桐野夏生『デンジャラス』中央公論新社 2017
作家がとらえた<作家>!
大谷崎を義妹の視線から描くこの作品。
抉り出す<ものを書く>・創造へのあくなき執念・業を
やわらかな京言葉で語る・・・、その妙。
装画:船田珠樹「春の夕」
装丁:鈴木久美
◆本の紹介
君臨する男。
寵愛される女たち。
「重ちゃん、ずっと一緒にいてください。死ぬときも一緒です。
僕はあなたが好きです。あなたのためには、すべてを擲つ覚悟があります」
兄さんはそのまま書斎の方に向かって歩いて行ってしまわれました。
その背中を見送っていた私は思わず目を背けたのです。
これ以上、眺めていてはいけない。
そう自戒したのです。(本書より抜粋)
文豪が築き上げた理想の〈家族帝国〉と、
そこで繰り広げられる妖しい四角関係――
日本文学史上もっとも貪欲で危険な文豪・谷崎潤一郎。
人間の深淵を見つめ続ける桐野夏生が、
燃えさかる作家の「業」に焦点をあて、新たな小説へと昇華させる。
