ラファエル・パヤーレ N響 アリサ・ワイラースタイン(チェロ)ショスタコーヴィチ・プログラム | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


 

131日・NHKホール)
 ベネズエラの音楽教育システム「エル・システマ」から出たアーティストのひとり、パヤーレがN響の定期演奏会に初登場。オール・ショスタコーヴィチ・プログラムを振った。コンサートマスターはライナー・キュッヒル。

 

「バレエ組曲」は軽快で、シニカルな味わい。パヤーレの細身のスマートな体つきや、キビキビとした指揮ぶりは川瀬賢太郎に似ていると思った。

 

ワイラースタインがパヤーレの奥さんとは知らなかった。夫婦共演の「チェロ協奏曲第2番」は、丁寧な演奏。作品は余り大きな山はなく、暗くたんたんと進むのでソリストの華麗な演奏楽しむというより、ひたすら深く沈潜していく音楽をじっくりと味わう。パヤーレのサポートも細やかで、コーダのシロフォンが鳴らすポクポクという音をバックにワイラースタインが消え入るように弾くチェロの弱音が良かった。

 

「交響曲第5番」はフレッシュで切れのよい演奏。第1楽章冒頭の序奏主題は、フレーズを短く切って緊張感があり、何度も聴いて耳タコの作品が新鮮に聞こえた。
第3楽章ラルゴのクライマックスでも、音が混濁せず、クリアで抜けが良い。ショスタコーヴィチの重さや暗さではなく、形式的に完成された交響曲を、ストレートにすっきりと提示する演奏だった。若いメンバーが多いN響との相性の良さもあるように思った。

コーダはかなり追い込んだが、最後は遅すぎない中庸のテンポで、しっかりと決めた。

 

若々しく見えるが、1980年生まれなので、今年40歳。インキネン、フルシャ、ドゥダメルとほぼ同年代。ラルゴなどもう少し深い音楽になってもいいのでは、と正直思うところもあったが、N響と対等に向き合う堂々とした指揮ぶりはなかなかのもの。今後が楽しみだ。

 

写真:ラファエル・パヤーレ© Henry Fair