ベーシストとエフェクター -15ページ目

kazのヒーロー(その2): 櫻井 哲夫

今回は、中学から高校時代までの自分のベースプレイに多大なる影響を及ぼしたヒーローの1人、櫻井 哲夫を自分の視点から独断でご紹介したいと思います。(ご存知の方も多いと思うので、敢えて同氏のbiographyにはあまり触れませんね)

櫻井氏のプレイを初めて聴いたのは、81年頃だったと思います。完全に歳がバレますが、自分が中学1年の時。小学校6年からすっかりYMOにハマっていた自分は、たまたま因果でエレキベースを始め、1年も経たないうちに櫻井氏のプレイを耳にした訳です。確か、そのときに聴いたのは、NHKのFMでやっていたセッション'79か'80のカシオペアの公開録音。ほぼ全編、スラップ(チョッパー)や早弾きの連続で度肝を抜かれたものです。

ベースって、なんかつまんないなーと思っていた当時の自分が、「ベースは主役になれる」ことを強く印象付けられた瞬間です。

それからは、カシオペアのアルバムやその他の音源を聴き漁ります。ルイス・ジョンソンラリー・グラハムら海外勢の古典的チョッパープレイも聴いてはいましたが、当時の自分には、まだ彼等のリズムのうねりとか、音の間の演出とかは理解できず、YMOに慣れ親しんだ自分の耳には縦割りでかっちりリズムを刻み、とにかく細かく音で隙間を埋め尽くしてしまう当時のフュージョンスタイルの様式美が心地よかったのを記憶しています。

彼のカシオペア時代のプレイは、10枚目くらいのアルバムや同時代のライブ録音に至るまで、ほとんど全てと言っても過言ではないほどコピーをしました。ソロプレイまでも、何度も何度も聴いて、どうやっているんだろうと考えながら必死にコピーをしまくりました。高校受験も間近に迫っているというのに、中学3年の冬に至っても、親の目を盗んではトライ&エラーを重ねた。今では珍しくもないですが、自分の中学時代はスラッピングをやるベーシストなどは周りにほとんどいなくて、その状況そのものが自分がスラップを極めて目立ちたいというインセンティブになったものです。

このときの原体験が、自分の耳と技とスタイルの確立に大きく役立っていることは間違いない事実です。使用楽器の影響は「愛器」のコラムで散々書いていますのでここでは触れませんが、プレイに関しても当時はモロに彼の影響を受けており、ハードロックバンドがメインの今でも自分のプレイのバックグラウンドには彼から受けた影響が色濃く残っています。

高校の後半から大学に至るまでは、グルーヴ感やバンドサウンド全体のアンサンブルに興味が行くようになり、ベースをプレイしながらも、チック・コリアジョン・スコフィールド、マイルス・デイヴィス、ジノ・ヴァネリといったベーシストではないアーティストのサウンドメイクアレンジに傾倒していき、櫻井氏のプレイに触れる機会は少なくなりましたが、今でも非常にリスペクトしているベーシストの1人です。

ベースってのはこう弾くんだ、と今でも新鮮に思わせてくれるプレイは、どちらかと言うとライブ録音に多くちりばめられていますが、アルバムでは、

79年 CASIOPEA
82年 MINT JAMS
82年 FOUR x FOUR
85年 CASIOPEA LIVE


というところがオススメでしょうか。くしくも、4枚中2枚がライブアルバムになってしまいました。加えて82年のFOUR x FOURのリー・リトナーやネイザン・イーストらを迎えて1day1発録音というライブ感あふれるアルバムなので、荒削りな肉感が魅力のデビューアルバムを除くと、実質的に全てライブ。思い返すと、カシオペアをはじめとして多くのフュージョンバンドは技術力をバックグラウンドにしながらも、オーディエンスとのインタラクティブ性を活用した活き活きとしたライブサウンドがベストテイクであったりした時代であります。ライブがベストテイクであること自体は、アーティストとしては誇れることではないかも知れませんが、スタジオで時間をかけて緻密に積み上げるサウンドに負けず劣らず、良いものだと思います。

今となってはテクニカルな面ではあまり高いレベルとは言いがたいですが、当時のフュージョンブームの息吹とか、開発途上のプレイテクニック(スラップもそうですが、タッピングが「ライトハンド奏法」と言われて特別視された時代)の歴史を垣間見ることができると思います。聴かれたことのない方、是非一度聴いてみてください。

<アンプヘッド: AGUILAR DB750>

もう1つ、AG500と同時に試してきたアンプ、DB750のレビューです。次のアンプはAGUILARのDB359と心に決めているのですが、ライブでの使い勝手やメンテナンス性を考えると、どうしてもフルチューブよりもハイブリッド型に軍配が上がります。サウンドと所有欲を徹底的に追求するか、移動やメンテコストのバランスもトータルで考えるか、選択はなかなか難しいところです。

DB750は、今自分は使用しているSWR Electric Blueと同様、プリがチューブで、パワーがソリッドというハイブリッドスタイルのアンプヘッドです。4Ωで750wという出力は自分にとってはtoo muchで、Gainをクリップぎりぎりまで上げたサウンドが好きな自分としては、扱いづらいと思う程のオーバーパワーです。2Ωだと約1000w、20年以上前の状況を考えると隔世の感があるパワーです。

肝心の音の方は、ハイブリッドの良さが活きている感じのサウンドです。試奏用のベースは、サムベースがなかったので、同じWARWICK製のSTREAMER STAGEⅠ 5st。ベース本体のコントロールは全てフラット状態。AGUILARのアンプはいわゆるFENDERスタイルのコントロールで、規定値としてイコライザーフラットの状態がない。ただ、イコライザ関係はhigh(4khz)-mid(400hz)-low(40hz)の3つに、bright(5-7khz)とdeep(30hz)のスイッチがついているだけと極めてシンプル。midだけはブーストとカットの双方ができるものの、楽器の原音に対して特定の帯域をカットするという思想はあまりなく、どちらかというと不足する部分を必要に応じて補正して原音を素直にワイドレンジに増幅するというセッティングが基本となっているようです。

プリ部のチューブは4本使われていて、いわゆるクセのようなものはありませんが、チューブらしく艶と迫力のあるサウンドながらも、輪郭がぼやけることなく、ちゃんと前に音が出てきます。この辺を言葉で表現するのはとても難しいのですが、一般論としてAGUILARの方がAMPEGよりもチューブのチューブらしい良さを引き出すのに長けているということが、感覚的にわかるような気がする音です。しいて言えば、良い意味でこの辺がAGUILARのクセなのかも知れませんが、この750に限って言えば、ハイブリッドということもあってか、特性的に90年前後の古き良きSWRに似た印象を受けます。聴感上の音域的なレンジは広いと感じますが、プリチューブでコンプレッションされた感じになるため、ダイナミクスは若干狭まるような印象、ごく僅かなコンプレッションで音粒を整えてくれる感じです。

楽器のダイナミクスに一切手を加えずにその原音をそのまま増幅する
 → Walter Woods
良質なアンプを含め、ベース+アンプを一体として「楽器」と捉える
 → AGUILAR


無論、好みの問題ではありますが、上記が現時点での自分なりのベストチョイスです。時間をかけてWalter Woodsを試してみましたが、コンデンサマイクをつけたウッドベースにはベストな感じがしましたが、エレキベースについては機種を選ぶアンプだと感じました。出来の良いアクティブベースだといい感じになりますが、ヴィンテージのパッシブベースとかだと、あまりに生々しすぎて良いとは感じないんではないかな、という印象。ということで、自分はAGUILARに傾倒してます。ちなみに自分が使っているスピーカーのブランド、EBSのアンプ(FAFNER)は、自分の楽器を持ち込んで使ってみましたが、良くも悪くもEBSのアンプであることを主張します。ちょっとドンシャリ系の艶やかな音で、好きな人にはたまらないと思いますが、ミッドが特徴であるサムベースとの相性はイマイチでした。現在はWalter Woodsを使っている櫻井哲夫氏の前アンプがFAFNERでしたので、ちょっと前の音を聞かれるとお分かりになると思いますが、YAMAHA TRBシリーズのようなタイプのベースには相性が良いと推察します。

だいぶ話がそれましたが、DB359はパワー部もチューブなので、ミッドの出方が大好きではありますが、今回試したDB750のバランスの良さとメンテナンス性、あと10万円の価格差も捨てがたい。でもいずれにしても、この価格帯になると、値段の差というよりは求めるサウンドと使途による利便性の差で選択することになるんでしょうね。SWRで慣れ親しんだチューブプリ+ソリッドパワーのハイブリッド式アンプには、フルチューブを差し置いてでも選択する魅力が数多くあります。

ま、値段が値段だから入手するのは当分先になりそうですが・・・

<アンプヘッド: AGUILAR AG500>

読者登録してくださっているトリモティさんから、先日YAMAHAのフルデジタルアンプBBT500Hを購入されたとのお話を伺い、デジタルのアンプってどうなんだろうって興味を持って、先日、試しに行って参りました。

自分が試したのは、自分がいつか所有したいと思っている究極のフルチューブアンプをラインアップに擁するAGUILARがパワー部にデジタルを採用したAG500。YAMAHAのBBT500Hはフルデジタルでプリ、パワー、エフェクトも全てデジタルの様で、自分で作った複数のサウンドのメモリーできる、YAMAHAらしいアンプ。一方のAGUILARのAG500はパワー部のみにデジタル技術を使ったもので、YAMAHAとは全く性格を異にするモデルですが・・・

価格は定価で税込24万円。この手のアンプにしては高価格。AGUILARは、AMPEGよりもチューブの使い方が上手いと言われるチューブアンプが看板のブランド。そこが敢えてソリッドステートを作っているのでとても興味があったわけです。

プリ部はフルディスクリートのFET回路を採用したクラスAアンプ、パワー部はデジタル技術を採用したMOS-FET回路という構成(クラスDと表されていますが、DIGITALのDなんでしょうかね)。全てソリッドですが、プリはアナログでパワー部はデジタルで増幅していることになります。

それで、500w出力。デジタルパワーアンプにしては随分と控えめだなと思ったのですが、上位機種でチューブプリ+MOSFETパワーのDB750(750w)があるので、マーケティング上のポジショニングの関係で抑えているのかな、と思います。デジタルらしく軽量で重量はなんと8kg、しかも2chプリ

実際に試した感想は、アンプとしてものすごくよく出来ていると思います。特に、ch1(ch2はドライブ)は、チューブタイプのAGUILARアンプをモデリングしているようで、とてもクリアで素直なサウンド。クセがほとんどなくて、もともとベースが持っているレンジを更に上下に拡大してくれるような感じです。でも、自分にはちょっと音がキレイ過ぎる気がしたし、何よりも、なかなか良い言葉が見つからないのですが、AGUILARのチューブアンプでゲインを上げた時の、歪まずに"growl"という感じがなかなか出ません。もうちょっと暴れる感じが再現できていればもっと良いと思います。歪み感というのは比較的容易に作れるようですが、FET回路でナチュラルな暴れ感というのは、AGUILARをしてもなかな難しいんでしょうか。

真空管アンプでもAMPEGに比してトラブルが少ないと言われるAGUILARですから、ソリッドステートだとトラブルはほとんどないんだろうなと思うので、ライブや移動が多い方には良いかも知れません。価格的にもこなれていますし。でも自分の中ではどうしても「ソリッド:Walter Woods」「チューブ:AGUILAR」という構図があるので、AGUILARのソリッドって、どうも惹かれない・・・ だからといって、プロでもないから、トラブルが心配なフルチューブも・・・ という感じです。当分、悩む楽しみは続きそうです。

ベースシンセ: AKAI SB1 "DEEP IMPACT"

AKAIが満を持してリリースしたベースシンセ、AKAI SB1 Bass Synthesizer "DEEP IMPACT"です。サウンドは、圧巻です。BOSSからもSYB3という機種でベースシンセが出ていますが(最近マイチェンしたようですが、その機種は使ったことがないのでマイチェン前のものとの比較)、異次元のシロモノです。おそらく基本コンセプトも違うと思いますが。

自分の友人であるAKAI関係者から聞いた話ですが、このSB1は姉妹機のUB1と共に、東欧出身のピッチ検出理論の世界(いろんな世界があるものです)では権威で天才と呼ばれる科学者(一部ではマッド・サイエンティストと呼ばれているようですが、その道を極める方というのは、少なからずそういうモノなのでしょう)の理論に基づき製品化したものだそうです。

それを聞いて十二分に納得感があるのですが、とにかく従来の他社製品と比較すると異常なまでにピッチ検出が正確で迅速。キーボードのように電子的にピッチの命令を送っているのとワケが違う。ローテク弦楽器から出力されるアナログ信号からピッチを検出して、その周波数と音の強弱を読み取って、それに基づいて内部音源を鳴らす。言えば簡単そうだけど、最初のピッチ検出が難しいらしい。ご存知のように優秀なデジタルチューナーでも、針が振れるまで微妙なラグがある。でも、このペダルは音源=楽器である限り(理論的には別にして)聴覚上は弾いたと同時にピッチ検出して内部音源を発振させないといけない。それはそれはエライ大変だと思うのですが、ちゃんとできてるから、凄い。

特に従来の他社製品は、内部音源をちゃんと慣らしてあげるために、たとえば倍音が出にくいネック側で弾くとか、多少のコツや慣れが必要でした。でもこのSB1はコツがいりません。早いフレーズを弾いても、ここまで正確に追随してくるベースシンセは正直驚きです。どうなってるんだろう、という感じです。また、こんなキワモノエフェクトであるにもかかわらず、トゥルーバイパス仕様というあたりが、AKAIらしさのうかがえるこだわりの一品です。

YMO世代に育った自分は、中学時代に、友人がエレクトーンで頑張ってる傍らで自分はベースにディストーションやフランジャーをかけたりして、一生懸命サウンドメイク(というか音作り?)してました。こんな機材が20年前にあったら、間違いなく自分はヒーローだったな、なんて思います。

その代わり、BOSS SYB3との決定的な違いは、SB1はサウンドメイクのバラエティが少ないこと。BOSSの場合は波形(パルスとかノコギリ波等)の選択と、それに対するフィルタやレゾナンスといったコントロールで音を作りこみます。これに対して、SB1の場合はプリセット8種のマイチェンによる音作りを基本としています。ただ、生ベースを演奏される方で、それほど多くのシンベ音のバラエティを必要とされる方も少ないと思いますので、SB1のバラエティと、そしてなによりも十二分に実用に耐えるピッチ検出精度があれば、不満はまずないと思います。ちなみに、自分も今は2種類のプリセットしか使ってませんが、充分堪能しています。

息子の愛器 : SONOR glocken NG10

我が家の三男坊の愛器、独SONOR ソナー社のグロッケン NG1。そう、なんとあの泣く子も黙るトイツの打楽器メーカー、SONORの製品。おもちゃですけどね。別コラムで書きましたが、三男坊は先天性の高度難聴なのですが、補聴器をするとたいぶ耳に音が入るようですので、やはり「良い音」「正しい音」の刷り込みが大事だと思って、コレをクリスマスにプレゼントしました。

久しぶりにグロッケンというか、鉄琴なるものの音を聞きましたが、これがなかなかのグッドサウンド。おもちゃとは言え、SONORが自身のブランドを冠するだけあって、なかなかのものです。

ピッチ精度も完璧(って、チューナーで測るようなことしてるのって自分くらい?)で、とにかくサスティンに伸びがあって、キレイに音が澄み渡ります。息子が相当いい加減に叩いても耳障りな音はしません。そして音の減衰がまた美しく、どことなくはかなさを漂わせながら、最後は潔くフェードアウトして行き、ふくよかな余韻が耳に残ります。

ピッチの精度もあり、和音がやたらと美しい。Cから1oct上のFまで全音階で、F#とH♭が差し替え用でついてます。4thやマイナーコードもルートによっては出せるということです。4thとかminorの音が特にいいですね。正音階でジングルベルをやってみましたが、これもなかなかいい感じです。

サンプラーマシンで音を取り込んでシーケンスで鳴らしても、この美しさは再現できないんだろうな。これが生楽器の良さでもあるんですけどね。

スイッチングシステム: Providence PEC-1 ver.2

国産ハイエンドブランドの雄、プロヴィデンスのスイッチングシステム、Providence PEC-1 ver.2。以前はエフェクト類もそれ程多くなかったので、CAJCranetortoiseの2ループボックスで間に合わせていたのですが、いつの間にかたくさんのエフェクト類に囲まれ、普通のループボックスではフットワークが追いつかなくなって来ました。また、エフェクターは基本的にはその場のインスピレーションでちょっと使うだけ、っていうのがほとんどですで、基本はコンプしか使わない。最近はチューブプリアンプを使用していることもあり、コンプすら使わないことも多いので、生音への影響を極力避けてアンプダイレクトの音に近付けつつ、一発で複数のエフェクトのon/offをコントロールするためにセットに組み込みました。

まず、徹底した高品質へのこだわりが、所有欲をくすぐります。単純なループボックス(5ループ)としても、プログラミングボードとしても、どちらでも使用できます。プログラムは5通り組めるので、ライブの曲順と使用状況に併せてあらかじめプログラムをしておけば、1~5まで順番に踏んでいけば、何も考えずに複数ペダルをコントロールしてくれるので、演奏に集中できます。また、曲中にインスピレーションで突然踏みたくなった時は、ループモードにして、目当てのエフェクトだけをon/offすることができます。ライブ演奏中に演奏以外のイシューのわずらわしさから開放されるというのは、本当に嬉しいものです。

あと、自分にとって嬉しいサプライズだったのがバッファ機能の優秀さです。自分は基本的にバッファの類で原音に余計な味付けをされるのをあまり好まないタイプなのですが、このバッファは本当に良くできています。プロヴィデンスらしく、inputはバッファ有と無しの2つあるのですが、選択的にバッファ機能ありの方を使っています。エフェクターを使わない時間の方が圧倒的に長いので、自分のサウンドは、楽器からこのPEC-1にBELDENケーブルで接続、PEC-1のバッファを経由してそのままアンプに出力されています。この音がとても気に入っています。

唯一の難点はoutputの位置です。本体の前部(客席側)についています。スイッチングシステムは、自分の足元の一番近くに置いて、自分の足元から離れた側(客席側)に、そのシステムに組み込むエフェクター類を配置するわけで、従ってそのエフェクター群のはざ間からoutのケーブルを出さないといけない。これはとても不便です。出来れば、inとout、あとは電源スイッチも、天板(踏む部分)の両端に付けて欲しかった。イメージ的には、retrospecのコンプのようにね。

あと、これはPEC-1のせいではないですが、ライブ前の配線チェックはとても重要です。エフェクターの数が多くなるだけでも配線トラブルは増えますが、スイッチングシステムを使うとループに組み込むことになるので、配線の数は直列に接続したときの2倍に増えます。これは、配線トラブルの発生確率も2倍になることを意味するわけで、接点不良や配線外れは常に気に留めておく必要があります

でも、文句はそれだけで、とても気に入って使ってます。少々高いですけど、メカ好きとしては見てるだけでもシアワセになれるので、これはこれでいいかなって思ってます。

kazのヒーロー(その1) : Doug Wimbish

今回は、自分の音楽上のヒーローの1人、Doug Wimbish ダグ ウィンビッシュをご紹介したいと思います。

Dougは1956年9月、米国生まれの黒人ベーシスト。自分は68年生まれなので、ちょうど一回り上の申年、年男です。幼少期についてはあまりデータがないのですが、20歳代前半から、Sugar Hillというhiphopレーベル専属のインハウスミュージシャンとして活躍しました。そこでのちにTackheadというユニットを一緒に組むことになるドラマー、Keith Le'Blancと一緒にレーベル専属のリズム隊として様々なhiphopアーティストのバック演奏に留まらず、楽曲提供やアレンジを務めます。

そして80~90年代にかけて、様々なスタジオワークをこなしながら、伝説のユニット「Tackhead」で活躍。Tackheadの「Strange Things」というアルバムは、Dougは今現在でも、自身のベストワークの1つとしていの一番に挙げる名盤です。それもそのはず、ドラマーKeith Le'BlancはJames BrownやPeter Gabrielのサポートをやっていたし、ヴォーカルのBernard Fowlerは坂本龍一のMedia Bahn時代や、DURAN DURAN、Sly & Robbie、MATERIALのサポートをしていた。

あらゆる音楽的要素が、緻密に計算されて詰め込まれていて、とにかくカッコいいユニットです。このTackheadは、元々今年の予定だったのですが、来年にはヨーロッパツアーを、そして、最新のDVDもリリースされる予定とのことで楽しみにしています。

80~90年代のTackheadの活動の傍ら、Madonna、Billy Idolといったメジャーどころから、George Clinton、 James BrownといったFUNKの大御所、Mos Def等のhiphop界、Jeff Beck、Joe Satriani、Mick Jagger等のロックスターのサポートもこなしています。そして90年代での活動で特筆すべきはやはりLIVING COLOURへの加入でしょうか。Muzz Skillingsの脱退に伴い、Dougが加入、アルバム「Stain」をリリース。発売当初は帯に「黒人最強ベーシスト、Doug Wimbish加入」と謳っていました。それに違わぬ内容だと思います。

さて、このDougの自分に対する影響として一番大きいのはエフェクトの使い方ベースラインの組み立て方です。Dougはエフェクターを使うことは「Peekaboo」と表現しています。要は、思わぬところで瞬間的に使うことによって、オーディエンスのみならず、バンドメンバーすらもびっくりさせる、とのこと。「今のは、なんだったんだ???」っていう感じを狙っているようです。自分はどうしても使いすぎてしまうので、この辺はもっと修行が必要です。あとはベースライン。8ビートと16ビートを混在して使って、ハッとするようなラインを奏でます。難しいことを抜きにして純粋にカッコいいと思えるラインです。この辺も、もちろん自分はまだまだ修行が必要です。

LIVING COLOURでもこのあたりのエッセンスは多く聴けますが、Tackheadは試行錯誤を継続する部分も多くあるユニットなので、より実験的な要素が含まれていて「どうやってるんだろう???」というサウンドが満載で楽しいです。

自分は小さい時からブラスバンドや弦楽をやっていたので、当初のヒーローはHOLSTやSTRAVINSKYだったりしますが、中学からはCASIOPEAや浪花エキスプレスといったところ、以降はChick CoreaやJohn Scofield、坂本龍一等に傾倒していたので、実はロックを通っていないのです。そんな僕にROCKやhiphopとの貴重な接点を持たせてくれたベーシストとして、Dougの存在は極めて大きいのです。

尚、コレは本当に偶然なのですが、WARWICK Thumb BassやNS Design CRといった機材は、入手後にDougも一部のセッションで愛用していることを知り、ますます嬉しくなる、極めてシンプル思考の自分だったりします(笑)

コンプレッサー: EBS MultiComp

ちょっとブログの本題に戻りたいと思います。今回は、ベストセラーのコンプレッサー、スウェーデンEBS社のMultiCompです。EBSは、ベース専用のイクイップメントメーカーで、以前別コラムでも書きましたが、自分はここの611 Stageというスピーカーキャビネットを愛用しています。

EBS社は、開発者全員がベーシストであるということで、ベーシストの立場に立って、ベーシストが望む製品の開発に勤しんでいるという会社です。北欧気質というか、製品はマスプロダクトでありながらも、しっかりしていて、どの製品でも好感が持てます

で、このMultiComp。昨年、まだこのペダルが品薄だったころに、たまたま近所の楽器屋が在庫処分(売れ筋製品を在庫処分するところがいかにも地方都市らしい)で市価よりも更に10%ほど安く出していたのを入手した。

その際、試奏した時の第一印象が強烈だった。「すげー、カッコいい!」という感じ。試奏は、YAMAHAのattitude(ビリーシーンモデル)にアンプはWARWICK TAKE12というセット。とにかく気持ちよかった。

一番その気持ちよさがわかりやすいモードがチューブシミュレーション。細かいもの(筐体内で高域・低域に分けて聞き具合をコントロールするというのもある)を除くと、コントロールは2つ、COMPとGAINしかないという潔さ。一般的にコンプのエンベロープ加工の順序で行くと、ゲイン、アタック、スレッショルド、リリース、アウトプットレベル、のコントロール。これを2つでやっているということは、「アタック、スレッショルド、リリース」を「コンプ」という1つのつまみで絶妙なセッティングでブレンドしているという風に考えられます。良くできてるなーとおもう反面、なんで今までこういうのが出てこなかったんだろうという新鮮な驚きです。

で、問題はここから。早速帰って家でマイ・ベースで試す。これが、YAMAHAのattitudeを使って試奏したときの印象とあまり変わらない。これも別コラムで書きましたが、要はこのコンプはちょっと「自分自身」を強く主張し過ぎるのかも知れません。どんなベースをつないでも、似たり寄ったりの感じになってしまう。もちろん、楽器が違えは音は違うのですが、サウンドのイメージが似てくる。3万円で買った練習用置きベースと、WARWICKのサムベースの音の印象が、このMultiCompを使うと似た感じになってしまうのだ。ショボイ楽器でも、良い楽器でも、それなりの音になるので、良い楽器を使った場合は、ちょっと満足感が薄れるという感じでしょうか。良いものでも、やっぱり一長一短あるんだな、と思いました。

ギターとの相性は未知数ですが、多分、同じ感じかなとは思います。でも、アコギのコード弾きとかだと、ヘヴィな感じでパッツンとかかってしまうので、音のカタマリ感がちょっと強すぎるかも知れません。

でも、絶対値としては文句なくGood Soundで、誰が聞いても「良いね」って感じると思います。

エレクトリックベース: 過去の愛器たち/#6 キワモノ系

石橋楽器オリジナル ヘッドレスベース

我がアップライトベースの愛器、CR-4をリリースしているSTEINBERGERから衝撃的にデビューした80年代中盤。デザイン、音、材質、全てに於いて革新的だったヘッドレスベース/ギター

このような時代背景において、どんなものでも必ず登場するのが「バッタもん」。そっくりそのままのコピーモデルや、ちょっとひとひねり入れたモデル、一旦コンセプトを消化してオリジナリティを反映させようと思ったけど消化不良を起こしちゃったモデル等、様々なヘッドレスベースが登場しました。SPACEBURGERなんて、笑っちゃうものもありましたね。(食いものみたい・・・)

ヘッドレスと言えば、STATUSFACTORと言ったものもありますが、スモールボディをベースに自分流にアレンジしたメーカーといえば、やはりYAMAHAが浮かびます。BX-1、BX-5、ギターではGX-1。ひし形の組み合わせのようなエッジの効いた近未来的デザイン。いまだにこのシリーズのコピーモデルが米国などではオークションで出回っているようで、好みは分かれるデザイン。

スモールボディ用(MB系)にYAMAHAが真面目に開発したハムバッカーが搭載されていて、タップでシングルコイルにできるもの。YAMAHAが70年代のSBというシリーズのベース以来使ってきたナトーという木材を使用していました。

自分はあまり食指が動きませんでした、一部の仲間内では使っているヤツもいましたね。当時同じくブームになっていた、小室徹哉率いるTMネットワークの木根尚人の使用や、小規模なデモ演奏などのシチューエーションで櫻井哲夫が使用したりと、プロモーション効果や、なんと言っても、本家STEINBERGERと比較すると破格の安さも手伝って、それなりのセールスを記録したのではないかと思います。

さて、ずいぶんと話題がそれましたが、自分もご多分にもれず、当時ヘッドレスをおもちゃ感覚で購入しました。それが、この石橋楽器のオリジナルモデル。(写真がないので、自分で描きました・・・)

斬新。図のようにボディが「ネック部」「ピックアップ部」「ブリッジ部」と3ブロックに分かれていて、そのブロックを2本のステンレスバーがつなげる感じ。オマケにPUは、GIBSONのGRABBERよろしく可動式で、そのステンレスバーのレールの上を動かして、サウンドを変えることが出来る仕組み。

ピックアップはハムバッカー1発のパッシブ仕様、ボディやネックの材質は半つや消しのブラック塗装のため、全くわかりません。でもネックは結構安定していて、ロッドも良く効いてました。

で、肝心の音。人間って味と音って感覚的に記憶している気がするんですが、当時はぜんぜんダメだと思ってましたが、今考えると、結構良かったかも知れない。なんせ、究極のボディなりのない構造ですから、弦とピックアップだけで音を作ってるわけです。PUを替えればもっと良くなったかも知れませんが、ブリッジよりでゴリゴリ弾いたら、すごくイケてる感じだったかも。デザインも今見ると、もっと斬新に映るかも知れませんね。アフロカツラをかぶって'70~'80ファンクのコピーバンドなんかやるには持ってこいかも知れません。

売った記憶もないし・・・ どこに行っちゃったんだろう。誰か、同じものを持ってません?

エレクトリックベース: 過去の愛器たち/その5

WARWICK Thumb Bass b/o standard 4st.


昨年、2本目のYAMAHA BB-5000とほぼ時期を同じくして入手した、WARWICK Thumb Bass b/o standard。(写真は上から、YAHAHA BB-5000、WARWICK Thumb Bass b/o standard、TUNE somnus zi-5) YAMAHAとTUNEがスルーネック構造だったこともあり、Thumb Bassの方は、b/o standardを選択。スルーネックではなく、ボルトオンモデルの方です。サムベースというとスルーネックのclassic
lineが主流ですが、あえてボルトオンを選択してみました。

実は自分は、サムベースの4弦モデルは、実はボルトオンの方が好みです。所有欲を満たしてくれるという点や、総合的なサウンド、バランスという意味では、しっかり作られたフラッグシップモデルのClassic Lineの方に分がありますが、PUの配置の影響もあると思うのですが、へヴィ系のサウンドでスラップをやる、という極めて限定された分野においては、この4弦b/oモデルが群を抜くマッチングを見せてくれます。ものすごい存在感で、同社製のSTREAMER stageⅡのゴリゴリ感、コシの強さをしのぐデキで、とても好きな音です。コンプをかけるのがもったいないと思うような独特の倍音を含んだアタック音が魅力

一方、サスティンは短めで、ボソボソと音が切れるイメージがあるので、メロウな感じのプレイには向きません。

ようは、良くも悪くもボルトオン構造の特徴が強く出ている感じがします。特にへヴィーロック系でスラップビンビンとか、ピックでゴリゴリという方は結構気に入ってもらえるんじゃないかと思います。

コントロールはVolume×1、Pan×1、Treble×1、Bass×1、電源は9V×1。ナットはカーボン製で、高さ調節が可能なタイプ。でもこのナットは弦が浮いているような気がして、あまり好みではなく、ブラスナットの方が良いかも知れません。重量はカタログ値3.7kgなのですが、この固体は実測4kgオーバー。たまたまかなり比重の重い材が使われているようで、サウンド的にどのように影響しているかはわかりませんが、一般論としては、当たりかも。

という感じで、勢いのある音を求める場面では気に入って使っていましたが、バンドでどうしても5弦の必要性があることと、用途が限定されてしまうということから、手放すことにしました。

一方、5弦モデルの方は、ブリッジ寄りのPU配置のせいか、逆にどんな奏法でもスルーネック構造のClassic Lineの方が完成度が高く感じます。ということで、5弦モデルはスルー構造の96年モデルをチョイスしました。今現在も使用中で、今後も長い付き合いが続きそうなモデルです。

http://bassist-kaz.ameblo.jp/entry-696a6f9ca0a38a9bf538b32341f4dd59.html