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今、CFOに求められるもの(その4)

株式会社インテグリティ 代表取締役
米国公認会計士
尾関 好良 氏


柔軟性を持てる働き方から「建設的批判の目」を養う

――例えば、「当社にもCFOが必要だ」と考えた企業に、セミナーなどでまず何を教えるのですか?

 私の講座では、その時ごとにいろいろなテーマ設定をしてありますので、一概にこれを教えているとは言えません。しかし、私が一貫して企業に言うのは、CFOに限らず、経営を担わせる人材を育成するために、30代のうちにいろいろチャレンジさせるということです。
 人のマインドは、年齢とともに頑固になり、新たな情報や他人の意見などを受け入れる柔軟性に欠けてきます。企業に貢献できるCFOを育てようとするなら、20代後半から30代前半くらいのうちに育成に向けて仕掛けていくことです。
 経営には柔軟な思考が大切ですが、これを持ち続けるには、自分がやっている仕事を時々距離を置いて見直すことが重要です。例えば、本社機構の外、できれば物理的に離れた海外支社などから「本社は何をやっているんだろう?」「ウチの会社は、何故こうしているのだろう?その理由は何だろう」というように「建設的批判」をすることも、経営者になる訓練として非常に大切ですね。いかに冷静に、客観的に物事を見られるかどうか。その能力を日々鍛えておかないと、経営をする立場になったとき、自分の中の固まってしまった思考や持っている知識の範囲でしか経営ができなくなります。


――先ほど粉飾決算の話が出ました。日本企業を取り巻く環境について教えてください。

 粉飾決算がもたらす悪とは、数字をいじることではありません。数字をいじったことを隠すことにあるのです。日本でも、四半期決算を発表することがようやく定着してきた感があります。公開企業の責任の1つとして、無理をせず粛々と業績を公表する。へんに数字をいじって、次期以降の負担にしないことです。四半期決算を出すようになった2002年当時、ある企業のトップが、「日本の企業は、第4四半期で、一年間の8~9割の収益を出すんだから、第1四半期は赤字になって当然。そんな決算報告をしても意味がないのではなかろうか?」と時代錯誤なことを言っていました。
 その頃に比べれば、企業統治の環境はいい方向に変わってきたと思います。無理やり決算をさせるのではなく、「公開企業がやるべきことを、当たり前にやっているだけ」という意識を企業自身が持つようになってきたことは、大変喜ばしいことだと思います。


――今まで数々のCFOを歴任されてきた尾関さんはCFOのプロといえると思います。今後、個人的にやっていきたいことがあれば、ぜひお聞かせください。

 今後やっていきたいことは、三つあります。まず一つ目は、「企業再生」。二つ目は、今まで言ってきた「企業倫理の教育」。そして三つ目は、「次世代経営者の育成」です。
 まだまだ古い体質の企業が多く、それから脱しようともしないことが目につきます。1980年代後半のバブル期に比べれば、そういう企業は少なくなってきたかもしれませんが、まずは、「時代についていけない企業」の再生をしなければならないと思います。それは、私が無理やりに企業の体制を変えていくのではなく、その企業にいる人たちの考え方を変えてもらうため、啓蒙活動し、人材を教育し、次の経営者に育てることにつなげていきたいと思っています。
 それと、これからの企業に学んでほしいのは、コンサルタントをうまく活用することです。従来のように、「コンサルタントに任せておけば、後は放っておいても大丈夫」という他人任せの意識はやめましょう。経営者自身が主体的に関わって、コンサルタントの力を借りて、企業改革を継続的に行うことです。
 そして、その舵取りをするのが、CEOであり、CFOであるということを忘れないでほしいと思います。
(終わり)