カラオケ行こ!@U-NEXT
2021年のコミックに関する数々の賞に輝いた原作の映画化。
原作としては、個人的にはそれほど刺さらなかった。
翻って、映画版は殊の外傑作である。
もともと単行本一冊の原作を、秀逸な肉付けを行っていた。
作品中には様々な対比が描かれている。
男性ソプラノを担う中学生の聡実は、声変わりで思うように歌えなくなって悩んでいる。
片や、ヤクザ者の狂児は組長主催のカラオケ大会で最下位を取ってしまうと、絵心のない組長に刺青を入れられてしまうことに悩んでいる。
このどうしようもない悩みと、どうでもいい悩みの対比が秀逸である。
そもそも、中学生とヤクザ者というのが対比の極みである。
引退する三年生と、次がある二年生以下の後輩たちとそれである。
ただ、ベクトルが真逆なものの対比だけではなく、映画を見る部の巻き戻せないビデオデッキというのと、中学生として一度しかない最後の合唱祭というのは同性質の対比として描かれている。
様々なAとBの対比を通して、世界の厚みを作っていく点が秀でている。
声変わりで失うであろうソプラノの音域の代わりに、聡実は得難いものを手に入れたのではないか。
目標まで、あと70本。