パリアシュヴィリ(こちらの方が近いようです)の代表作をもう一つ。20世紀前半の録音で全曲となっていますが、ナレーションで合間を繋ぐタイプの恐らく放送音源で、こちらも恐らくですがカットが多そう。なんと今年上演があったようですから然るべきレーベルから発売されるとよいのですが。
「アブサロム」と同様中央ユーラシアを感じさせる壮大でのびやかな音楽ですが、オペラとしての聴きどころやメリハリはこちらの方がはっきりとして分かりやすいように思います。ブロンという指揮者はどのあたりの方なのかもさっぱりわかりませんが、分厚いオーケストラをシンフォニックにさせ過ぎず、土俗性を感じさせる音楽に仕上げていてお見事です。音質も1930年代とは思えないクリアなもの。
自分の読んだあらすじではなんで行方不明になったのかよくわからないマルハーズですが、主役としていい歌をたくさんもらっています。アシュケナージというテノール(ピアニストではありません)が歌っており、アカペラありオケにのったドラマティックな歌ありで大変な役をリリカルに、そしてニュアンス豊かに歌っています。マロを歌うソプラノはシュカットという人。エテリに続きどうも作品としてヒロインが魅力に欠けるきらいはあるのですが歌はとてもよいです。冒頭のナノとの重唱から祝祭的な楽しみがあります。ここでもバリトンはいい役をもらっていて、キアゾのよしあしで公演が決まりそうです。ハチャルトフという人がまた重厚で立派なバリトンでききごたえ満点。寂寞とした民謡的なアリアもお見事ですが、ツァンガラが入ってからのカバレッタ的な歌も豪快かつ劇的、カットがなければ後半の大型アンサンブルでももう少し暴れてくれるのではないかと思うとちょっと惜しいですね。惜しいと言えばツァンガラという役で、性格的な歌をもらっている一癖ある感じのバスなのに、後半はほとんど物語にからまず……ここがもう少し活躍すれば多面的な作品になったのにと思います。歌っているゴリチャーゼはご機嫌な歌唱で◎
パリアシュヴィリのオペラ2作、いずれももうひとつと思うところもなくはないものの、このレベルであれば有名作でも感じることのある程度の不満で、十分おもしろい作品と思います。ジョージアの歌手も多く出てきているので、演奏機会が増えるとよいのですが。