【乱読NO.3267-1】「高校数学でわかるボルツマンの原理 熱力学と統計力学を理解しよう」竹内 | D.GRAY-MANの趣味ブログ

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[ 内容 ]
熱力学と統計力学は、重要な物理学の分野です。
しかし「ちゃんと理解していない分野」の代表でもあります。
定義は簡単だけれど、もうひとつよく解からないエントロピー。
統計力学からエントロピーを導いたボルツマンの原理。
どことなく違和感を感じていた熱力学と統計力学を、納得して理解できるように解説します。

[ 目次 ]
第1章 天を目指す人々
第2章 夢のエンジン
第3章 エントロピーって何だ?
第4章 気体分子運動論-ミクロの世界で何が起こっているのか
第5章 統計力学の世界へ
第6章 ボルツマンの原理-統計力学の中核へ

[ 問題提起 ]
高校数学(微積分、指数関数、対数)と物理学(運動量、運動エネルギー、ボイル・シャルルの法則)で、マクロの視野に立つ熱力学(カルノー・サイクル、熱力学第1・第2法則)とミクロの世界から積み上げていく統計力学(気体分子運動論、マクスウェル・ボルツマン分布)、そして両者をつなぐ虹の架け橋のようにシンプルで美しいボルツマンの原理がわかり、エントロピーの真に意味するところまでが面白いようにわかる実に優れた本です。

ほんの少し自分で紙と鉛筆で式を変形させてみるべき箇所はあるのですが、式の導き方も丁寧に述べられているから、読み進めるのに苦労する箇所はほとんどありません。

エントロピーが乱雑さに関係することは漠然とわかっていましたが、ボルツマンの原理によってすっきりと理解できます。

ラグランジュの未定乗数法やスターリングの公式のような高校以上の数学も少し出てきます、要を得た説明がなされており、わからなくなるのではと心配する必要はないと思います。

統計力学の中核であるボルツマンの原理が本書のゴールとされているのですが、統計力学はまだまだ奥の深い世界です。

しかし、大学でいきなり熱力学や統計力学の教科書を手にするより、本書で基礎を固めつつ個々の物理量・法則の概念を直感的に、そして証明を通じて把握しておけば、教科書の理解も進むだろうと感じます。

フェルミ・ディラック分布やボース・アインシュタイン分布は証明ぬきで式が登場し、厳密な導出は本書の枠外とされているのですが、フェルミ粒子・ボース粒子の振る舞いの基礎はおさえることができます。

[ 結論 ]
本書のテーマは熱力学と統計力学である。

そして、熱力学の延長上に統計力学を位置付けている。

熱力学は、熱伝導で代表されるように人間の感覚で捉えやすい世界である。

熱力学の第一法則をエネルギー保存則と重ねれば理解もしやすい。

熱力学の第二法則では、熱は高い方から低い方へ移動して、やがて平衡状態になると考えれば、なんとなく感覚で理解できる。

ただ、本書は、熱力学の第二法則は、様々な表現があって二十面相だという。

ここに、エントロピーという言葉の解釈を混乱させる要因があるのだろう。

熱力学の段階では、一つ一つの分子の衝突は、まだニュートン力学で説明できる範疇にある。

しかし、統計力学の段階になると、人間の感覚では手に負えない世界に踏み込む。

量子の世界では、それが粒子でありながら、想像もできない現象を見せやがる。

電子で代表されるフェルミ粒子や光子で代表されるボース粒子などは、不確定性に支配された行動をする。

あらゆる物体は、固体性と波動性の二重性を持っているのかもしれない。

人間が個々で活動する分にはまだ手に負えるが、集団社会となると、波が押し寄せるかのように個人の意志ではどうにもならない。

どんなに規制しようが、隙間から干渉現象のようにうまいこと回り込む犯罪者や、都合のよい解釈によって法律の障壁すら摺り抜ける政治家が蔓延る。

もはや、人間の理性観念ですら確率論で語るしかできないのか?

粒子性と波動性は、複雑系の持つ本質なのかもしれない。

これが、エントロピー増大の法則の本性なのか?

熱力学にせよ統計力学にせよ、扱う現象は、ほぼエントロピー増大の法則に従う。

もし、エネルギー効率100%の理想の熱機関が存在するならば、発生する熱量を全てフィードバックさせて、エントロピーの変化をもたらさないであろう。

だが、エントロピーは、断熱系において不可逆変化が起こるところでは必ず増大する。

ところで、サイクリック宇宙論において、宇宙構造は限りなく理想の熱機関に近いという可能性はないのだろうか?

だとすると、宇宙は断熱系なのだろうか?

宇宙の境界線はどんな空間と接しているのだろうか?という疑問がわく。

高温であった宇宙の誕生から膨張を続け、だんだん冷えて、やがて絶対零度に達すると収縮を始め、これを永遠に繰り返す熱機関にも見えてくる。

しかし、サイクリック宇宙論は、エントロピーの蓄積から現在の宇宙の平坦性を説明する。

となると、宇宙は断熱系で、不可逆変化ということになりそうだ。

いや!

実は断熱系ではなく、宇宙の外にあるなんらかの次元空間とエネルギーのやりとりをしている可能性はないのだろうか?

人類が初めて人工的な動力を手に入れたのがワットの蒸気機関と言われる。

蒸気機関の原型は1712年にイギリスのニューコメンが開発したもので、炭鉱の排水用として使われたという。

炭鉱内の事故といえば、落盤やガスによる酸欠、あるいは炭塵による爆発などがあるが、中でも地下水による浸水が大きな問題であったという。

ただ、ニューコメンの蒸気機関は、掘り出した石炭の3分の1を動力として消費したので非常に効率が悪い。

これを改良したのがワットである。

蒸気機関は、石炭を燃やした時に発生する熱エネルギーを水蒸気の分子の運動エネルギーに変換し、これをピストン運動に使う。

ワットの蒸気機関の効率は、わずか3%ぐらいだったと言われるらしい。

ちなみに、ニューコメンにいたってはわずか1%だったという。

当時、熱によって分子運動が生じることが知られていなかった時代である。

熱量とエネルギーの関係に取り組んだのがジュールである。

ジュールは醸造業の家に生まれたという。

なるほど、美味い酒でカーッ!となるところから、熱エネルギーという発想が生まれたわけか。

電線に電気を流すと熱が発生する。

これがジュール熱である。

ジュールはエネルギーと熱量を同等なものと考えた。

こうした発想がエネルギー保存則へ導くことになる。

カルノーサイクルは可逆過程であって理想の熱機関である。

このサイクルでは等温過程と断熱過程がある。等温過程とは、気体の温度を変えない熱過程である。

温度が変わらないということは、内部エネルギーを消費しないことを意味する。

したがって、等温過程で膨張した場合、気体は外部から熱を吸収することになる。

断熱過程とは、外部との熱のやりとりを遮断することである。

したがって、断熱膨張では気体の持つ内部エネルギーを消費することになる。

カルノーサイクルでは、二つの等温過程と二つの断熱過程を利用して1サイクルを形成する。

(1) 等温過程で、外部から高熱を吸収して膨張する

(2) 断熱過程で、気体の温度が上昇し内部エネルギーによって膨張する

(3) 等温過程で、外部から冷却して収縮する

(4) 断熱過程で、気体の温度が下降し内部エネルギーによって収縮する

カルノーサイクルの特徴は、サイクルを逆回転することができることである。

つまり、可逆過程。熱機関で可逆であるかどうかを判断するポイントの一つに摩擦がある。

摩擦は運動エネルギーを熱エネルギーへと変える。

以下に↓つづく。
http://blogs.yahoo.co.jp/bax36410/60721248.html

[ 読了した日 ]
2010年1月1日