Vol.65 Central Park Walk
Central Park Walk
ニューヨークも暑い日が続きますが、この暑さにめげず、セントラル・パーク・ウォークを続けています。春にはチューリップが咲いていた庭には向日葵やカンナなど、そのほか名前がわからないのですが、たくさんの夏の花が鮮やかな色を競っています。
芝生では家族連れやカップルが木陰で寝そべっています。
ここで母の俳句を一句。
“寝ころべはいぐさの匂い初夏の風”
この公園にはたくさんの石の橋があります。その橋を描いている人がいました。とても上手ですね。
“過ぎ行きし夏を惜しむか蝉の声”
この絵を描いている人の背中で蝉が鳴いていました。
では、セントラル・パークの中で私が一番好きな場所にご案内しましょう。
公園のほぼ中央で66丁目から72丁目まで続くまっすぐに伸びた幅の広い道で、モールと呼ばれています。曲がりくねった道がほとんどのこの公園の中にあって唯一のまっすぐな道です。道の両側には大きなニレの木とベンチとしゃれた街灯があり、なんだかヨーロッパのように洗練されています。
この道にはもう一つの名前があります。“文学の道”とも言われており、世界の文学に影響を与えた人の銅像が並んでいます。
まずシェイクピアです。
これには説明はいらないでしょう。私が小学生の頃、父が“シェイクスピア全集”を買ってくれた時、姉にまだ私には難しすぎるといわれ、悔しくて全集を読破したことを懐かしく思い出しました。
18世紀のスコットランドの詩人ロバート・バーンズの名前を知らなくても、彼がスコットランド民謡を収集し、改作した“蛍の光”や“故郷の空”はよく知られていますよね。
詩人、小説家のウォールター・スコットは「ロブ・ロイ」「湖上の美人」などで世界的に有名になり、スコットランド銀行発行の紙幣にもなっています。
この道を歩くとなんだか、いい文章がかけるような気がして、時々、書きかけの原稿をここのベンチで、推敲することがあります。
実を言うと今、書いている小説「あなたを待ちながら」(「私をみつけて」の続編)にもこのモールのシーンが出て来ます。主人公が恋人とこの道を手をつないで歩くシーンです。
少しだけ、公開しますね。
「ニレの木の緑が、降り注ぐ午後の太陽を遮断し、木漏れ日が美しい影を作っている。涼しい風が天使の羽根のように舞い降りてきて、汗ばんだ私の頬を心地よく刺激する。まるで今日の私を祝福してくれるかのように。(中略)この“文学の道”をマイケルとこうして歩いたことを私は一生忘れないだろう。偶然にも”マイケルのベンチ“を見つけ、マイケルからサクランボのようなルビーのイヤリングをプレゼントされた今日の誕生日を私は一生忘れないだろう」
”マイケルのベンチ“というのを説明しますね。
この公園には、市民が寄贈したベンチがたくさんあるのですが、それぞれのベンチには愛情溢れるメッセージが書かれています。そして、とても素敵なメッセージを見つけたので、その内容を私の物語の中にいれて、”マイケルのベンチ“と呼んでいるのです。
「人生の喜びを反映しているこの道をいつも歩いていたビッグドリーマーのあなた。あなたをとても愛しています。あなたがいないのがとても淋しい」
この言葉は私の物語の主人公の過去と未来に関係があるのです。今、悪戦苦闘しながら、この物語を書き続けています。いつかみなさんに発表できることができますように。










