第24回 マツオ・コンサート | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

カルテット・アマービレ

 


クァルテット ベルリン・トウキョウ
 

226日、よみうり大手町ホール)

松尾学術振興財団助成による次世代の音楽界を担う弦楽四重奏団を支援するコンサート。前半は、カルテット・アマービレ。2015年に桐朋学園在学中に結成したばかり。2016ARDミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門第3位入賞。このコンクールは難関であり、権威もある。1970年に東京クァルテットが第1位になっている。

曲目はヤナーチェク:弦楽四重奏曲第1番「クロイツェル・ソナタ」と、メンデルスゾーン「弦楽四重奏曲第2番」。彼らの演奏は荒々しい。トレモロは鋸(のこぎり)で木を削るようだ。4人の力は均等で、アンサンブルの密度は濃い。ヤナーチェクもメンデルスゾーンも前のめりにガンガン行く。これが今の弦楽四重奏団の時流なのか。ミュンヘンの審査員は、彼らの粗削りで弾ける勢いに魅力を感じたのだろうか。これまでにない新しさを見つけたのかもしれない。ヤナーチェクの激しく緊張感のある曲は彼らの行き方が合うと思うが、メンデルスゾーンはもう少し優雅なアプローチがあってもいいのでは。音楽がどこかに取り残されている。聴衆の反応もとまどいが感じられた。

 

クァルテット ベルリン・トウキョウは、2011年結成。2012ARDミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門特別賞。現在ベルリンを拠点に活躍。2015年より3年間、札幌六花亭ふきのとうホールレジデンスクァルテット。エクサン・プロヴァンス音楽祭大使としてパリをはじめヨーロッパ各地で演奏予定。

彼らの演奏を聴くと、ほっとする。ヨーロッパの伝統を身に着けた正統的なクァルテットで、音もやわらかく美しい。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番大フーガ付きが演奏されたが、4人のバランス感覚が快適で、どこをとっても音楽的に聞こえる。第5楽章カヴァティーナは、甘くならず中庸の美を保つ。第6楽章「大フーガ」は、深刻にならず、また荒々しくなく、格調高い。とてもいい印象を受けたクァルテットだ。第1楽章演奏途中から、空調の音(クリーニング?)が急にうるさくなり、彼らは楽章が終わるまで演奏を続けたが、次の楽章に移る前に第1ヴァイオリン守屋剛志がたまらず舞台袖に向かおうとしたときに音は止まった。
 彼らの演奏には聴衆もブラヴォを送り、アンコールにバッハ「マタイ受難曲」からコラール「私はここ、あなたのみもとにとどまろう」が演奏された。