マリオ・ブルネロ(指揮・チェロ) 紀尾井ホール室内管弦楽団 (11月24日、紀尾井ホール) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

ブルネロはアレンスキー「チャイコフスキーの主題による変奏曲」、チャイコフスキー「組曲第4番《モーツァルティアーナ》」は指揮に専念した。ブルネロに指揮の経験がどれほどあるのかわからないが、今日の印象ではすこしぎこちなかった。アレンスキーの第6変奏の荒々しい響きは曲調に合ってはいたが、第5変奏、第7変奏、コーダはもう少し繊細さ、緻密さがほしい。チャイコフスキー《モーツァルティアーナ》でも、第4変奏のトゥッティは紀尾井ホール室内管をかなり鳴らしたが、バランス的には粗いものがあった。

 

弾き振りをしたルビンシテイン「チェロ協奏曲第2番」とチャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」は、指揮に気を使うためかブルネロ本来の力が発揮できていなかったように思えた。

それでも 「ロココ変奏曲」はブルネロが1986年チャイコフスキー国際コンクールで優勝して以来得意な作品であり、第5変奏などさすがに見事だった。
 ルビンシテインの作品は初めて聴いたが30分もの大曲でロシア的旋律が豊富で魅力的だ。この曲を弾いてくれたブルネロには感謝したい。

 

紀尾井ホール室内管は、《モーツァルティアーナ》第4曲の主題と10の変奏と、「ロココ変奏曲」でのクラリネット(伊藤圭:N響首席)とフルート(フリスト・ドヴリノブ:読響首席)のソロが鮮やかで素晴らしかった。

 

 弾く方もリラックスできるのか、技術的にもそれほど難しくないのか、今日はアンコールのチャイコフスキー「ノクターンOp.19-4」が一番良かった。ブルネロも肩の力が抜け、持ち前の艶やかな音色で伸びやかに弾いた。紀尾井ホール室内管も響きがまろやかになり、終わったあとの余韻がなんとも言えず心地よく、ロシアの冬の風景が浮かんでくるようだった。

 

写真:(c)MITO SettenbreMusica