首都圏9音楽大学選抜オーケストラによるコンサート。
参加音楽大学は上野学園大学、国立音楽大学、昭和音楽大学、洗足学園音楽大学 東京音楽大学、東京藝術大学、東邦音楽大学、桐朋学園大学、武蔵野音楽大学。
2012年に第1回を開催したこのフェスティバルは、東日本大震災のため1年遅れで始まり、コロナ禍で、2020年と2021年も中止となるなど、自然災害やパンデミックの影響を受けてきた。
第12回となる今回は2020年のプログラムを再現、指揮者の井上道義も3年越しの登場となった。
ヨーゼフ・シュトラウス「天体の音楽」は、バレエダンサーを目指したこともある井上のリードで、ウィンナワルツらしい2拍目をたっぷりと伸ばすウィーン風のワルツになっていた。ただ練習時間が短かかったのか、管楽器の音程とアンサンブルが不安定。弦も勢いと艶がなく、どこか消化不良気味。
ところが、2曲目の伊福部昭「シンフォニア・タプカーラ」は、まるで別のオーケストラになったように、生き生きとしたエネルギッシュな演奏に変わった。伊福部の大地を揺るがすような激しいリズム、オスティナート的に延々と続く、祭り囃子のような旋律が若い奏者達の共感を呼ぶのか、文字通り若さが爆発する活気ある演奏が展開された。
第3楽章のすべての主題が再現するコーダは熱狂的で、このエネルギーは若い奏者でなければあり得ない凄まじさ。熱気はプロのオーケストラと言えども太刀打ちできない。終わるや否や、全員立ち上がる演出も決まっていた。前日の東京芸術劇場ではタイミングが微妙にずれたとのことだが、今日はぴったり合った。
後半はストラヴィンスキー「バレエ音楽《春の祭典》」。
ここでも序奏のファゴットや木管のアンサンブルが今一つ。しかし、激しいリズムが刻まれる「乙女たちの神秘の集い」になると途端に生き生きとした演奏になる。「誘拐」のトランペットのタンギングも凄まじい。トランペット群は大活躍。「敵の部族の遊戯」もティンパニ、金管群のやりとりが強烈。第1部のクライマックス、「大地の踊り」の絶頂と突然の休止も見事。
第2部の「神秘的な踊り」のバスフルートのソロがなかなかうまい。「選ばれし生贄への讃美」の2組のティンパニが凄い。奏者は二人とも女性だったが、その迫力と切れ味に唖然。終曲「生贄の踊り」の変拍子での金管群の最強音も迫力満点。最後の一瞬の間を置くコーダは、間を少し長く取った、「セーノ、バン!!」という粘り気のある終わり方が決っていた。
アンコールにもう一度「生贄の踊り」のコーダを演奏したが、井上は上着を脱ぎ、裸足で登場。最後はフラフラになる演技もして、指揮を終わるや否や、舞台から転げ落ち、あおむけに倒れる演出まであった。これには聴衆もオーケストラのメンバーも爆笑。
音楽大学オーケストラは、プロのオーケストラにはない新鮮さ、ひたむきさが魅力だ。先日取材したプロジェクトQのクヮルテットの演奏でも同じように感じた。今日も技術や経験とは異なる、若さが持つ純粋さ、生命力に打たれた。