[ 内容 ]
最もわかりやすいシュレディンガー方程式の入門書。
高校数学レベルの知識さえあれば、量子力学の最も重要な方程式あのシュレディンガー方程式に到達できる!
シュレディンガー方程式を理解しなければ、ほんとうに量子力学を理解したことにはならないのだ。
『高校数学でわかるマクスウェル方程式』の著者による待望の一冊。
[ 目次 ]
第1部 シュレディンガー方程式への旅(量子力学の誕生 波を表す式 シュレディンガー方程式 ほか)
第2部 原子の姿(波としての電子 量子数とはなにか 核と核分裂 ほか)
第3部 シュレディンガー方程式を解く-計算編(解析的に解く 数値的に解く 外からの影響がある場合)
[ 問題提起 ]
竹内淳の「高校数学でわかる」ブルーバックスシリーズは、文字通り高校で学ぶ数学で、大学学部レベルの物理を学ぶ本。
「高校数学でわかるマクスウェル方程式」「高校数学でわかるシュレディンガー方程式」に今年三月に刊行された「高校数学でわかる半導体の原理」が加わった。
看板に偽りはない。
偽りはないが、「高校数学」が何を指すかは少し気をつける必要がある。
ここで言う「高校数学」は、「高校生であれば必ず学ぶ数学」ではなく、「高校生が希望すれば高校で教わることが出来る数学」を意味する。
選択科目である微積分もその中にはきちんと含まれている。
だから、「サルにもわかる」的な解説を本シリーズに期待すると、「公園に連れて行く」と言われて国立公園の入口に立たされたような気分になるだろう。
しかし、きちんと歩き通すという気構えがあれば、最後まで走破できるという、そういうシリーズである。
[ 結論 ]
本シリーズの絶妙なところは、数式とエピソードと原理と応用が絶妙なところ。
「使える読み物」という料理として完結しているのだ。
これが専門家が使う教科書ともなると「調味料」で、ふつうの人がそのまま食すにはしょっぱすぎる。
かといってエピソードで埋め過ぎると本物の味がしない。
そして応用がわからないと、「中毒者」以外はそもそも食欲が湧かない。
本シリーズを料理に例えれば、アルデンテのスパゲッティというところか。
ソースが変われば味も変わるが、この点で著者が書いた本シリーズは首尾一貫している。
本シリーズは、ある意味「技術の伝え方」の実践編優秀作品といった感がある。
最近はブルーバックス以外の新書でも手に入る啓蒙書の歯ごたえがもの足りないけど、原典を生でかじり倒すのはちょっと怖いという方に絶好のシリーズ。
特に最新作の「高校数学でわかる半導体の原理」は、個体物理が苦手だった私には格好の再入門だった。
脳にいい汗をかいた後、脳にうまいものを食した気分を味わうには、最高の三冊。
[ コメント ]
物理は嫌いじゃなかったのに、数式についていけずに途中下山した人も、本シリーズがあれば再挑戦できるのではないだろうか。
[ 読了した日 ]
2010年1月1日