中から何曲かご紹介して行きましょう。まずは映画の冒頭に流れて来た、①"Get Up, Stand Up"。UKのアイランド・レコードからの2枚目のアルバム、"Burnin'"収録曲。聴衆に「立ち上がれ!」というメッセージを伝える、彼らの代表曲の1つ。https://www.youtube.com/watch?v=JLYOOezs3DA映画ではアルバム制作過程とその大ヒットを描いた77年のアルバム"Exodus"のアルバム・タイトル曲の⑨。アルバム・ジャケットのタイトルの文字は、エチオピアの装飾アルファベットであることが映画の中で語られます。知りませんでした。https://www.youtube.com/watch?v=43cfPgZ8cU8ここでエチオピアとの関係について簡単に触れておきましょう。ジャマイカ生まれのマーカス・ガーベイという汎アフリカ主義を唱えた活動家が、27年に「黒人の王が戴冠する」との予言を唱えます。この予言が、30年にエチオピアの皇帝にハイレ・セラエシ1世が即位したことで的中したとして、ガーベイはラスタファリ運動の精神的支柱となります。この運動が、スカやロック・ステディといったジャマイカの音楽と融合して、レゲエという音楽が生まれたとのことです。実際、この皇帝を称賛するレゲエ・アルバムが発表されています。さて、若い頃のシーンで妻となるリタがマーリーの部屋に入って来る時に、マーリーがアコースティック・ギターをつま弾きながら歌っていた、⑫"No Woman, No Cry"。聴く度に涙が流れそうになる心に沁みる名バラードです。74年の"Natty Dread"収録曲。https://www.youtube.com/watch?v=mZ6VezKMoRY映画のタイトルながら、タイトル・バックで流されていた、⑮"One Love/People Get Ready"。元々は65年のアルバムに収録されていた曲ですが、上述の"Exodus"のラストに収録され、マーリーの死後84年にはシングル・カットされ、有名人が出演するPVが作られました。マーリーの信念に基づく生前の活動と、残してくれた音楽に、深い敬意を表したいと思います。