(2014年12月8日月曜日 東京文化会館)
来年4月から都響の音楽監督となる大野和士が定期に登場。曲目も意欲的で、バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」とフランツ・シュミットの交響曲第4番。同じ1930年代の音楽だが語法はまるで異なる。その対比をモダニズムの両面として対比することを目的に大野和士はプログラムに選んだ。モダニズムの先端のバルトークと、古典的でロマンティックなモダニズムのシュミット。
演奏の良し悪しの前に、実際に2曲を聴いて何を感じたか。
共通するものは、「不安」「悲しみ」「分断」「解決できない悩み」。1930年代という時代感覚と同じものだ。それは現代の我々にもそのままあてはまる。
明日が確かではない不安な現代と戦争を前にしたあの時代の漠然とした恐怖感。ロマンティックとモダニズムを一本突き通す「不安」という軸を感じたコンサートだった。
バルトークの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」の大野和士と都響の緊張と集中の演奏は立派。特に第4楽章アレグロ・モルトのロンド主題に挿入されるクープレ(副楽想)の充実した演奏とコーダ前のラルゴの部分の溢れるような音楽の勢いが素晴らしかった。
左右に分かれた弦セクションは首席が勢ぞろいの豪華さだった。
後半のシュミットの交響曲第4番は冒頭とコーダのトランペットの主題がこの曲の肝だが、トランペット奏者のソロは少し冴えなかった。そのためせっかくの演奏が画竜点睛を欠くものになったのは惜しい。明日のサントリーホールでは挽回できるのではないだろうか。
第2楽章アダージョが一番良かった。独奏チェロと中間部のティンパニとともに奏でられる葬送の音楽。
この日の都響の響きは、特に弦は、どこか固く潤いがなかった。ひさしぶりに聴く東京文化会館の音響のせいだろうか。改装されてから初めて行ったが、一見何も変わっていないように見える。床の張替、壁の塗り替えはすぐわかった。あとステージの床が張り替えられているのではと思ったが、近くに行って確かめていないのでわからない。