アラン・ギルバート 東京都交響楽団 「春の祭典」(12月11日、サントリーホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

 座席は違うが二日続けて同じプログラムを同じサントリーホールで聴いた。昨日は1階中央ブロック6列目右通路寄り、今日は2階正面前から3列目下手。音に関しては2階の方がバランスはいいが、演奏の印象はほとんど変わらなかった。

 前半はメンデルスゾーン「序曲《フィンガルの洞窟》」とシューマン「交響曲第1番《春》」。オーケストラは良く鳴るが、響きは陰影がなくドライ。アメリカのオーケストラを思わせる。ただどちらもクラリネットのソロはほの暗さがありロマン派らしい響き。シューマンでは第4楽章のフルートが吹く主題がとてもきれいな響きがあった。全体がもう少ししっとりとした響きなら味わいが出るのにと惜しまれる。

 奏者のミスを指摘するのはご本人が一番わかっていることであり、痛む上に塩を塗るようで辛いが、《春》冒頭のトランペットが同じところで同じミスを2日とも繰り返したのはさすがにがっかりした。

  

 話がそれるが、昨日のコンサート終了後友人から会田莉凡(あいだりぼん)が第1ヴァイオリンで弾いていると聞いた。ルーマニア国際コンクール優勝、日本音楽コンクール第1位、小澤国際室内楽アカデミーのソリスト、コンサートマスターも務めた才媛だ。昨日は気づかなかったが、今日は注意して見ていると第5プルトの裏(イン)でひときわ弓使いの素晴らしい奏者がいる。確認するとやはり彼女だった。都響に入団するのだろうか、単にゲストとして参加したのだろうか。気になるところではある。

 

 後半はストラヴィンスキー「春の祭典」。両日とも印象は同じ。演奏時間は34分と平均的な速さ。第1部では不規則なリズムと不協和音の「春のきざしと乙女たちの踊り」、激しい「誘拐の遊戯」、「敵対する町の遊戯」、そして強烈な「大地の踊り」のダイナミックな音楽をギルバートはメリハリのある指揮で、きっちりと決めていく。第2部最後のクライマックス「生贄の踊り」も破綻なく終える。

 どこと言って欠点のない見通しのいい演奏だが、正直面白くない。興奮しない。ギルバート&都響ならもっと激しく切れのいい演奏ができるのでは、もっと野性味や激しい表情がほしい、と思った。聴衆の反応は正直で、ブラヴォは少なかった。まだ昨日の方が多かった。

 

 アラン・ギルバートの指揮はこれまでいつも充足感を与えてくれたが、今日は珍しくもうひとつだった。

写真:(c)東京都交響楽団