おはようございます。
BBブリッジの番場です。
細胞医薬品ビジネス関係者には衝撃的なニュースです。
日経バイオ等でも取り上げられておりますが、樹状細胞を用いたがん治療用細胞医薬品の開発を行っていたDendreonが11月10日にChapter 11(日本でいう民事再生法)を申請しました。
Dendreonは樹状細胞を用いた前立腺がん対象細胞医薬品Provengeを開発、がんを対象とした細胞医薬品製品として初めて米国FDAが2010年に承認しています。
Provengeは細胞を医薬品として使うということで通常の医薬品と製造方法も大きく異なります。製造について、前立腺がん患者さんから免疫に重要な役割を担う樹状細胞を取り出し、そこにがん抗原を処理し、これを患者に戻すことで患者自身の免疫作用を利用してがんを治療するというものです。
Dendreonが経営破たんした理由の詳細についてはこれから明になると思いますが、個人的に最も大きな要因はProvengeの過大な売り上げ計画に起因する過剰な人員・設備投資であると思います。
過大な売り上げ計画が生まれた理由として以下が推測されます。
1)Provengeの治療価格が高く、医療現場で予定通り普及しなかった
→Provengeは1サイクルで3回投与されますが、1サイクルの治療コストは10万米ドル弱(1,000万円前後)です。 一方、治療効果としてフェーズIII試験(プラセボ比較)の結果、Provenge群の全生存期間が25.8か月、プラセボ群が21.7か月と4か月の延長でした。
2)競合となる安価な新薬の登場
→2010年以降に前立腺がんを対象とした安価で手軽な経口の低分子医薬品(XtandiやZytiga)が上市されました
実際に2012年に発表したのProvengeの2011年売り上げ実績が予定よりも大幅に下回り、株価は暴落、従業員の大幅なリストラを行っています。2011年当初には1,600名を超えていた従業員が現在は700名程度になっています。
Provengeの2013年度の売り上げは約2億8,300万米ドル、売上原価は1億6,600万米ドル、粗利益率はわずか41%でした。Provengeは細胞の回収・加工・出荷が必要で通常の医薬品とに比べ製造原価がかかり粗利益率は低くなりますが、それにしても粗利益率41%は低いです。これでは開発や設備投資は回収は難しいです。ちなみにバイオ医薬品大手のBiogen Idecの2013年度の粗利益率は88%です。
さらにProvengeの高額な治療コストが米国の保険会社での採用において大きな障壁になり、保険採用が進まなかったことも売り上げが低調になった理由の1つになっていると思います。
Dendreonが申請したのはChapter 11ですので、今後は債権放棄や経営陣の一新を経た後、再び企業活動を再開することが期待されます(どこかの企業に買収されるかもしれませんが)。実際にDendreonはProvengeの供給は問題ないと発表しています。
現在、細胞医薬品を開発している企業にとってもDendreonの経営破たんから学ぶことは多いと思います。特に販売計画と設備投資には細心の注意と綿密な計画が必要で、製品の上市直後は外部製造企業の活用など自社施設への設備投資を抑え、製造コストの低減手法開発への投資などを行いながら慎重にビジネスを進めることが必要だと思います。
11月17日追記:
Dendreonの処理について、連邦破産法第363節に則りDendreonは競売にかけられるそうです。落札者は最低2億7,500万米ドル以上の価格で入札する必要があり、入札者が現れない場合、Dendreon独自で再建していくとのことです。
BBブリッジではDendreonの詳細や細胞医薬品の開発動向についての技術レポートを作成しております。ご興味がある方は以下をご参照ください。
「世界の細胞医薬品開発の現状と将来展望」