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木嶋佳苗の拘置所日記




2014年02月16日

東京拘置所の散髪係

東京拘置所の食事は朝食が7時20分、昼食が11時半、夕食が4時。どのくらい急かされるかと言うと、起床は7時、称呼番号を確認する点検が7時10分。20分に朝食の配当が始まる。そして、裁判があると、30分には出廷する支度して部屋を出るのだ。
起きてから布団を畳み、掃除をし、顔を洗ったり、歯磨きしたり、服を着替えたり、髪を梳かしたり、身なりを整える全てを、食事を含め30分以内で行わなくてはいけないんですよ。点検の10分間は何もできないから、実質20分以下。信じられます?二審の初公判は一口も朝食を食べる時間がなかった。このスケジュールは、絶対おかしい。7時までは布団の中に寝ていなくてはいけないので、準備を前倒しすることはできないの。
私の控訴審は、東京高等裁判所の刑事第102号法廷で行うのですが、この102号法廷というのは、高裁で一番大きい所なの。小さい法廷で良いじゃないですか。7時半に葛飾区の小菅を出発すると、8時半には霞が関に到着しているのよ。午前中に公判を開いてくれたら良いじゃないですか。どうして5時間も待たされなくちゃいけないのよ。傍聴席の抽選があるって?そんな行列に並んでまで見る価値ないですよ、裁判なんて。
二審は絵描きが少ないと聞いていたのに、ズラーッと並んでびっくりしたのですが、また描かれるのかしら?私は一審の判決公判で法廷イラストを描いた河原崎さんの絵に大変不満を持っています。全然私と似ていないのに、色んな新聞に使われて大迷惑。二審で上手に描けた人がいたら、是非送って下さい。実物以上によく描けたなって自信のある人だけお願いします。
皆さんご存知ないでしょうけれど、東拘は素人の雑役が散髪係に変身するんです。しかも、ホームセンターや通販で売っているような家庭用バリカンで。信じられん。鋏は凶器なんですってよ。クリスマスにバリカンで、短いおかっぱ頭にされました。
もちろん、雑役女性との直接会話はなく、髪はどんどん短く切られます。宮様が軍人だった時代は、侍従武官が付いてきて、お問いがあっても、一般人は直接返答してはいけなかったでしょう。直接聞かれても、答える時は必ずお付きの武官の方を向いて間接に返答する。あの方式ですよ。
私が、バリカン持ってる雑役さんに質問しても、彼女は職員を見て答えるわけ。この光景はかなり異様です。
雑役「何センチ切りますか?」と職員に向って訊く。
職員「どのくらいまで切るの」と私に訊く。
私「この辺りで揃えて下さい」と顎を指す。
雑役「3センチぐらいですか?」もちろん職員の方を見て訊く。
職員「そうだね。とりあえず、全体的に3センチ切ってみて」
雑役「わかりました。」
私「お願いします」
ゾリゾリ不気味な音が聞こえ始め、切られた髪がケープの上をさらさらと流れる落ちてゆく。もしかして彼女は、今回初めて散髪係をするのではなかろうかと心配になる危なっかしい手付きだった。怖いほどに目は真剣。彼女は、一心不乱にバリカンを動かしていた。調髪室には、ジョリジョリッザザザーと怪しい音だけが響いている。
ブロッキングせず、櫛も使わず、真っ直ぐ揃えて切ろうとすることに無理が あるのでは・・・道具箱にはクリップが見えるし、作業服の胸ポケットには櫛が覗いているのに、なぜ使わないのか・・・
彼女は右側の髪を切っては、首を傾げ、左を切っては耳を傾げ、右、左とバリカンを当てているうちに「うーん」と唸り出したではないか。私の髪は、既に顎のラインより短くなっている。この調子で前髪も右、左とやられてはたまらないので「前髪はそのままで結構です」と私は言った。
30分にわたる格闘の末、右と左と後ろが2~3cm違う長さのおかっぱ頭にされたのだ。不満げな私の顔を見て職員が「プロじゃないからね、このぐらいで我慢して」と言った。
納得できない私は翌日、フロアの担当職員に苦情を伝えた。「これはあまりにもひどいでしょう。私、来月裁判あるんですよ。また髪が変だって記事にされたらどうしてくれるんですか」と訴えた。
「今年は難しいと思うけど、年明けに何とかするから、ちょっと待ってて」 と言った担当さんは、果たして約束を守ってくれるだろうか。
20140年1月5日記