Vol.61 FNY (14) Jan Glier Reeder / Curator
Jan Glier Reeder / Curator
前に紹介したブルックリン美術館のAmerican High Style 展 とメトロポリタン美術館のAmerican Woman展 のキュレイターを務めたのが、ジャン・グリア・リーダーさんです。
ジャン
メトロポリタン美術館での両展示のシンポジウムでジャンさんとアンドリュー・ボルトンさん(American Woman展のキュレイター)のレクチャーを聴いて、なんと綿密で長い調査の上にこれらのエキジビョンが成立したのかと感銘を受けたのです。
メトロポリタン
ブルックリン
ジャンさんは85年にFIT(ニューヨーク・ファッション工科大学)で初めて設立されたコスチュームとテキスタイル専門のミュージアム学のコースで勉強しました。その後、ミュージアムやオークションハウスで20世紀のファッションを手掛け経験を積みました。その後、メトロポリタン美術館の衣装研究所のコンサルタント・キュレイターになりました。
そして、ジャンさんはブルックリン美術館にあるまだ公開されていない衣装や資料の調査を実施しました。このプロジェクトにはメロン・ファンデーションが4億円の資金を提供しました。彼女は3年間、10人のスタッフを使い、美術館に眠っている素晴らしい宝物をまとめ上げたのです。
そして、その調査結果を基に、2つの美術館がコレクションをお互いに分かち合うというパートナーシップを組んだのです。上記の2つの衣装展は2つの美術館が初めてのパートナーシップを組んだ展覧会でした。
ジャンさんは25000点の衣装の中から、展示に適した質のいい4000点を選びました。さらに今回その中からジャンさんが選らんだ衣装が両美術館に展示されたのです。ほとんどが初めて公開されたものでとても貴重な物ばかりです。
「この展示は8月には終わってしまうのですが、これらの展示を米国内、そして海外へ巡回展示をすることが私の次なる仕事です。まるで子供たちを旅に出すような気分ですね」
キュレイターという仕事は日本でも人気のある仕事ですが、キュレイターになるためにはどんなことが大事なのでしょうか。
「まず、知的好奇心が旺盛なこと、批判精神と分析力も必要ですね。アイディアをまとめて、新しいアイディアとして表現する技術も必要です。そしていい文章を書くことも大事ですね。またたくさんの人がかかわるので、マネージメント能力もなければなりませんね」
うーん・・とても大変そうですね。ジャンさんがまとめた分厚いエキジビションの本を見ただけでもその大変さがわかります。
こうした能力を磨くために、ジャンさんは日ごろからブロードウエイの芝居やオペラやバレエ、パーフォミングアート、コンサートをたくさん見ています。ニューヨークでジャンさんが好きな場所は美術館以外ならカーネギーホールというのもうなずけます。
メトロポリタン美術館の衣装研究所の奥にある彼女のオフィスの壁に貼ってあったファッション人形の写真にはとても興味をひかれました。
アメリカン・ハイスタイル展に展示された人形たちです。前のブログでも書きましたが、見ているだけで幸福を感じてしまいます。この人形は49体あるとのことです。フレンチ・クチュールデザイナーがデザインしたドレスを着たこれらの人形は第二次大戦後、アメリカに寄付されました。人形だけの展示もおもしろいと思いますと私は思わず、ジャンさんに提案してしまいました。だって人形を嫌いな女性はいないし、19世紀から20世紀初頭の完璧なスタイルをした人形なんて見るだけで十分価値があると思いませんか。
ジャンさんの素晴らしい感性と構成力でいつか実現することを願っています。でも人形だけではなく、ジャンさんのところにはまだ数千点の衣装があるのですから、これからどんな衣装展が行われるのか本当に楽しみですね。






