ミンコフスキ 都響 ブルックナー「交響曲第5番」(6月25日・東京芸術劇場) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。



とてつもなく強烈なブルックナーの5番。なにしろ都響の編成が巨大だ。16型、対向配置。木管はなんと倍管!フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットが各4人(指定は各2人)。ホルン5人、トランペット4人で、それぞれアシスタントつき。

これだけの編成となるとパワーに余裕があり、都響の高い技量と相まって、壮大な演奏になるのも、むべなるかな。コンサートマスターは矢部達哉。演奏時間は70分と短く、特に第4楽章は速かった。

 

ミンコフスキと都響は完全に一体となり、隙がない。弦のパワフルなこと。終楽章は強烈な金管の咆哮の中にあっても、渾身の弦のトレモロはクリアに聞こえてくる。ミンコフスキは演奏後、第1楽章冒頭のピッツィカートから土台をがっちりと支えたコントラバス陣を立たせた。

 

その第1楽章は、序奏のトゥッティによる上昇音階、金管によるコラール主題から強力な響き。ヴィオラとチェロの第1主題は、幅広く充実の響き。ピッツィカートの第2主題に第1ヴァイオリンが神秘的なオブリガートをつける。第3主題は木管が喜びの歌を歌う。第1主題と上昇音階による展開部、再現部の第1主題の金管群が強烈。

コーダではテンポを速め、第1主題を金管が勇壮に吹奏しながら、ティンパニの連打と共に壮麗に終えた。

 

第2楽章アダージョは、ゲスト首席の神農広樹が見事なソロで第1主題を吹く。

第2主題の弦の分厚い響きに驚愕。ピッツィカートに乗せて再び第1主題が壮大に始まる。金管も厚い響き。続いてピッツィカートの上で再現される第2主題の繊細なこと。提示部とは大きな違いがある。再現部は第1主題中心。神秘的に美しい。

 

第3楽章スケルツォも金管が圧巻。トリオは伸びやか。ホルン、フルート、オーボエ、クラリネットが見事。

 

第4楽章は今日の白眉。クラリネットの主要主題が躍動しながら、これまで出た主題を統合していく。次に主題による小フーガがあって、ピッツィカートの上に軽快に弦により第2主題が始まる。金管による強烈な第3主題が弦の動きの上で始まる。

それが静かに消えると、金管が輝かしいコラール主題を吹く。休止のあと展開部に入る。コラール主題によるフーガが始まる。そこに第1主題によるフーガが加わり、二重フーガとなり、頂点に向かっていく部分も凄かった。

 

軽快な第2主題が緊張を緩め、続いて第1楽章のアレグロ主題が木管のベルアップにより登場する。続いて第2主題、アレグロ主題、第1楽章第1主題などが組み合わされた巨大なコーダに向かっていく。ここは本当に圧巻。金管の厚みと弦のトレモロが互角に競い合う。コラール主題と第1楽章第1主題が金管により一体となる部分に鳥肌が立つ。弦の音が金管に負けることなく、ここまでくっきりと明確に浮かび上がる演奏は初めて聴いた。ブルックナーの対位法の最高の演奏。壮大に第1楽章第1主題で終わった。

 

ブログを書き始めてから、ブルックナーの交響曲第5番は、飯守泰次郎東京シティ・フィル(2013年4月19日)、ダニエル・ハーディング新日本フィル(2014年11月14日)、ヤルヴィN響(2016年2月6日)、小泉和裕都響(2017年1月10日)、ロジェストヴェンスキー読響(2017年5月19日、シャルク版)、インキネン日本フィル(2017年11月18日)、フランツ・ウェルザー=メストウィーン・フィル(2018年11月23日)、マルク・アルブレヒト新日本フィル(2019年2月2日)、ネルソンスゲヴァントハウス管弦楽団(2019年5月31日)、高関健東京シティ・フィル(2021年6月16日)、尾高忠明大阪フィル(2022年2月14日)と11回聴いたが、12回目となるミンコフスキ都響は、その中でもトップに置きたい最大の規模と迫力を持ち、最大の感銘を受けた演奏だった。

 

都響の聴衆はミンコフスキが振り終えても静寂を保つ。タクトが下りてから、パラパラとした拍手。続いて怒涛のブラヴォ。これはドイツ、オーストリアの成熟した聴衆と同じ反応だ。当然のごとくソロ・カーテンコール。

 

今日26日(月)午後7時から、サントリーホールでも公演がある。

チケットは開演30分前までWEBで発売中。ブルックナーファンにはぜひ聴いていただきたいコンサートだ。

 

第978回定期演奏会Bシリーズ │ 東京都交響楽団 (tmso.or.jp)

 

写真:©都響