フェヒティンク盤ドン・カルロ | Intermezzo ~幕間のおしゃべり~

Intermezzo ~幕間のおしゃべり~

しがない歌劇愛好家Basilioの音盤鑑賞録。
備忘録的に…

仏語盤でもおかしくないメンバーだよな~と思っていたらしっかり仏語5幕ベースでした。が、かなり独特なカットが入っていて、1幕は20分ないぐらいだしカルロのアリアは2幕へ、バレエは入りつつ異端者火刑の場は全カット(!!)、その他繰り返しなどは相当刈り込まれています。火刑の場はストーリー上重要ですし、演奏そのものはいいだけにこれは残念です。このあたりちゃんとしていれば、グラントペラとして演奏されつつもしっかりヴェルディという名演になったのではと思います。


フェヒティンクという指揮者は全く知りませんでしたがカット以外の不満はありません。仏語盤らしく熱量とは別の集中力で勝負しているようです。


この音盤を入手する決め手となったのは珍しくエボリで、ルビオという人が歌っています。別の音源の補遺でスゴい人なのでは?と思って聴いてみたのですが読み通り実力者でした。ややアルトに近いしっかりとした暗めの声ながら高い方も絶叫にならず、きちんと切迫感もあってお見事。もちろんそうは言いつつフィリップがアリエだったことも大きくて、彼のこの演目の全曲は初めて。この人のこの役は仏語の方がうんといいかもと思いました。彼の声は落ち着いた響きなので伊語だとちょっと熱気が下がりそうなところが、仏語ではむしろ味わいになっています。火刑の場がないのがかえすがえす残念。バキエのロドリーグも実は初めてでしたが、彼も仏語盤の方がうんとよさそう!なんと言ってもことばの扱いが自然に聴こえるのが大きいです。死の場面はこれまで聴いてきた仏語での演奏のベストと思いました。エリザベトのサロッカはパテ社などの演奏で名前みるなーぐらいの印象でしたが、可憐な声質を維持しながら全曲をしっかりとした響きで歌っていて良かったです。カルロスのラ=モレナはこの音源以外にヒットしないようなのですが、ところどころアラはありつつも、ドミンゴを少し軽くしたような豊麗な声で良かったです。宗教裁判長のエリンは声も重厚なら語り口も素晴らしくてアリエとの対決は思った以上の聴きごたえでした。彼はフィリップよりこちらの方が似合っていそう。


そんなわけで仏語の演奏として非常に楽しめるものでありつつ、楽譜の扱いや音質でのビハインドから手放しでお勧めできないなんとも悩ましいディスクでした。