(1月12日・東京オペラシティ)
オール・モーツァルト・プログラム。
主役は諏訪内晶子だが、個人的にはまず、サッシャ・ゲッツェル指揮国際音楽祭NIPPONフェスティバル・オーケストラの演奏に惹かれた。オーケストラは7-6-4-3-2の小編成だが、コンサートマスターの白井圭以下構成メンバーは豪華だ。ヴァイオリンには仙台国際コンクール優勝の中野りなも入っている。チェロ首席は辻本玲、ヴィオラ首席は中恵菜など(添付のチラシの裏をご覧ください)。
「交響曲第15番 ト長調 K.124」は弾けるようなリズムで颯爽と進む。サッシャ・ゲッツェルの指揮は、日本の指揮者には真似できないリズム感と生き生きとした表情がある。
「ディヴェルティメント ニ長調 K.136」は更にそれを上回り、まさに天馬空を行くという推進力と軽さ、躍動感がある。転調の際のセカンドヴァイオリンが際立つ。首席を担当するシュトゥットガルトSWR交響楽団第2ヴァイオリン首席のエミリー・ケルナーの力も大きいのだろう。第2楽章アンダンテのヴィオラも美しい。第3楽章プレストの展開部の飛び跳ねるような軽さ。モーツァルトの何たるかを知っている指揮者の手になるとこんなに素晴らしい演奏になるのだという驚きがあった。
諏訪内晶子の「ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216」は、いつもの彼女らしく艶やかな美音で堂々と弾いていく。フェスティバルオーケストラも交響曲の時と同様に生き生きとしている。
「ヴァイオリン協奏曲第5番《トルコ風》イ長調 K.219」は諏訪内が適度なヴィブラートをかけ、レガートで滑らかに演奏する。リズムよりも旋律の美しさが際立つ。美の洪水のような演奏だが、もう少しハッとするような驚きや変化もほしいところ。ゲッツェルの指揮のような躍動感や軽さもあってもいいのでは。
ただ、第1楽章のカデンツァは素晴らしかった。まるでソプラノ二人の二重唱のように2つの旋律が対話していく。ここは今日の白眉だった。
第2楽章アダージョは耽美的なまでの美しいヴァイオリン。ただ、美しさの先に何かがほしい。
第3楽章も艶やかに弾いていくが、表情の変化がいまひとつ。ゲッツェル指揮フェスティバルオーケストラがトルコ行進曲の部分を思い切りダイナミックに演奏したことが、むしろ印象に強く残った。
プログラム:
交響曲第15番 ト長調 K.124
ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216
ディヴェルティメント ニ長調 K.136
ヴァイオリン協奏曲第5番『トルコ風』 イ長調 K.219
指揮:サッシャ・ゲッツェル
管弦楽:国際音楽祭NIPPONフェスティバル・オーケストラ