ピエタリ・インキネン 日本フィル ブルックナー:交響曲第5番(11月18日、サントリーホール)
北欧的なブルックナーとも言えるだろうか。第2楽章アダージョの再現部でゆったりと第2主題が出たときに、ひんやりとした澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込んだようなすがすがしい気持ちになった。それは、同時にインキネンと日本フィルの演奏が、精神的な高み、聖域に達した瞬間でもあった。
インキネンのブルックナーは、爽やかさを基底に置きながら、全体の構造が明解で、すっきりと見渡せる特長を持っていた。
日本フィルの金管は力演だったが、古巣にゲストで入った日橋辰朗のホルンの素晴らしさが、全体の演奏を持ち上げることに大きく貢献していた。全曲に渡って彼のホルンが最高の輝きを聞かせた。それはソロばかりではなく、フルートとの対話にせよ、第2楽章アダージョのコーダの主導にせよ、あらゆる場面で、要所を固めた。インキネンが演奏後、真っ先に日橋を指名したのも当然だろう。
インキネンと日本フィルのブルックナーは、これまで第7番、第8番を聴いたが、回を重ねるたびに、充実した響きになってきていると感じた。明解さに、力強さも加わり、たくましくなってきている。今後が楽しみだ。
なお、1曲目にフィンランドの作曲家、ラウタヴァーラ(1928-2016)の「In the Beginning」(日本フィル共同委嘱作品/アジア初演)が演奏された。