サマーミューザ2024 サマーナイト・ジャズ 小曽根真×ライジングスター ‘From OZONE till Dawn’
(7月28日・ミューザ川崎シンフォニーホール)
‘From OZONE till Dawn’とは、ジャズピアニスト、小曽根真が才気溢れる若手プレイヤーを世界に向けて紹介していくプロジェクト。若い才能に演奏の場を提供し、その未来を聴衆とともに育てたいという願いと、自身を育て上げてくれた先輩たちへの恩返しの想いが込められているという。
そんな勢いのある後輩たちがフレッシュなプレイを繰り広げ、
小曽根も負けずと張り切る充実のステージはなんと予定を30分オーバー。
小曽根はベースの小川晋平、ドラムスのきたいくにととともに、新しいピアノ・トリオTRiNFiNiTYを結成し、活発な活動を展開している。
アンコールを除きすべてオリジナル作品。普段はクラシックのコンサートがほとんどで、ジャズのライブまで手が回らない自分としては、初めて聴く作品ばかり。アヴァンギャルドではなく、チック・コリアやキース・ジャレットや、昨今のメインストリームのジャズの流れの中にあり、いずれも聴きやすい。
1960年代後半にジャズにはまり、大学へ通うよりもジャズ喫茶にいる時間が長かった者としては、聴いていてまったく違和感はない。ジョン・コルトレーンはホテルまで友人と会いに行ったが、前日のコンサートを聞き逃したのは残念だった。それでも合歓ジャズ・インのチック・コリアやビル・エヴァンスの初来日公演、リターン・トゥ・フォーエバー初来日公演、他にマイルス・デイヴィス、カウント・ベイシー、ベニー・グッドマンなど、歴史的なコンサートを体験できたことは懐かしい思い出だ。
今日のライブの中で、やはり一番のインパクトはトランペットの松井秀太郎だろう。今年24歳。中学の吹奏楽部からセルゲイ・ナカリャコフに憧れ、ソリストを目指して音大の付属高校に進み、国立音大ではジャズを専攻。そこで小曽根真に出会い学んだことが大きな転機になった。松井の今の憧れはウィントン・マルサリスだという。
バリバリというパワフルなプレイと、切れのいいアドリブ、抒情性も充分あり、歌うことにも長けている。まだ大きな伸びしろがありそうで、今後が楽しみだ。
アンコールではフリューゲルホーンを持ち、柔らかな音も聴かせた。
演奏はyoutubeでも聴くことができる。
松井秀太郎 Shutaro Matsui /枯葉 Autumn Leaves (youtube.com)
ベースの小川晋平も型にはまらないフレッシュな演奏。リズムの感覚も良く、バランスのとれたプレイ。
個人的には日本のドラマーにはどうしてもリズムの点で違和感がある。きたいくにとはそうした中では、ブラシを効果的に使うなど、何か違うものも感じられる。もっとノリのいいドライブと推進力があってもいいとは思うけれど。
二人とも作曲もこなし、今日も小川晋平のBlues in the Library と、タイトル未定だが緑の草原のイメージというきたいくにとの作品が披露された。
小曽根真のピアノは終始水を得た魚のごとく、流れるように、飛び跳ねるように、泉がわくようにフレーズが次々と飛び出してくる。時に「饒舌すぎる」と感じるくらい。
飛び入りのゲストで、今年ジャズの名門ヴァーヴレーベルから小曽根のプロデュースでアルバム「When I Sing」をリリースした壷阪健登が登場し、自作の「こどもの樹」を小川晋平、きたいくにと弾き、またエレクトリック・ピアノでそのアルバムの2曲目に入っている「With Time」も弾いた。彼のピアノはナイーブな感性があり、作品も抒情的だ。
アンコールでは、今日初めてのスタンダード曲と小曽根が紹介、アントニオ・カルロス・ジョビンのノーモア・ブルースがプレコンサートで登場したベーシストにしてヴォーカリストの石川紅奈や、ギターのTaka Nawashiroも参加して全員で演奏された。
今日はピアノ・カルテットということもあり、PAが抑えめでバランスは悪くなかった。
以前聴いた渡辺貞夫のコンサートでのPAは巨大すぎて、音がつぶれていた。
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2024 サマーナイト・ジャズ
小曽根真×ライジングスター ‘From OZONE till Dawn’
(7月28日・ミューザ川崎シンフォニーホール)
ピアノ:小曽根真
トランペット:松井秀太郎
ベース:小川晋平
ドラムス:きたいくにと
ゲストピアノ:壷阪健登
SUMMER JAZZ NIGHT
セットリスト
#1 The Path (小曽根真)
#2 Blues in the Library (小川晋平)
#3 (Untitled) (きたい くにと)
#4 Infinity (小曽根真)
#5 Napolitan Dance (Tchaikovsky)
#6 Piano Sonata No. 7 3rd Movement (Prokofiev)
#7 こどもの樹 (壷阪健登)
#8 With Time (壷阪健登)
#9 If (松井秀太郎)
#10 Deviation (小曽根真)
~ENCORE~
#11 No More Blues (アントニオ・カルロス・ジョビン)
[Pre-concert]
KAWASAKI BLUES(石川紅奈)
No One Knows(石川紅奈)
カプリース(パガニーニ)
ベース&ヴォーカル:石川紅奈
ギター:Taka Nawashiro