ひめやかな、ひそやかな物語 小川洋子『サイレントシンガー』文藝春秋 2025 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

小川洋子『サイレントシンガー』文藝春秋 2025

 

なんという静謐をたたえた小説なのだろう。

 

風のような、

 

水のような、

 

ひめやかな、ひそやかな物語。

 

読んでいるひとすべてが浄化されていくような・・・

 

 

写真:吉田周平

 

装丁:中川真吾

 

 

 

◆本の紹介

 

内気な人々が集まって暮らすその土地は、

“アカシアの野辺”と名付けられていた。

野辺の人々は沈黙を愛し、

十本の指を駆使した指言葉でつつましく会話した。

リリカもまた、言葉を話す前に指言葉を覚えた。

たった一つの舌よりも、

二つの目と十本の指の方がずっと多くのことを語れるのだ。
やがてリリカは歌うことを覚える。

彼女の歌は、どこまでも素直で、これみよがしでなく、

いつ始まったかもわからないくらいにもかかわらず、

なぜか、鼓膜に深く染み込む生気をたたえていた。

この不思議な歌声が、リリカの人生を動かし始める。

歌声の力が、さまざまな人と引き合わせ、

野辺の外へ連れ出し、そして恋にも巡り合わせる。

果たして、リリカの歌はどこへと向かっていくのか?


名手の卓越した筆は、沈黙と歌声を互いに抱き留め合わせる。

叙情あふるる静かな傑作。