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今、CFOに求められるもの(その2)

株式会社インテグリティ 代表取締役
米国公認会計士
尾関 好良 氏


キャッシュフローが読めるか否かは経営者の基本

――CFOは、経理だけではなく、経営的なセンスや知識が必要ということですね。では、経営者としてのCFOに必要なものは何でしょうか?

 経営者に必要なのは、なんと言っても、「判断力」と「決断力」です。これは当然CEOやCOOにも当てはまると思います。CFOに限って言えば、自分の専門分野である財務や会計において、特に正確な「判断」と迅速な「決断」が必要です。
 CFOというのは単なる肩書きに過ぎません。「肩書きは単なる言葉であって、人材そのものを表すものではない」と説明しました。CFOという肩書きを持ったからといって、その人が的確に財務判断をするとは限らないし、計算ミスをしないという保証もない。優秀なCFOであり、経営者になるのは、あくまでその人自身がそれまでに磨いたセンスと、経営者になるための努力の結果だということを忘れてはいけません。


――もし企業のトップがそういう人材を育てようと思った場合、「今経理部にいて、経理の知識がある程度ある人間」から選ぶ必要はないということですか?

 ないですね。言ってしまえば、経理のそういった知識は、会計の専門学校に1、2年ほど通ってみっちり勉強すれば身につけられるんです。
 もし企業が、将来、本当に役に立つCFOを社員の中から育てたいと思うのなら、経理の知識以上に大切なものは「経営に関するセンス」だということを認識し、そういう才能を持った社員を見抜くことです。そして現在、「会長」「社長」「CEO」といった経営トップに必要なのは、経営能力はもちろんですが、そういった能力のある人材をを見出し、しっかり育てていくことだと思います。そのためには、従来のような「CFOは単なる経理部長」という認識を払拭することが前提ですね。先ほども言いましたが、CFOは豆を数えるだけが仕事じゃないんです。


――本当にCFOを育てたいと思うのなら、本人だけでなく企業側も意識を変えないといけないということですね。

 はい。特に企業側には気をつけてほしいですね。それと、企業が社員の中からCFOを育てる場合は、なるべく早い時期から教育を始める必要があります。これについては、後で詳しく説明しようと思います。


――CFOの認識以外に、欧米の経営陣と日本の経営陣に違いというものはあるんでしょうか?

 欧米と日本の経営者の最大の違いは何だと思いますか?それは「キャッシュフローが読めるか読めないか」ではないかと思います。
 欧米の経営者は、おそらく例外なくキャッシュフローが読めます。細かい会計原則は理解していないにしても、自分のとった行動で、キャッシュフローがどう影響を受けるかということを感覚的に理解しているんです。これが会社をつぶさない一番のポイントですから。近年、日本でもキャッシュフロー経営の重要性が社会的に認知されてきました。にもかかわらず、いまだにキャッシュフローを読めない経営者が、日本には数多く見られます。


――なぜそういう違いが生まれたんでしょうか?

 この違いが生まれた理由は、太平洋戦争後の経営環境にあります。企業は、キャッシュフローが枯渇すると倒産します。経営者の責任は、資金繰りも一体として全事業に及ぶはずです。ところが極端な言い方をすると、戦後の日本が経済復興する途上では、国全体が「企業はとにかくモノを売ってマーケットシェアを取れ。企業の資金繰りは銀行が面倒を見る」という、いわば国策の中で成長してきました。それ自体は国家として正しい戦略だったと思います。戦後の経済が拡大していく中で、日本では、企業と銀行が分業体制をとっていたということになります。
 そういう環境のな

今、CFOに求められるもの(その2)

株式会社インテグリティ 代表取締役
米国公認会計士
尾関 好良 氏


キャッシュフローが読めるか否かは経営者の基本

――CFOは、経理だけではなく、経営的なセンスや知識が必要ということですね。では、経営者としてのCFOに必要なものは何でしょうか?

 経営者に必要なのは、なんと言っても、「判断力」と「決断力」です。これは当然CEOやCOOにも当てはまると思います。CFOに限って言えば、自分の専門分野である財務や会計において、特に正確な「判断」と迅速な「決断」が必要です。
 CFOというのは単なる肩書きに過ぎません。「肩書きは単なる言葉であって、人材そのものを表すものではない」と説明しました。CFOという肩書きを持ったからといって、その人が的確に財務判断をするとは限らないし、計算ミスをしないという保証もない。優秀なCFOであり、経営者になるのは、あくまでその人自身がそれまでに磨いたセンスと、経営者になるための努力の結果だということを忘れてはいけません。


――もし企業のトップがそういう人材を育てようと思った場合、「今経理部にいて、経理の知識がある程度ある人間」から選ぶ必要はないということですか?

 ないですね。言ってしまえば、経理のそういった知識は、会計の専門学校に1、2年ほど通ってみっちり勉強すれば身につけられるんです。
 もし企業が、将来、本当に役に立つCFOを社員の中から育てたいと思うのなら、経理の知識以上に大切なものは「経営に関するセンス」だということを認識し、そういう才能を持った社員を見抜くことです。そして現在、「会長」「社長」「CEO」といった経営トップに必要なのは、経営能力はもちろんですが、そういった能力のある人材をを見出し、しっかり育てていくことだと思います。そのためには、従来のような「CFOは単なる経理部長」という認識を払拭することが前提ですね。先ほども言いましたが、CFOは豆を数えるだけが仕事じゃないんです。


――本当にCFOを育てたいと思うのなら、本人だけでなく企業側も意識を変えないといけないということですね。

 はい。特に企業側には気をつけてほしいですね。それと、企業が社員の中からCFOを育てる場合は、なるべく早い時期から教育を始める必要があります。これについては、後で詳しく説明しようと思います。


――CFOの認識以外に、欧米の経営陣と日本の経営陣に違いというものはあるんでしょうか?

 欧米と日本の経営者の最大の違いは何だと思いますか?それは「キャッシュフローが読めるか読めないか」ではないかと思います。
 欧米の経営者は、おそらく例外なくキャッシュフローが読めます。細かい会計原則は理解していないにしても、自分のとった行動で、キャッシュフローがどう影響を受けるかということを感覚的に理解しているんです。これが会社をつぶさない一番のポイントですから。近年、日本でもキャッシュフロー経営の重要性が社会的に認知されてきました。にもかかわらず、いまだにキャッシュフローを読めない経営者が、日本には数多く見られます。


――なぜそういう違いが生まれたんでしょうか?

 この違いが生まれた理由は、太平洋戦争後の経営環境にあります。企業は、キャッシュフローが枯渇すると倒産します。経営者の責任は、資金繰りも一体として全事業に及ぶはずです。ところが極端な言い方をすると、戦後の日本が経済復興する途上では、国全体が「企業はとにかくモノを売ってマーケットシェアを取れ。企業の資金繰りは銀行が面倒を見る」という、いわば国策の中で成長してきました。それ自体は国家として正しい戦略だったと思います。戦後の経済が拡大していく中で、日本では、企業と銀行が分業体制をとっていたということになります。
 そういう環境のなかで、経理部門の主要な役割は、「勘定に間違いがなければよい、帳尻がちゃんと合っていればいい」、「銀行との関係を常に良好に保っておけばいい」というものになっていきました。「企業価値向上のために、どのようにキャッシュフローをマネージすればいいか」を考えるのは、経理部門の主要な仕事ではなかったんです。つまり、日本企業でのCFOの位置付けや資質に関する欧米とのズレは、このような「戦後の経済の仕組み」が生み出したものだと言えます。
 しかし、現在では明らかにその仕組みが変わりました。こういう変化を日本の経営者でどれほどの人が理解し認識しているでしょうか。今まで私は複数の企業の企業再生に関わってきましたが、多くのケースで、最後の最後になってダメだとあわてるだけで、その過程でのリスク管理をしていません。縮小均衡に陥るだけで、財務や経理部の責任者が本来組織内で果たすべきキャッシュフローの管理をしていないし、なぜダメになっていったのかを自己分析出来ていないんです。それは、先ほどの戦後経済の仕組みが、いまだに意識に残っていて、困ったら銀行が助けてくれると考えていたからでしょうね。この認識の甘さは、世代交代しないと変わらない、負の遺産なのかもしれません。
かで、経理部門の主要な役割は、「勘定に間違いがなければよい、帳尻がちゃんと合っていればいい」、「銀行との関係を常に良好に保っておけばいい」というものになっていきました。「企業価値向上のために、どのようにキャッシュフローをマネージすればいいか」を考えるのは、経理部門の主要な仕事ではなかったんです。つまり、日本企業でのCFOの位置付けや資質に関する欧米とのズレは、このような「戦後の経済の仕組み」が生み出したものだと言えます。
 しかし、現在では明らかにその仕組みが変わりました。こういう変化を日本の経営者でどれほどの人が理解し認識しているでしょうか。今まで私は複数の企業の企業再生に関わってきましたが、多くのケースで、最後の最後になってダメだとあわてるだけで、その過程でのリスク管理をしていません。縮小均衡に陥るだけで、財務や経理部の責任者が本来組織内で果たすべきキャッシュフローの管理をしていないし、なぜダメになっていったのかを自己分析出来ていないんです。それは、先ほどの戦後経済の仕組みが、いまだに意識に残っていて、困ったら銀行が助けてくれると考えていたからでしょうね。この認識の甘さは、世代交代しないと変わらない、負の遺産なのかもしれません。