人は自分の寿命を知ったときに、その残りの人生をどう生きるかで
その真価が問われるのではないかと私は思う。
5月22日(日)に放送されたNHKスペシャル「人生の終い方」は
そんな自分の残された時間をどう生きたか、何人かの事例を紹介する番組だった。
30代にしてガンに罹り、二人の子供に何を残してやれるかを真剣に考える男性は
最後まで弱音を吐かず、痛みも見せず、頑張る姿を子供たちに見せ続けていた。
軽い障がいを持つ娘を残して逝かなければいけない90代の母親。
小さな居酒屋を経営し、常連客にお母さんと慕われていたその人望が
一番の心残りの娘を助けることになった。
しかし、こういう例は稀だろう。ひとりでは生きられない子供を残して命が尽きてしまうことに
心を痛める親御さんを思うと、私も胸が痛くなる。
漫画家の水木しげる氏は、近づく死を前に家族写真を何枚も撮りたがったという。
また、ある女性の兄は、ずっと独身で通し、病魔に侵されていることを誰にも告げずに
逝ってしまった。死の直前に趣味の乗馬で相棒だった馬にニンジンをたくさん持って
会いに行ったらしい。
いつか必ず人には死が訪れ、もちろん私にもいつかはその日が来る。
確実な命の期限を意識したとき、私は何をしたいのか、誰に会いたいのか
今は全く見当がつかない。
きっとそのまま、ぼんやりと死を迎えてしまうような気がする。
悔いのない生き方ができればいいな。今からその道は見つかるのでしょうか。
進行役は桂歌丸さん。
ちょうどこの番組の放送日が笑点司会の最終日にも重なった。
テレビや高座では軽妙な語り口調で務めていたけれど
高座を下りたとたん、車椅子に乗り酸素吸入が必要なほど
衰弱されているのにびっくり。反面ものすごいプロ魂を感じる。
彼も今、何を残したいのか伝えたいのかが明確で、それに向かって
死力を尽くしているのでしょう。本当に感銘しました。