【乱読NO.1741】「経営戦略」奥村昭博(著)(日経文庫) | D.GRAY-MANの趣味ブログ

D.GRAY-MANの趣味ブログ

ココチよさって私らしく暮らすこと ~読書と音楽と映画と・・・Plain Living and High Thinking~

 

イメージ 1

 

[ 内容 ]
経営戦略は、短期の企業業績だけでなく長期的な存亡にも大きく影響を与える企業の基本指針である。
戦略をどのように策定し現実の経営にどう生かすか――新しい視点からの戦略論を展開。
本書は、主として日本企業を研究対象として、そこから経営戦略についての理論構築を試みています。
ハンディなタイプの入門書のスタイルをとっていますが、最新の戦略論の動向にも詳しくふれており、豊富な内容を盛り込んだつもりです。

[ 目次 ]
序章 経営戦略とは
第1章 経営戦略論の課題
第2章 経営戦略の本質
第3章 分析型経営戦略論
第4章 戦略と組織の相互浸透
第5章 プロセス型戦略論
終章 新時代の戦略論を求めて

[ 問題提起 ]
『基本経営学全集5 経営組織論』(車戸實編)等でみてきたように、企業組織論は、組織や戦略のさまざまな可能性を記述するために、理論が数多く枝分かれしている。

この文献では特に、情報処理プロセスをコーディネートするという視点から企業戦略を模索しているが、PPMやマトリクスなど、戦略に関する基本的な事項もおさえられており、基礎文献として読みやすい。

高度に不確実な環境下で有効な戦略を立てるのには、「事前にラフなシナリオを描きつつも、トライ・アンド・エラーを繰り返し、そこから有効な戦略のコンテントを創り出し、それを蓄積しながら次第にその戦略コンセプトを精緻化する方法」で、「言い換えれば、短期的な実施を積み重ねながら長期的な企業行動を形成するもの」だというのは、私のコラム「コンテンツ×コンセプト」と視点を一にするものであるが、それに具体性を与えてくれるものであった。

新書サイズとしては非常に内容の濃い、コンパクトにまとまった一冊である。

[ 結論 ]
すなわち、それは「How to do」と、「What to do」や「Why to do」を組み合わせるということであるが、往々にしてHowばかり強調されて、「ホリスティック」な戦略が立てられないということは企業戦略に限ったことではないだろう。

「『理念先行』型の経営戦略とは、まず企業のあるべき姿、あるいはビジョンがあって、このビジョンに向かって企業の戦略的決定が下されるのです。ホンダの場合、まず『世界のホンダ』というビジョンがあり、ここからその姿に到達するには『何をなすことが最良か』というロジックが出てくるのです。その上で、『何ができるか』を考えると、当然ギャップが出てくる。このギャップを埋める方法を考えればおのずと『どのように』その『何を』なすかが見えてくるのです」という著者の指摘が、まさにそのことを端的に示している。

テクニック優先型の企業戦略というのももちろんあるが(例えばある特許を基にした事業)、別の技術に取って代わられる場合が多く短命であり、勝ち残ることが難しいということは容易に想像がつく。

特許残存率という指標がデータとしてあるのだが、それを見ると技術の革新年数が速まっているのが分かる。

逆にビジョナリー・カンパニーというのは、例えば今出てきたホンダの他に松下、日産などが考えられるが、目標の共有と、それを基準にした資源配分が可能になるというメリットがあるため、その目標の達成のために組織形態を柔軟に変えていくことで、勝ち残る可能性はテクニック優先型よりも高い。

大きな差は、判断基準を持っているかどうかではないかと思う。

前者はサイモンのいう「事実前提」依存型であり、後者は「価値前提」重視型であるともいえよう(もちろんビジョンやコンセプトが硬直化してしまう可能性もある)。

「価値前提」重視型は、こちらもサイモンのことばを借りると「砂の上のアリの軌跡」であり、「認知限界」(Cognitive Limit)によってランダムなプロセスを辿るものの(インクリメンタル・アプローチ)、最終的には目標に向かって前進するというメタファーは、とても重要である。

ちなみにそうした「価値前提」には、「.疋瓮ぅ麕姫辧↓▲疋瓮ぅ鷙況癲↓ドメイン創造」があるという。

そうした基準に従った資源配分の方法は、『企業価値創造型リスクマネジメント その概念と事例』(上田和勇)や『ケースに学ぶ経営学』(東北大学経営学グループ)、『マーケティング通論』(及川良治編著)、『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(戸部良一他)、『儲けるための「経済学」を学ぶ ゲーム理論 活用術』(手塚宏之)、『現代広告論』(岸志津江・田中洋・嶋村和恵)ところが多いので、ここではあえて省略する。

[ コメント ]
本書では、これらの文献で説明されているようなことを一通りカバーすると同時に、資源配分戦略の具体例が数多く示されている。

それらを総合すると、組織というのは「(析型経営戦略、過去の蓄積、4覿肇ルチャー、ぅ肇奪廚硫礎祐僉↓チ反ァ↓Ε泪優献瓮鵐・システム、Я反テ眄治」などのゲシュタルト的複合体であり、その意味で、以上のような分析・選択ツールを利用しつつ、リスク・マキシマムによってビジョンを達成するというリスクテイクを行っていく集団であると言えるかもしれない。

[ 読了した日 ]
2009年2月22日