アンドレイ・イオニーツァ チェロ・リサイタル (ピアノ:園田奈緒子) | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

916日、浜離宮朝日ホール)

 客席には堤剛や4日前読響で共演したシルヴァン・カンブルランの姿もあった。読響のときのチャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」では鮮やかな演奏を聴かせてくれたアンドレイ・イオニーツァだが、疲れがあるのか今日は少し精彩がなかった。

 

 メンデルスゾーン「チェロ・ソナタ第2番」はさらさらと流れる小川のように滑らかに進む。テクニックは素晴らしく音程も正確だが、表面をなぞるような演奏で心に訴えてこない。フォーレの小品「シチリアーノ:「夢のあとに」「蝶々」も同様だ。

 

 後半のマルティヌー「ロッシーニの主題による変奏曲」がこの日最も良かった。メンデルスゾーンでは譜面を置きながらの演奏だったのが、マルティヌーでは暗譜。最初の主題から前半の眠ったような演奏から一挙に生き生きとして見違えるような表情が出ている。最後にもう一度出る主題も気宇壮大。ブラヴォの声も飛ぶ。

 

 ところが、最後のプロコフィエフの「チェロ・ソナタ」はメンデルスゾーンよりはるかに集中しているものの、音に真の力が宿っておらず、どこか表面的に感じられる。NHKFMの収録もあり、イオニーツァは時々足を踏み鳴らして全力で弾いていることはわかるのだが、残念ながら音には反映されない。素晴らしいテクニックと音楽性のチェリストも人の子であり、不調の時もあるのではないだろうか。

 

 ピアノの園田奈緒子はイオニーツァとの共演経験もあり、息の合った演奏を展開していた。