Vol.32 Central Park Walk
Central Park Walk
セントラル・パーク・ウォーク
春ですね。つい春風に誘われて散歩がしたくなる季節になりました。札幌と同じ緯度のニューヨークは4月の末が桜の見ごろですが、今年は3月に暑い日が続き、いつもよりも桜の開花が早かったようです。
私の母は俳句が好きで、たくさん俳句を作っていましたので、3年前に母の俳句集を姉と二人で、作りました。昨年、母が亡くなった時にその俳句集を母の棺に入れました。この俳句集のイラストを描いてくれたのは、バザー日本版でもイラストをお願いしたことのある牧かほりさんです。
その母の俳句を紹介しながら、セントラル・パークの花をみなさんと一緒に観賞しましょう。
セントラル・パークで一番初めに咲くのが、黄色いラッパ水仙です。
ラッパ水仙はとてもけなげな花ですね。一生懸命、細い首で大きな頭を抱えている姿がいとおしいです。
次に咲くのが、レンギョウです。燃えるような黄色が鮮やかです。
そして、白とピンクのマグノリア。大きな木全体が、白とピンクに染まり見事です。
1週間後に同じところにいったらもう散っていて、芝生が一面、白とピンクに染まっていました。
「散りしきる花の絨毯そっとよけ」
母は桜をイメージしてこの俳句を作ったのですが、散ってしまったマグノリアもふんずけてしまうには忍びない気持ちになりました。
そして、セントラル・パークにもソメイヨシノがあります。
「七十を超え、七十の桜かな」
母はこの俳句を70歳になり、あと何回桜を見られるだろうかという気持ちで作ったそうですが、違った解釈もできます。70歳にならなければ実感できない感慨を持って桜を愛でてみる、そんな時を迎えられるのも素敵なことのような気がします。
ニューヨークでは、ソメイヨシノよりも八重桜のほうがたくさんあり、ニューヨーカーのほとんどは桜と言えば八重桜と思っているようです。
セントラル・パークには八重桜のアーチがあります。この下を通る時、人々は本当に楽しそうです。
この公園には多くのボランティアが働いています。こうした市民ボランティアがこの公園を美しく守っているのです。
「春の雨あがりて土のぬくもりぬ」
こうしたボランティアのおかげで、公衆トイレも綺麗です。外観のデザインもしゃれているでしょ。
そして、春といえば、やっぱりチューリップですね。
私はチューリップも好きです。咲き始めのピンとした時期もいいですが、枯れる直前の花が開いて頭を垂れた円熟した姿もなかなかセクシーでいいですよ。ロバート・メイプルソープが撮ったしなだれたチューリップの写真が私は好きです。私も若くないから、円熟のチューリップのほうに、シンパシーを感じてしまうのでしょうか。
「帰り来てお茶の苦さや花疲れ」
「独り居の友幸せと桜餅」
花疲れは心地よいものですね。さあ、桜餅を買ってきてお茶にしましょう。










