Sea Breeze Season8 -9ページ目

突然の


日曜日。
ずっと梅雨空だったが、この日は晴れて気温も高く、真夏のような陽気だったので、久々に車を洗った。


きれいになった車で、そのままひとっ走り。いつもの海沿いを気持ちよく走っていたその帰り道、黒い雲が・・・


雲の流れが速い。


オーディオから流れていた音楽を、ラジオに切り換えた。

しばらく聴いていると、FM横浜が、局地的な豪雨、雷に注意が必要だと言っていた。


ここ最近の不安定な気候のせいなのか、あっという間に黒雲に覆われ、辺りは薄暗くなった。


対向車の中には、スモールランプを点灯させている車もいる。


遠くに見える建物の奥の海上。
雲が海まで繋がっているように見える。
多分、この海上はもの凄い豪雨になっているだろう。

その後、黒雲は通りすぎ、空は元の青空に戻った。



スイカ



スイカをもらった。


今年の初物。

写真では分かりにくいが、これは大玉ではなく、サイズの小さい小玉スイカ。

充分甘くてウマい。

しっかりと夏のスイカだった。





ふと思い出した


ここ数日、気温の高い日が続いている。

これだけ暑いと、海岸で遊んでいる人も多い。



シートを広げて日光浴をしてるグループ、デッキチェアを並べて、海を眺めているカップル、レジャーテントを広げている家族等々。




その中にロングヘアーの女の子がいた。

彼女は、その長い髪が顔に掛からないように、顔を少し右に傾けて友達と話している。



その仕草を見た時、ふと昔のお客さんを思い出した。





もう10年以上前になるが、毎年、海の家に遊びに来る、男女5~6人のグループがいた。

ひと夏に何度か来ては、海で遊んでいた。



20代前半ぐらいで、明るく賑やかなグループだが、ばか騒ぎをして他人迷惑をかけるような事は、絶対にしなかった。

その雰囲気から、多分、社会人だろうと思った。



売店もよく利用してくれた。



何度も海に来るうちに、その中の1人の女の子と話すようになった。



彼女は、ワンレンの黒く長い髪にウェーブをかけ、話す時はには、その髪が顔にかからないように、顔を少し右に傾けていた。



少しつり上がりぎみの目で、パッと見はちょっとキツそうに見えるのだが、笑顔でおっとりとした口調で話す。



その瞬間、一気にほんわかした雰囲気に変わる。そんな不思議な魅力を持っていた。



彼女は、帰る時にも売店に必ず顔を出し、



「おにいさん、そろそろ帰るね。」


「今日も楽しんだか?」



と、問い掛けると、



「うん、すごく楽しかったよ。」



と、あの仕草と口調で話す。



彼女は、こちらが聞くと、いつも「うん」とうなずいてから答えた。

その度に、彼女の長い髪が揺れる。



「じゃぁ、気をつけて帰れよ。」



と言って送り出す。


彼女は、


「うん、ありがとう。またね。」


と、ニッコリ微笑んで、控えめに手を振りながら帰って行く。



初めはその程度の会話だったが、


やがて、


「結構、赤くなったなぁ。」


「うん、体は火照るし、ヒリヒリするし、もう大変だよぉ。」


「今日はもうTシャツ着てた方がいいぞ。それ以上焼くなよ。」



とか、次に来た時には、



「おっ、いい感じに日焼けが馴染んできたじゃん。」


「うん、結構キレイに焼けたでしょ?」


とか。



彼女の日焼け濃くなるにつれて、会話の回数も時間も長くなっていった。



彼女達は、ひと夏に何度も来るのだが、毎年7月最後の土曜日だけは、いつもかなり早い時間に帰って行った。



オレは、彼女に、



「今日はやけに早くないか?」



すると、彼女はいつもの仕草でニッコリと笑い、



「うん、これから花火大会を見に行くの。」


「あぁ、そうか。今日はあそこの花火大会か。」


「うん。だから早めに行って場所取りしないと。」



と、ニッコリ微笑んだ。



当時、7月の最終土曜日に、大きな公園のある港の近くで花火大会が行われていた。


電車ならば、途中下車をして駅から歩いて行ける。車でも行けるが、駐車場の確保はかなり厳しい。



「夏の間、また遊びに来る?」


「うん、そのつもり。まだ、お盆休みもあるし。」



それからも彼女達は、毎年、ひと夏に数回海に遊びに来た。


帰りはいつものように、オレの所に顔を出した。


そして、7月の最終土曜日だけは、早めに切り上げて花火大会に行く。

それが毎年の恒例行事になっていた。



やがて夏も折り返しを過ぎ、終わりが近づく頃になると、



「おにいさん、そろそろ帰るね。」


「じゃぁ、気をつけて帰れよ。」


「うん、ありがとう。でも、ごめんね。」


「何が?」


「今年は今日が最後かもしれないから。」


「そうかぁ、もうそういう時期かぁ。」


「うん、あっという間だよね。」


「じゃぁ、また来年だな。次の夏を楽しみにしてるよ。」


「うん、またね。」



と、いつもの仕草で微笑むのだが、その中に少し寂しそうな雰囲気が漂っていた。



そして、翌年の夏には、


「おにいさん、今年も来たよ。」


と、嬉しそうに売店に顔を出す。



毎年そんな感じだったが、いつからか、彼女達の姿を見なくなった。



あれからもう10年以上、あの彼女は、今どうしているだろう。