マルク・アルブレヒト 新日本フィル ブルックナー「交響曲第5番」 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

22日、すみだトリフォニーホール)

 今日の指揮者マルク・アルブレヒトは1996年から2002年まで、ヴァイマルのドイツ国立劇場、ワイマール・シュターツカペレの音楽監督を務めたゲオルゲ・アレクサンダー・アルブレヒトの息子。先週のヤン・パスカル・トルトゥリエ(ポール・トルトゥリエの息子)に次いで、二世指揮者の登場となる。

 

ニ週続けて二世指揮者を並べるというのは、音楽監督上岡敏之の何らかの意図があると思われる。想像するに彼らの自立を応援したいのではないだろうか。

実際には、ニ人とも父親の名前をプロフィールに掲載していない点で共通している。親の七光りに依存しない強い自立心、矜持(きょうじ)があることは明らかだ。うれしいことに、ヤン・パスカル・トルトゥリエも今日聴いたマルク・アルブレヒトも指揮者としての実力が備わっていることだ。

 

さて、マルク・アルブレヒトのブルックナー「交響曲第5番」について書いていきたい。

速めのテンポで進む爽やかなブルックナーだった。タイムは見なかったが70分を少し超えたくらいだろうか。新日本フィルの持ち味である柔らかく繊細な響きとはとても相性がいい。重厚長大の神々しいブルックナーではないが、こういう解釈もあってもいいのではないかと思う。

 

第1楽章ではヴィオラとチェロの第1主題の響きがたっぷりとして美しい。唯一ホルンが今回もネックとなり、提示部最後のソロもいささかお粗末で残念。展開部も重層的で新日本フィルの金管と木管もがんばっていた。

 

第2楽章アダージョ。金子亜未の第1主題のソロは芯のあるしっかりとした音で音楽が締まる。第2主題はアルブレヒトがたっぷりとした厚い響きを新日本フィルから引き出す。こういう演奏は大好きだ。ただ練習番号Fから第1主題が再現しクレッシェンドしていく部分は、単に音が鳴っているだけで深みがなかったことは彼の指揮がまだ完成されていないことを示していた。

 

第3楽章スケルツォはよくまとめていた。

 

第4楽章アダージョ~アレグロ・モデラート、提示部は新日本フィルの金管も輝かしく良かった。課題は展開部。合唱主題とその転回主題が二重フーガとなって壮大なクライマックスを形成するこの交響曲の聴きどころでもあるが、ここはさらに重心の低いがっちりとした構造の演奏が必要だと思う。

 

コーダも頑張っていたが、展開部と同様にもう少し粘りと重厚さがほしかった。それでも全体的には音楽を立体的に組み立てて行く手腕はなかなかのものがある。今後指揮者として成熟するに従って、さらに説得力あるブルックナーを聴かせてくれるのではないだろうか。