おはようございます。
BBブリッジの番場です。
BBブリッジでは2016年1月にCAR/TCRを対象とした以下の技術レポートを発刊しました。ご興味がある方は以下のリンクをご覧ください。
「T細胞受容体遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)開発の最新動向と将来遠望(2016年1月発刊)」
また、開発の最新動向について以下のブログで記載しています。
【2016年12月6日】CAR-T療法が承認申請・実用化へ大きく近づく!!
近年、がん治療においてキメラ抗原受容体発現T細胞療法(Chimeric antigen receptor –T-cell:CAR-T、海外での呼び方はカーティが一般的です)が注目されています。CAR-T療法は生体内の免疫機能を活用したがん治療法で、再発性・難治性の慢性リンパ性白血病の患者さんに著効を示したことが医学会のトップジャーナルであるNew England Journal of Medicineのトップページに報告され(N Engl J Med 2011; 365:725-733
)、一気に注目を浴びました。
がん免疫療法においてCAR-T療法が非常に注目されている背景には、従来のがん免疫療法で有効性を得る難しさがあります。これはがん細胞がその発生過程や治療経過中に様々な免疫回避機構を獲得するからであり、例えばがん細胞は免疫反応に必要なHLAや共役分子の発現を低下・消失させることができます。一方、CAR-T療法の場合、HLAを介さず直接がん抗原に対して抗原提示が可能であるため、がん細胞の免疫回避機構を無効化することができると期待されています。
具体的にCAR-T療法はどのようなものかというと、がん抗原(CD19)を特異的に認識する改変した抗体の遺伝子とT細胞の活性化に必要な補助刺激分子を結合させた遺伝子(CAR)を患者さんから採取したヘルパーT細胞及び細胞傷害性T細胞にウイルスベクター(レトロウイルスやレンチウイルス)を用いて導入します。CAR遺伝子が導入されたT細胞は再び患者さんの体に戻され、がん細胞と特異的に結合することでT細胞の持つ抗腫瘍活性により治療効果を発揮します。CAR-T療法は遺伝子導入を伴う細胞医薬品であると考えられています。
CAR-T療法については以下にわかり易く解説されていますので、ご興味がある方はご参照ください。
「キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法」中沢洋三 信州医誌,61⑷:197~203,2013
実際の医薬品としてのCAR-T療法の開発について、海外ではUniversity of Pennsylvania's Perelman School of Medicineによって基礎技術が開発され独占的開発・販売権がNovartisに供与された開発品(CTL019)が最も開発が進んでおり、現在フェーズII試験段階にあります。これ以外にもKite PharmaやJuno Therapeutics、Intrexon(いずれも米国のベンチャー企業)などが開発を進めています。なお、IntrexonはMerck SeronoとCAR-T療法に関する共同開発契約を2015年3月に締結しています。
一方、国内ではCAR-T療法に関する特許を保有していた㈱バイオイミュランスを2014年に子会社化した細胞医薬品開発企業㈱テラが開発を進めています。
がん治療において存在感を高めているCAR-T療法ですが、実際にがん治療法として汎用的に利用するには多くの課題を解決する必要があります。1つはウイルスベクターの安全性の確保であり、より安全性の高いin vitroの遺伝子導入方法を確立する必要があります。また、免疫療法であるため重篤な副作用が生じた際の対応も検討しておく必要があります。実用化への最も大きな課題は治療のためのコストです。CAR-T療法は患者からT細胞を取り出し、遺伝子導入して戻すという工程を経るため、治療コストが非常に高額になると思います。1回の治療で高い効果が期待できるメリットはありますが、現時点で治療コストは1,000万円を軽く超えることが予想されます。製造工程の標準化などによって如何に治療コストを抑えられるかという視点も重要になります。
いずれにしてもCAR-T療法は臨床データが少ないため、今後、どのような臨床試験の結果が発表されるのか、非常に注目されるところです。
2015年11月追記:米国へ出張して最新動向をブログにアップしました。ご興味がある方はこちらもご覧ください。
BostonでのCAR-T療法、TCR療法関連会議への参加