沖澤のどか東響デビュー! オール・ストラヴィンスキー・プログラム(10月7日・ミューザ川崎) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


沖澤のどか東京交響楽団デビューとなるコンサート。オール・ストラヴィンスキーという意欲的なプログラムでもあり、先月24日の京都市交響楽団常任指揮者就任披露コンサートの東京公演が大成功だっただけに、大きな期待を持って聴いた。

 

結論から言うと、後半のバレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)が一番良かった
色彩感があり、各楽器が濁らず鮮明に聞こえてくる。フルート、ファゴット、トランペット、ホルン、クラリネット、オーボエなど東響の首席も集中力があり、またピアノの長尾洋史が目覚ましい活躍を示した。オーボエの首席に就任したばかりの荒木良太がフレッシュな演奏を聴かせてくれたこともうれしかった。

 

沖澤の指揮は、良く言えばセンスがあり、明解ですっきりとしている。逆にそれが踏み込みのなさとなり、えぐるような彫りの深さ、震撼するようなダイナミックな響きの点で、少し物足りない。「ペトルーシュカ」は場面ごとにもっと劇的に、バレエが眼前で展開されているように生々しく描いても良かったのではないだろうか。

 

プログラムには1947年版とあったが、第11曲「仮面をつけた人々」のクライマックスで突然終わる演奏会用ではなく、「格闘」「ペトルーシュカの死」「警官と人形遣い」「ペトルーシュカの亡霊」まで演奏された。

最後のピッツィカートが余韻のある味わい深い音で、沖澤のセンスの良さを感じさせた。

 

 

前半のバレエ音楽「プルチネッラ」組曲は軽やかで明るく切れもある演奏であり、バロックの合奏協奏曲風の楽しさは充分出ていたが、もっと弾けてもいいような気がした。

組曲ではなく全曲版だが、鈴木雅明指揮、紀尾井ホール室内管弦楽団の演奏が強く印象に強く残っている。
鈴木雅明 紀尾井ホール室内管弦楽団 (6月21日、紀尾井ホール) | ベイのコンサート日記 (ameblo.jp)

 

鈴木紀尾井ホール室内管は、沖澤東響よりも「遊び」があった。
例えば、第7曲「ヴィーヴォ」ではトロンボーンとコントラバスがユーモラスに対話するが、コントラバス奏者がチェロ首席と並び前面に出て弾いたことは面白かったが、演奏が少し真面目過ぎたような感じがした。

 

詩篇交響曲は東響コーラスではなく、二期会合唱団(男声)NHK東京児童合唱団が歌った。ストラヴィンスキーは『児童合唱を入れること。できなければ女声合唱でもよい』と指示しており、今回は児童合唱団が歌った。

 

ストラヴィンスキーは『これは詩篇を組み込んだ交響曲ではない。私が交響化した詩編の合唱なのだ』とも語っており、交響曲ではなくアンサンブルをイメージして作曲したとも言えるので、劇的に盛り上げるよりも宗教的に端正に演奏すべき作品だと思われる。その点では、沖澤のバランスのとれた指揮は作曲家の意図に沿っていた。

ただ、児童合唱がやや平板で、女声合唱のほうが、より彫りの深い合唱になったのではないだろうか。

 

指揮:沖澤のどか

ピアノ:長尾洋史 ☆

合唱:NHK東京児童合唱団 ♢合谷研二

合唱:二期会合唱団 ♢合唱指揮:宮松重紀

管弦楽:東京交響楽団

曲目

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「プルチネッラ」組曲

ストラヴィンスキー:詩篇交響曲♢

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)☆