第25回紀尾井友の会イベントに行く。 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

2012825日(土)15時 紀尾井小ホール(座席614番)

映像&トークとコンサートで楽しむ紀尾井シンフォニエッタ東京 米国公演報告

1部=米国公演の映像レポート&トーク

登壇者:杉木峯夫(トランペット)、玉井菜採(たまいなつみ)

2部=紀尾井シンフォニエッタ東京メンバーによる弦楽四重奏

玉井菜採(ヴァイオリン)、山崎貴子(ヴァイオリン)

馬渕昌子(ヴィオラ)、中木健二(チェロ)

モーツァルト:弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387「ハイドン・セット第1番」

ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調Op.96「アメリカ」

Mixiで知り合った方に誘われて行ったイベント。ゲストは千円という入場料。紀尾井小ホールがあることは聞いていたが、5階にあるホールに入るのは初めて。本来邦楽専用ホールとして建てられており、座席は250席。残響は短いという。邦楽専用ということで、本来舞台は土足禁止だが、この日は洋楽のため通常のホールとして使用していた。ホワイエから迎賓館がすぐ近くに見え、なかなかいい眺め。

客席には先日新日鉄音楽賞を受賞したピアニスト、萩原麻未の姿もあった。

1部では今年4月末から5月にかけて行われた紀尾井シンフォニエッタ東京のアメリカ公演のレポートをビデオで演奏や会場の雰囲気などを紹介しながら、メンバー二人がトークをした。

ワシントンD.C.に日本から桜が寄贈されて来年が100周年であることを記念して、ワシントンD.C.の国立美術館「ナショナル・ギャラリー・オブ・アート」が開催する「チェリー・ブラッサム・ミュージック・フェスティヴァル」でのコンサートに参加(4/29)、フィラデルフィアのヴェライゾン・ホール(4/27)、ボストンのサンダース・シアター(ハーバード大学)(5/1)、ニューヨークのアリス・タリー・ホール(5/2)で演奏を行った。
指揮はティエリー・フィッシャー、同行ソリストは小菅優(ピアノ)で、演目はモーツァルトの《フィガロの結婚》序曲、ピアノ協奏曲第22番、ベートーヴェンの交響曲第3番の3

演奏ビデオはボストンの会場のもの。切れ味のよい演奏。ピアノの小菅優はブリテンの作曲したカデンツァがユニークで賛否あった模様。

オーケストラのメンバーには、読響フルート首席の一戸敦、オーボエ首席の蠣崎耕三 都響ヴィオラ首席の鈴木学、新日本フィルヴィオラ首席の篠﨑友美、ティンパニに新日本フィルの近藤高顯などおなじみの顔が見える。

毎晩コンサートのレセプションが現地ロータリークラブや日本大使館主催で行われたとのことで、豪華な料理がふるまわれたレセプションの画像などを見ると「おいしいツアー」という感想を持つ。紀尾井ホール、紀尾井シンフォニエッタ東京の人脈とスポンサーはさすがにクラスが違う。
これまで紀尾井シンフォニエッタ東京はトン・コープマンの指揮やペーター・レーゼルのベートーヴェンの協奏曲のバックで聴いた。技術的なレベルは高い奏者が揃っているので、今後機会を見てまたコンサートに行ってみたい。ピアノの小菅優は今秋カメラータ・ザルツブルクと共演する生を聴くので彼女の音楽性をこの目と耳で確かめてみよう。

休憩をはさみ、後半は紀尾井シンフォニエッタ東京メンバーによる弦楽四重奏

で、モーツァルトの弦楽四重奏曲第14番とドヴォルザークの弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」が演奏された。

専門の弦楽四重奏団ではない演奏を聴くのは正直つらい。何年も同じ活動をしている弦楽四重奏団と較べると、技術も表現力もアマチュアとプロの違いというくらい「はっきりと」出てしまう。そこにはオケの一員として活動している奏者の限界があり、個々の奏者は健闘していたものの、アンサンブルとしての緊密さや表現の深さは望むべくもない。

ドヴォルザークはまだよかったが、モーツァルトの傑作であるハイドン・セット第1曲の演奏は、精緻で複雑、完璧な構造を持つこの曲の真髄を伝えるものではなかった。