[ 内容 ]
水素と酸素からなる最も簡単な化合物-しかし、見かけは単純でも水は常識を超えた多様な性質を持つ。
固体(氷)よりも液体(水)のほうが密度が高く、物質を溶かす能力は群を抜き、表面張力が極めて大きい。
生命システムでも重要な役割を果たす「水」の不思議をさぐる。
[ 目次 ]
第1章 分子レベルでみた気体・液体・固体
第2章 水の構造をさぐる
第3章 水溶液の構造
第4章 界面と水
第5章 生体内の水
第6章 麻酔・温度・圧力
第7章 低温生物学
[ 問題提起 ]
わざわざDHMOと言い換えなくとも、水は知れば知るほど不思議な物体だ。
本書は「水」商売の権威が、水について当時知られたいたことを駆使して書いた本。
水素結合による水の不思議な特徴について解説している本はそれこそ湯水のごとくあるが、この本ほど徹底的に書いたものはそうはない。
固体が液体よりなぜ重いか、比熱がなんでこんなに大きいか、なんでこんなにものを溶かす能力が高いのか.....この辺の秘密はいろいろな本に書いてある。
[ 結論 ]
しかし大量の重水が何で毒か、科学的に不活性なはずのXeになんで麻酔作用があるのかまで解説した本となると本書ぐらいだろう。
あえて欠点を言うと、初版が1977年と古い。
私の手元にあるのは1996年の第39刷だが、ブルーバックスは普通ここまで版を重ねた場合、必ず改訂版や「新」版を出してくれる。
本blogで紹介しただけでも「核融合への挑戦」、「太陽電池を使いこなす」と枚挙に暇がない
。水とタンパク質の相互作用(即 Protein Folding)に関しては、今化学で一番ホットな話題でもあるし、本書の後にも水に関する研究はずいぶんと進んでいる。
是非第二版を出して欲しい。
とはいうものの、水の不思議は水素結合にあり、という基本は今も昔も変わらない。
その意味では今なお本書の価値は衰えていない。
[ コメント ]
水に縁のある全てのかたにお薦めの一冊。
そうそう。
「なぜ蒸留酒のほとんどがアルコール40%なのか」というのんべえ向けの話題もあります。
[ 読了した日 ]
2010年1月18日