アクセルロッド 都響 富田心 グラズノフ「ヴァイオリン協奏曲」、チャイコフスキー「交響曲第4番」 | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

(2月11日・サントリーホール)
昨年末から長期間日本に滞在し、各オーケストラに代役で登場して大活躍のジョン・アクセルロッドも離日の時を迎え、今日がその最後のコンサートとなる。

 

都響は16型。この規模で聴くチャイコフスキー「歌劇《エフゲーニ・オネーギン》よりポロネーズ」は巨大な音響で迫力がある。アクセルロッドは速めのテンポで切れの良い演奏。フルートが吹く旋律もポロネーズとしては速い。中間部のチェロ・セクションの音は、海外のオーケストラのような洗練された良い響き。

 

グラズノフ「ヴァイオリン協奏曲」を弾いた富田心はまだ二十歳。生後すぐイギリスに渡り現地で活躍しており、英文表記はCocoTomitaとしている。メニューイン音楽学校に学び、2年前にBBCヤング・ミュージシャン2020弦楽器部門で優勝している。

 

出だしから音に透明感があり、品格もあり惹きつけられる。その響きはイギリスのオーケストラの弦に共通する、無色透明の乾いた音に似たものが感じられた。

 

ただ表情が単調なため、第1楽章の3つの魅力的な主題の描き分けが浅く感じられる。特に中間部の、G線で弾くロシア民謡的な変ニ長調の美しい旋律は、魅力的なハープの音を生かすなどオーケストラとの対話をもっと活用しても良かったのでは。音自体は美しく、音程も確かなのでもったいないと思った。

第2楽章カデンツァも完璧に弾いたが、もうひとつ訴えてくるものがない。

 

アンコールはエネスク「《幼き日の印象》よりⅠ.辻音楽師 op.28-1」。エネスクが1940年4月10日に完成したヴァイオリンとピアノのための10曲からなる組曲の第1曲。エネスクの最初のヴァイオリン教師であったエドゥアルド・コウデラの思い出に捧げられている。

これは見事な演奏。思い切りが良く、最後の左手と右手のピッツィカートの技術もすごい。ただ民族的な味わいは少ない。

富田心はフランスものや、バッハやモーツァルト、ベートーヴェンなど古典派のソナタが合うような気がする。

 

 

アクセルロッド都響のチャイコフスキー「交響曲第4番」は第1、第4楽章に切れがあり、密度が濃い。金管の音も中身が詰まって重みがある。

 

第2楽章のテンポは少し遅すぎたように感じた。終楽章は輝かしい。引き締まった演奏で、交響曲の醍醐味を味わう。コーダは速度を速めて一気に追い込み高揚した。

 

アクセルロッドへのソロ・カーテンコールとなり、矢部達哉を帯同しようとしたが、彼が固辞したので、1人で拍手を受けた後もう一度矢部を呼びに行き、指揮台の前まで連れてきた。

 

写真©都響