アンデルジェフスキ(指揮&ピアノ)紀尾井ホール室内管弦楽団 (4月19日・紀尾井ホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

アンデルジェフスキ弾き振りによる紀尾井ホール室内管弦楽団デビューは2021年9月の第128回定期演奏会。モーツァルトのピアノ協奏曲第12番イ長調 K.414と同第24番ハ短調 K.491を演奏した。残念ながら、その時は聴いておらず、今回が初めて。

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
第3楽章が活気と乗りの良さがあって一番良かった。高音部の美しさは独特で、キリリと引き締まり透明感がある。

アンデルジェフスキの指揮は、音が団子になりピアノのような澄み切った響きではない。弾き振りはピアノに専念できない分、弾く方がおろそかになりそうで、個人的にはあまり好きではない。

アンデルジェフスキの意図は、オーケストラを自分の思うようにもっていきたいからだろうか。

 

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調 op.15

こちらは、骨太でたくましい響きを紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)から引き出した。トランペットやティンパニには右手を突き出して激しく煽った。

 

アンデルジェフスキの演奏は、第1楽章の上下行する連符の粒立ちがよい。カデンツァはベートーヴェン作の2種あるうち短いもの。

第2楽章の弦は分厚いが、少し響きが粗い。幻想的な中間部のピアノとオーケストラの対話は美しかった。第3楽章は荒々しいまでに激しい打鍵とオーケストラだったが、その分丁寧さが減じられた。

 

アンコールに弾いたハイドン:ピアノ協奏曲ニ長調Hob.XVIII:IIより第2楽章が、一番アンデルジェフスキに合っているように思えた。天国的に繊細で、KCOの弦も同様に美しい。モーツァルトもこの調子で弾いてほしかった。

 

弾き振りでこれまで聴いた中で、飛びぬけて素晴らしかったのは2015年5月15日東京オペラシティで聴いたアンスネスとマーラー・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。あの演奏を超える第3番はまだ聴けていない。
アンスネス マーラー・チェンバー・オーケストラ ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全曲演奏会 初日 | ベイのコンサート日記 (ameblo.jp)


アンデルジェフスキ&KCOの演奏は世界ツアーをしていたアンスネス&MCOと較べてはいけないかもしれないが、残念ながら一体感の面でも演奏の緻密さ内容の濃さの面でかなり劣る。

 

コンサートの最初に、KCOの管楽器奏者によりグノー:小交響曲変ロ長調が演奏された。編成はフルート1、オーボエ2、ホルン2、ファゴット2、クラリネット2。

フルートの相澤政宏がリードする。アンサンブルはきっちりとしているが、もう少し遊び心もあってもいいのでは。

 

後半の最初には、KCOの弦楽セクションにより、ルトスワフスキ:弦楽のための序曲が演奏された。バルトークを思わせる野性的な音楽。指揮者なしのKCOの演奏を初めて聴いたが、自発性がありとても良かった。コンサートマスターは玉井菜採(なつみ)。

 

紀尾井ホール室内管弦楽団第138回定期演奏会

出演者

ピョートル・アンデルシェフスキ(指揮&ピアノ)

紀尾井ホール室内管弦楽団

曲目

グノー:小交響曲変ロ長調

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488

ルトスワフスキ:弦楽のための序曲

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番ハ長調 op.15