音楽大学オーケストラ・フェスティバル(第5回) 国立音楽大学/桐朋学園大学 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。


2014126日土 東京芸術劇場コンサートホール)

「音楽大学オーケストラ・フェスティバル」の3回目。

前半は高関健指揮、国立音楽大学オーケストラによるブルックナーの交響曲第7番。後半がラデク・パボラーク指揮とホルン、桐朋学園オーケストラによる、サン=サーンスの「ホルンと管弦楽のための演奏会用小品」とブラームスの交響曲第1番。



高関指揮国立音大のブルックナーはハース版を使用。第2楽章最後のシンバルはなく、派手な印象がないが、その第2楽章が一番の出来だった。第1楽章では厚みのなかった弦がこの楽章では充分な厚みを保っていた。またコーダのホルンの四重奏のハーモニーが見事に決まった。第1楽章は金管が強すぎ、コーダでの弦のトレモロが弱いなどバランスを欠いた印象を受けた。第3楽章はゆったりとしたテンポでトリオもよく歌う。終楽章はオーケストラの集中が強まり、弦のトレモロも精一杯の力がこもり、コーダは輝きとともに充実した響きを聴かせた。



後半のパボラークのホルンはやはり素晴らしい。実はバボラークを聴くのはこれが初めて。聞きしに勝るとはこのことかもしれない。弱音から強い音まで、完璧なテクニックと柔らかな伸びのあるほれぼれとする響き。バックのオーケストラも魅せられるように音楽的な流れをつくる。8分間ほど夢のような世界を味わうことができた。

バボラークの指揮もホルンに負けず劣らずなかなかのもの。彼のホルンそのままの柔らかな響きと流れるような音楽をオーケストラから引き出す。

オーケストラには80%くらいの力で無理をさせず、響きとハーモニーの美しさとバランスを大事にする。音楽は彼のホルンのようによく歌い、よく流れる。

力みかえったところは皆無。

16型、倍管のオーケストラをまるで室内オーケストラのように掌握し、細部までよくコントロールする。桐朋のメンバーひとりひとりの技術も貢献しており、オーボエをはじめフルート、クラリネットの技術が高く、ホルンもトロンボーンも美しいハーモニーを聴かせる。オーボエのソロはいずれも印象に残るものがあった。定評のある桐朋の弦も第1楽章こそやや薄い響きだったが、徐々に調子を上げ、後半はまろやかな響きをつくる。

4楽章の第2主題の羽根が生えたような軽やかな響きには魅了された。バボラークの指揮するオーケストラには色彩が感じられる。ブラームスが柔らかな美しい布で包まれるような印象を持った。

バボラークは指揮者として今後もますます成功していくだろう。