おはようございます。
BBブリッジの番場です。
今回は前回のブログでも記載したゲノム編集技術について記載します。
ゲノム編集技術は好きなところでDNA配列を切断し、そこに任意の配列を組み込むという遺伝子操作の手法の1つです。
ゲノム編集についてはいくつかの技術があります。第一世代の技術として登場したのは酵素タンパクであるZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)です。DNA切断の作用機序については文章で説明することが難しいため詳細は割愛しますが、以下のページでわかり易く解説してありますのでご参照ください。
ゲノム編集がひらく遺伝子改変マウスの未来
http://leading.lifesciencedb.jp/wordpress/wp-content/uploads/2014/07/Ikawa-3.e008-PDF.pdf
その後、ゲノム編集技術は様々な技術開発が行われました。現在では2013年に発表された第三世代の技術であるCRISPR -Cas系が主流となっています。CRISPR-Cas系では、Cas9タンパク質(DNA切断酵素、分子量10~15万)がガイド鎖RNA(gRNA)と共同して標的DNAを切断します。従来技術の課題であったベクターの作成において、5‘末端の20塩基を変更するだけで標的の変更が可能になったため、DNA配列の認識精度も向上し、実験も安価で手軽になっています。
ゲノム編集技術はライフサイエンスの基礎研究分野では必須技術になりつつあります。
基礎研究分野では重要性が増しているゲノム編集技術ですが、もう1つの期待される応用分野が遺伝子・細胞治療、いわゆる医薬品開発(創薬)での利用です。
例えばゲノム編集技術を使うことで遺伝性疾患を持つ患者の疾患の原因になるDNAを切り取り、正常な遺伝子を挿入することで根本治療につながる可能性があります。もちろん遺伝性疾患だけでなくがんや感染症など幅広い疾患の治療に応用することができます。
前回のブログでも記載しましたが、既に米国のベンチャーSangamo BioSciencesは、第1世代であるZFNを用いたHIV治療薬SB-728のフェーズII試験を進めています。さらに第3世代のゲノム編集技術に関する多くの特許を持つBroad Institute(MITとHarvardで共同運営される研究所) の研究者らによって2013年にEditas Medicineが設立されています。Editas Medicineはゲノム編集技術を活かした医薬品開発を目的としています。これ以外にも複数の製薬関連企業がゲノム編集技術を応用した創薬研究に取り組んでいます。
このように次世代医薬品のための基幹技術として期待の大きいゲノム編集技術ですが、医薬品として実用化するための課題も山積しています。最も大きな課題は標的とは異なった遺伝子配列を切断することによるオフターゲット効果です。
また、現状ではヒトから細胞を取り出し、ゲノム編集のためのタンパクがベクターを介して遺伝子情報として導入(ex vivo投与)、その後に細胞が患者に戻されされますが、細胞培養やベクター作成など治療コストが非常に高額になる懸念もあります。細胞を取り出さず、ヒトにそのまま薬剤として投与して(in vivo投与)効率的に遺伝子導入できる技術が開発・実用化されれば、ゲノム編集技術の適用疾患は一気に広がります。
ゲノム編集を用いた治療技術開発の今後の方向性について、オフターゲット効果やデリバリーの問題は核酸医薬品の開発で問題となってことと類似しています。医薬品として先行している核酸医薬品のノウハウを取り込むことでゲノム編集技術を活用した革新的な遺伝子・細胞医薬品の創出につながることが期待されます。
当社作成のレポートの詳細についてご興味がある方は以下をご参照ください。
「世界の遺伝子医薬品開発の現状と将来展望」
http://www.bb-bridge.co.jp/reports/133/
「世界の細胞医薬品開発の現状と将来展望」