Vol.70 Artists in Catskill 2 Ellen Wong
Artists in Catskill 2 Ellen Wong
キャツキルの画家をもう一人紹介しましょう。エレン・ワングさんです。エレンさんもトーマス・コールの風景画とキャツキルの自然に魅せられて、20年前にこの地に移り住みました。彼女の家とアトリエは森の中の温室を改造したものです。
外からみると温室とわかりますね。でも中はとてもモダンに改造されて、住み心地がよさそうです。彼女のアトリエからは広大な森が見えます。
森に続く庭には木の椅子やハンモックがあり、こんな環境で本を書くのが私の理想です。
ちょうど、近くの街のマーガレットヴィルのギャラリーで彼女の個展が開かれていたので、エレンさんを訪ねました。
「子供の頃から笑わない子でしたが、紙のテクスチャーが好きで、絵ばかり描いていました」というエレンさんはブルックリンカレッジで、アートを学び、ハドソン・リバー・アーティストの奨学金を得て、様々なアーカイブを直接調査する機会に恵まれました。その時にトーマス・コールの絵についてもたくさん学ぶことができました。
いくつか彼女の絵を見てみましょう。
どこまでも続く道や山々、忘れ去られたような家など、どこか懐かしさを漂わせています。
「私は風景を写真のようにリアルに描くのではなく、人間と自然の関係を描きたいのです。雨や雨上がり、風、雲などの自然が私たちに与えるエモーションを描きたいのです」
エレンさんは車でキャツキルの山や草原に行き、よく歩きます。そして気にいった風景に出会うとカメラに収めます。
そのイメージを大事にしながら、彼女の風景画に仕上げていきます。
エレンさんの絵を見ていたら、遠い昔のことを思い出しました。私が小学生の頃、写生に行き、土手から見える家を描いたことがあります。その時、屋根の色が黒とグレーしかなかったので、私の好きな赤い屋根を入れて描いたのです。事実とは違っていましたが、絵の先生に褒められてとてもうれしかったことを思いだしました。
エレンさんの絵には、淋しさんが漂っているのですが、でも同時にとても温かいのです。遠い道や山の向こうには優しいお母さんが待っていてくれるような暖かさを感じるのです。ですから、この遠い道を一人でも歩いていけるような気がしてくるのです。
エレンさんは油絵だけではなく、紙のテクスチャーがより見えるウォーターカラーも描きす。
嵐が去り、空が赤くなった牧場では、牛たちが草をゆったりと食べています。エレンさんの絵を見ていたら母なる自然に抱かれたような安心感を得ることができました。1848年に亡くなった風景画家トーマス・コールから、160年以上たってもキャツキルの自然を愛して、素敵な風景画を描いている画家がいることは素晴らしいことですね。









