東京二期会《フィガロの結婚》川瀬賢太郎(指揮)新日本フィル ゲネプロ・レポート | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

新型コロナウイルス・オミクロン株の水際対策で予定されていたR.シュトラウス《影のない女》が実現不可能となり、代わりに宮本亞門の二期会演出デビュー作品として2002年に初演されたモーツァルト《フィガロの結婚》の再演となった。
今回が5度目になるので、東京二期会の代表作のひとつと言えるだろう。

指揮は川瀬賢太郎。

 

川瀬の指揮するモーツァルトのオペラを聴くのは初めてだが、彼はこれまで次のようにかなりの数をこなしている。

《フィガロの結婚》は2015年9月にひろしまオペラルネッサンス公演で、
《後宮からの逃走》は2016年日生劇場NISSAY OPERAで、
《魔笛》は2017年3月にiichiko総合文化センター・神奈川県民ホールで、また2021年高崎、札幌でも指揮した。

 

オーケストラピットには、新日本フィルハーモニー交響楽団が入った。川瀬と新日本フィルの共演は珍しいのではないだろうか。私自身は初めて聴く。

 

川瀬はこれまでのモーツァルト・オペラの経験を感じさせる安定した指揮ぶりで、新日本フィルの特長である柔らかく美しい響きを生かしながら、快適なテンポで進めていく。歌手への指示も細かく丁寧。新日本フィルはオケピットに入る回数は東京フィルや東響に較べて少ないが、今日の演奏を聴くとオペラにも柔軟に適応していた。川瀬との相性も良さそうだ。

 

今日の歌手陣は下記のうち(2/9, 2/12)組のほうだが、ドン・クルツィオは事情により、渡邉公威に代わって、児玉和弘が参加した。

オミクロン株が猛威を振るっているためか、ゲネプロは本番と異なり全員マスクを着用して行われた。

 

マスクをつけているとは思えないほど、全員よく声が出ていた。
どの歌手も素晴らしい出来栄えで甲乙がつけがたい。

宮地江奈のスザンナが中では抜きんでていたが、宮本亞門プロダクションに初登場という。

他の出演者も存在感があり、これだけ全員がハイレベルのオペラも珍しい。
フィガロの萩原潤が生き生きとしているし、アルマヴィーヴァ伯爵の大沼徹と伯爵夫人の大村博美はさすがと思わせる余裕の歌唱と演技。ケルビーノの小林由佳も素晴らしく、まさに適役。

 

宮本演出は、スピード感があり、演技も細やかで、休憩を含めた3時間半が長くは感じない。川瀬賢太郎のテンポの良い指揮もあるのだろう。
川瀬はしかし、伯爵夫人のアリアやスザンナのアリアなど、ゆったりと歌うところはたっぷりとしたテンポをとっていた。

 

手紙の二重唱はもう少し天国的な美しさもほしいが、本番では調整されるのではないだろうか。

 

東京二期会オペラ劇場 モーツァルト《フィガロの結婚》
《二期会創立70周年記念公演》

(全4幕、日本語字幕付き原語(イタリア語)上演)

 

公演スケジュールは

2/9(水)18:30

2/11(金・祝)14:00

2/12(土)14:00

2/13(日)13:00

 

会場は東京文化会館大ホール。

 

アルマヴィーヴァ伯爵:大沼 徹(2/9, 2/12)  与那城 敬(2/11, 2/13)

伯爵夫人:大村博美(2/9, 2/12) 髙橋絵理(2/11, 2/13)

スザンナ:宮地江奈(2/9, 2/12)種谷典子(2/11, 2/13)

フィガロ:萩原 潤(2/9, 2/12) 近藤 圭(2/11, 2/13)

ケルビーノ:小林由佳(2/9, 2/12) 郷家暁子(2/11, 2/13)

マルチェリーナ:石井 藍(2/9, 2/12) 藤井麻美(2/11, 2/13)

バルトロ:畠山 茂(2/9, 2/12) 北川辰彦(2/11, 2/13)

バジリオ:高柳 圭(2/9, 2/12) 高橋 淳(2/11, 2/13)

ドン・クルツィオ:渡邉公威(2/9, 2/12) 児玉和弘(2/11, 2/13)

バルバリーナ:雨笠佳奈(2/9, 2/12) 全 詠玉(2/11, 2/13)

アントニオ:的場正剛(2/9, 2/12) 髙田智士(2/11, 2/13)

花娘1:辰巳真理恵(2/9, 2/12) 金治久美子(2/11, 2/13)

花娘2:横森由衣(2/9, 2/12) 長田惟子(2/11, 2/13)

合唱:二期会合唱団

 

詳細情報↓

http://www.nikikai.net/lineup/figaro2022/index.html