【乱読NO.1603】「10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え」澤上篤人(著)(朝日新書) | D.GRAY-MANの趣味ブログ

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[ 内容 ]
ふつうの人でも、あらゆる株必勝法のインチキを見破り、カモられずにお金を増やせる方法がある!
株をやらないつもりの人でも思わずやりたくなる、クールで知的な株入門。

[ 目次 ]
第1章 株で100万円が100億円になるのはなぜか?
第2章 ホリエモンに学ぶ株式市場
第3章 デイトレードはライフスタイル
第4章 株式投資はどういうゲームか?
第5章 株で富を創造する方法
第6章 経済学的にもっとも正しい投資法
第7章 金融リテラシーが不自由なひとたち
第8章 ど素人のための投資法

[ 問題提起 ]
株のための臆病者入門

タイトル、こちらの方がよかったのではないか。

なにしろ、本書には当たり前のことしか書いてないからだ。

困ったことにタイトルまで当たり前であった。

この当たり前のタイトルとオビのおかげで、ずっと注文してなかったのだ。

せめてタイトルが「犬が人を噛んだ話」ではなく、「人が犬を噛んだ話」なら気に留めたのに。

しかし本書は、その当たり前の「犬が人を噛む」という結論を、「人が犬を噛んだら」という視点からの分析を経て書いている。

そう。

ちゃんと人が犬を噛む話なみに面白い。

[ 結論 ]
そんなシーンをちょっとだけ抜粋しよう。

pp.21「ギャンブルはうさんくさくない。株式投資はギャンブルである。だから、株式投資はうさんくさくない。」

「株式投資はギャンブルである」という「当然」を、著者の口から言わせるとこうなる。

実はこれは著者の橘玲(たちばなあきら;たちばなれいではない)がなみなみならぬ書き手であるなによりの証拠だ。

よい文章の定義は、「あなたにしか書けないことを、誰にでもわかるよう書いた文章」だが、本書は「誰にでもできる株式投資法を、著者にしか書けない方法で説明した本」である。

これだけでも充分買う価値があるだろう。

実は本書に書いてあることは、「まっとう」な投資本であれば必ず書いてあることばかりだ。

私自身同様な主張をBubkaの連載でずっとしてきたし、主張だけまとめたなら、本書は「「黄金の羽根」を手に入れる自由と奴隷の人生設計」の劣化コピーに過ぎない。

しかし、本書の方がずっと面白い。

タイトルに限って言えば、冒頭で述べた通り逆であるが。

それにしても、投資では滅多にだまされたことがない私がタイトルとオビにころっとだまされるとは。

帯にはこうある。

他の本には書いていないことばかり!

カモられずにお金を増やす方法。

これでは株だけではなく、株入門に対して臆病になっている人たちに買うなといっているに等しい。

どうも文春新書は、折角の良著をマーケティングで損ねる傾向があるようだ。

もっとも本書はAmazonの新書では第三位につけているので、それにもめげず売れているということでもあるのだけど、それでもこの二冊が「ウェブ進化論」と「国家の品格」の後塵を拝しているのには、マーケティングセンスのまずさも響いているのではないか。

ライブドアの上場廃止で、新書より安く変える株もなくなったことだし、「臆病」で株をまだ買ってない人も、すでに株の売買に慣れているひとも、ちょっと手を休めて本でも読んでみるのはいかがだろう。

[ コメント ]
本書はたまたま株のことも書いてあるが、基本的には橘節を楽しむ本である。

本書の最後の一行は、著者にふさわしい奇抜で良心的なものだ。

P.229「ひとには、正しくないことをする自由もあるからだ。」

正しくないことをする自由を求める全ての人に。

[ 読了した日 ]
2009年2月13日