ザハール・ブロン(指揮・ヴァイオリン)、服部百音(ヴァイオリン) 日本フィル | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

415日、東京芸術劇場コンサートホール)

レーピン、ヴェンゲーロフ、樫本大進、庄司紗矢香、川久保賜紀、神尾真由子、三浦文彰といった人気ヴァイオリニストを育て、今や名ヴァイオリニスト育成について揺るぎない評価を確立しているザハール・ブロンが、8歳の時から面倒を見ている愛弟子、服部百音とともに日本フィル(コンサートマスター木野雅之)の「サンデー・コンサート」に登場した。

 

ブロンが指揮するモーツァルト「歌劇《フィガロの結婚》」は、速いテンポでも旋律をよく歌わせるところにヴァイオリニストの片鱗を感じた。

 

日本フィルの弦と共に、第1ヴァイオリンをブロン、第2ヴァイオリンを服部百音が担当して弾いたJ.S.バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」は、ブロンと服部の芸風の差がはっきりと出た。服部は先生への遠慮と力の差に、本来の力を発揮できなかったのではないだろうか。服部の音程は正確で、高い音など特に美しいが、何を表現しようとするのか定まらないように思えた。一方のブロンはヴィブラートもたっぷりと、大河のような厚みと幅、深みでバッハを弾く。

しかし、二人のアンコール、プロコフィエフ「2つのヴァイオリンのためのソナタ」第1,第2楽章は服部に先生にぶつかっていこうという勢いがあった。

 

後半はチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」。ブロンが日本フィルを指揮して、服部百音がソロを弾いた。演奏は彼女の将来性を感じさせるものがあった。技術的に完璧であり、少し線は細いが素晴らしい美音とともに、自分の考えたチャイコフスキーを出そうという強い気持ちが感じられた。80%はブロンの教えを忠実に守りながら、残り20%は自分の思い描いたチャイコフスキーが出せたのでは、というのが個人的な感想。演奏後など時にブロンに甘える仕草もあるが、アイドル的なイメージとは異なり、芯の強さがあると思う。

 

服部百音のアンコールは、オーケストラをバックにしたチャイコフスキー「ワルツ・スケルツォ作品34」。これも完璧な演奏だった。